レイズ 最新『TE037DURA』の開発秘話と奥深い伝統


最新ジュラルミン鍛造ホイールがもつ
『TE37シリーズ』栄光の歴史を探る

2017年初頭、東京オートサロンで発表された「レイズ」の『ボルクレーシングTE037DURA』。伝統の6本スポークデザインの鍛造1ピースホイールに超超ジュラルミンという新素材を加え新たなステージへ。定番『TE37』シリーズの歴史を紐解くことで、TE037の魅力が一層浮き彫りになるはずだ。

メイド・イン・ジャパンのホイールメーカーとして「レイズ」は常に新たな挑戦に挑んでいる。
その最も新しいチャレンジのひとつが、2017年初頭に発表された『ボルクレーシング』ブランドの『TE037DURA』である。A7075超超ジュラルミンを採用しつつ、TE37シリーズの伝統である6本スポークデザインをもつ。
しかし、このカタチに決定するまでには、二転三転の苦労と努力があったという。デザインや販売を担当するVOLK RACING企画開発部部長の山口浩司氏に話を伺った。

今期スーパーGTのGT500クラスに参戦するフォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rはレイズ製のホイールを採用している

GT500レースのホイール開発部門が設計に参画
勝つため、速く走るためのホイールに仕上げる

「かつてマグネシウムをやった。GT500用のレースホイールも作った。そろそろ自分たちの壁を越えようぜ、と開発に着手したのです。異素材ありきだったので、途中でカーボンなども考えました。構想から3年。軽くするなら6本に拘らなくてもいいのではないか、と思ったこともあります。試作用の金型を作った後に細部を変更したり」と山口氏は語る。開発段階で、レイズエンジニアリングで設計や開発を担う伊藤和則氏でぶつかり合ったこともあった。お互いに何かがシックリとこず、モヤモヤした時間が過ぎていく。
そこには「発売するからにはユーザーに驚いてもらいたい」という強く熱い想いがあったからだ。

そんな開発陣に決定打が舞い降りたのは2016年秋。
2017年用スーパーGT(GT500クラス)ホイールの開発に入り、TE037DURAに求められる性能、デザインすべてが結実したという。
やはりTE37シリーズのアイデンティティである6本スポークを採用。しかし、そのスポークは今までにあり得ないほど肉抜きを施しみるからに軽量化されている。

スポークのサイドやリムエンド部にまで極限までの肉抜きを施す。超超ジュラルミンということで軽量も当然考慮した結果だ

日産R35型GT-Rや輸入スーパーカーなど、ハイパワーで重量のあるクルマに対応するため、剛性や強度の向上を最優先事項とした

しかし、優先したのは強度であり剛性。
レイズエンジニアリングの伊藤氏曰く「われわれは常々鍛流線に拘り続けてきました。ジュラルミンということで軽量も求めてはいますが、今回は剛性が優先です。ボルクレーシングブランドの中でもトップクラスを実現しています」

さらにTE37DURAで興味深いのはその開発陣である。
通常の市販ホイールはレース用などを開発するレーシングのフィードバックでアフターチームが設計する。しかしTE037DURAはGT500用ホイールなどを開発しているレーシング部隊が設計を担当。その思想がすべて注がれているのだ。
つまり市販品とはいえ、コストや生産性を度外視し、勝つため、速く走るためというホイールに求めるスポーツ性能を追い求めた。

究極の軽量化を追求して誕生した初代TE37

なぜそこまで開発陣は「本気」になったのか? それはこのTE037DURAが、『ボルクレーシング』の、いや「レイズ」の旗艦モデル、『TE37』シリーズの血を受け継いでいるからだ。初代である『TE37』は軽量&高強度を掲げ、ストリートスポーツホイールに鍛造という革命を起こした

TE37、その始まりは平成8(1996)年まで遡る。当時はシビックなどがスポーツモデルの全盛であり、ストリート用ホイールは鋳造がほとんど。一方、モータースポーツ界では鍛造1ピースが主流になっていた。

