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第2世代「スカイラインGT-R」を支えたブリヂストンの功績

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「GT-Rだけは絶対に落とせない」

「一般的に新車用の標準タイヤ選定は、競合の中から複数の採用が決まっていきます。GT–Rの場合、タイヤメーカーはどこも取りたいわけで、実際そういう声が多かったです。
日産さんから集合の声が掛かり、各タイヤメーカーが一堂に会し、まず一次審査で二社に絞り込み、二次審査で一社に絞り込むとの説明を一緒に受けました。

熊野隆二氏

熊野隆二氏

ここから、各社一斉に開発をスタートさせたのです。Z32のフェアレディZ用タイヤの話も同時にあり、GT–RとZは日産さんのフラッグシップで、ブリヂストンとしてのメンツもありますから、全社を挙げて開発に取り組みました。
ところが当時、Zの北米用タイヤという大きな商売を落としていました。そこで『GT–Rは何がなんでも落とせない』と肝に銘じた記憶があります。とはいえ、ライバル各社の動向はまったくわからず、設計の方から試作したタイヤの感触などを聞きながら、果たして納入を獲得できるかどうか、ビクビクしていたのを思い出します」とブリヂストンの熊野は語る。

R32型スカイラインGT-R

R32型スカイラインGT-R

新車用タイヤ開発の難しさは、まだ世の中にないクルマの性能にタイヤを適合させていくことにある。
まして、R32スカイラインGT–Rは、280㎰の新開発直列6気筒ツインターボエンジンの高出力と、アテーサE–TSという後輪駆動を基にしたトルク配分式の四輪駆動、さらに、R31スカイラインから装備が始まった後輪操舵のHICAS(R32ではSUPER HICAS)、そしてマルチリンク式サスペンションと、新技術や先進機能が数々搭載された、従来にない高性能を誇るGTカーである。

RB26DETT型エンジン

RB26DETT型エンジン

POTENZA

ポルシェ用のタイヤ開発で得たノウハウも投入し、当時の国産最強を誇るR32に 標準採用されたブリヂストン「ポテンザRE71」。以降、ハイパフォーマンスラジ アルの定番として、長きにわたり数多くのスポーツモデルに標準装着された。

「ちょうどこのころ、タイヤの偏平率が60%から50%へ変わるところで、R32GT–Rのサイズは225/50R16でした」と、熊野が話を続ける。
「タイヤが偏平になってサイドウォールが薄くなると、見た目には剛性が上がると思われがちですが、実は、サイドウォールのR(曲率)が小さくなることによって、横剛性を持たせにくくなります。そこでサイドウォールの肉厚を上げて支えようとすると、今度は乗り心地が悪化します。そのうえで、車両との適合がありますから、サイズが新しくなっていくところでの苦労がまずありました。
しかし、一番の苦労はニュルブルクリンクですね。当初は、2、3周するとサイドウォールのブリヂストンのロゴが消えてしまうくらいトレッドショルダーが摩耗してしまい、頻繁にタイヤを交換しなければなりませんでした」
1周が約20kmを超える世界有数の難コースとはいえ、2、3周といえば、40km〜60kmほどの距離でしかない。
R33では商品主管となった渡邉は、その点について
「フロントサスペンションの剛性不足が原因でした」
と振り返る。

ちなみに後継車のR33は、アッパーアームのリンクをショックアブソーバーを挟み込む二股にするなどして、R32に対し、フロントサスペンションの横剛性が約90%、キャンバー剛性が約35%、キャスター剛性が約10%向上。タイヤのキャパシティを十分に引き出せるようになった結果、30周してもサイドウォールはそれほど減らなくなっている。

R33スカイラインGT-Rのフロントサスのアッパーアーム

R33スカイラインGT-Rのフロントサスのアッパーアーム

 

吉野充朗氏

吉野充朗氏

だが、R32GT–Rで初めてニュルブルクリンクを走った日産としては、せっかくドイツまで来て、2、3周しかタイヤが持たないからと、帰るわけにもいかない。
そこでブリヂストンは
「もっとキャンバー角を付けてくださいとお願いはしましたが、タイヤメーカーとしては、まずは物量で補っていくしかありません。試作タイヤの種類や本数など、その数の多さは、GT–Rということで治外法権というか、社内でもある程度は許される状況でした」(吉野)といった具合に対応。
こうして、さまざまな出来事を乗り越えながら、R32GT–Rの標準装着純正タイヤは、最終的にブリヂストンのポテンザRE71と決まり、以後、R33、R34GT–Rもブリヂストンが装着されることになった。
(文中敬称略)

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