「街乗り用鍛造もありましたが高級品。ドレスアップ要素が強く、高価に見せるための道具だったのです。スポーツモデルに鍛造を使おうという発想は、20年前にはありませんでしたね。そこで走りの性能を追い求め、それでいて、ある程度の価格設定。誰もが使える鍛造1ピースを作ろうと企画したのが始まりでした。TE37の前身モデルとしてGTPデイトナというモデルがあります。当時のN1耐久レースでは誰も鍛造を使っていない。これを使ってみようと、参戦していた『プロジェクトμ BP GT–R』専用で作りました。’95年くらいの話です。そして、それをベースに〝ツーリング・エボリューション〞として量産モデルを作ろう、と。シビック用の15インチを含め、全サイズをサーキットユースにも耐え得るモデルとして作ろうと考えたのです」と、山口浩司氏は当時を振り返った。

15インチの6Jで3.7kgの重量を目指す。
わかりやすく、ストレートに訴求しようと、名称はツーリング・エボリューションの頭文字と合わせて、『TE37』と決定した。
しかし、それは簡単にクリアできる目標ではない。あと100gいや300gをどうやって削るか。そして出てきた策がブロンズカラーだ。

「塗装だけで40~60g。大径になればもっと重量が嵩みます。ならば塗らなければいいじゃないか、とブロンズアルマイト処理ということを思いついたわけです」

ルックスや色といったドレスアップ要素ではなく、TE37シリーズは初代から性能を前面に打ち出して開発してきたスポーツホイールなのだ。

チューンドR32スカイラインGT-Rのパワーは
従来のホイールの強度・剛性では耐えられない

そして日産R32型スカイラインGT-Rが世に広まった辺りから、チューニングがパワー競争の様相を呈したことで、TE37は爆発的な人気を得る。
いきなり500㎰のクルマが登場し、タイヤもSタイヤのようなグリップ力を持ち始めた。ほぼレース時のような荷重が掛かりだして、それまでのホイールでは耐えられなくなったのだ。
入力が高いところは応力を高めなければならない。それまでのスポーツイメージと言えば5本スポーク。TE37が6本スポークデザインを採用したのも、隙間を60度ずつに狭めて、均等に力が掛かるようにするためだ。応力が分散してバランスしやすい。
これなら高強度を保ちつつ軽くできる。こうして高性能ホイール界を牽引するTE37は完成した。

その後、2010年にはより軽量を追求した進化モデル、TE37SLが登場。軽量を謳うホイールが続々と出現したことで、開発陣の闘争心に火が付いた結果生まれたものだ。解析の結果、フランジやインナーリムを削って従来より400gほど軽くした。もちろん強度も問題ないレベルをクリアしていた。さらにバリエーション広がっていく。次に発売されたのは、TE37SLと真逆を行く、TE37RTだった。こちらはリムに厚みをもたせ、剛性を上げたモデルだ。よりハイパワーやハイスピードなシーンで重量級マシンに対応する。

TE37よりさらに軽量を追求した『TE37SL』。インナーリムなど細部を見直して削るなどで軽量化

3種類のリム深度と2種類のフェイスを設定した『TE37 TTA』。TTAはTOKYO TIME ATTACKの略

タイヤグリップの急激な上昇に対応するために作られた『TE37RT』。リムの厚みを増やし剛性を上げた

TE37の新世代として誕生した『TE37ultra』。最先端の解析技術や工法を注ぎ込んだモデル

『TE37ultra TRACK EDITION』はフランジ部の形状を見直してさらなる軽量と高強度を実現した

鍛造1ピースながらダイヤモンドカットを施した深リムを採用した『TE37ultra tourer』

TE37の最新モデルである『TE37SAGA』。RB26DETT型2.6リットル直6ツインターボエンジンを搭載する第2世代スカイラインGT-Rの足元によく似合う性能美をもつ

日産R35型GT-Rが『TE37』に与えた大変革

こうしてTE37は年を追うごとに進化を遂げた。そして2014年にそれまでにない大変革を迎えることとなる。それには日産R35型GT-Rの誕生が大きな影響を与えたようだ。

「GT-Rの流れと同じです。第2世代スカイラインGT-Rとはまったく違うR35型GT-Rが登場した。クルマの変革が起きている。今までと違う流れが来ると感じました。TE37もここで大きく変わらなくてはいけないと考えたのです」と山口氏は語る。

工法も見直し、もっと拡張性や展開性を考えておこうじゃないか。鍛造の金型も進化して、最新の解析技術も駆使した。そしてTE37シリーズの新世代とも言うべき20インチの『TE37ウルトラ』が発表された。
ここからは続けざまに2015年に、より軽量を追求した『TE37ウルトラ・トラックエディション』、2016年に街をクルージングしたい人向けの『TE37ウルトラ・ツアラー』を発表。『TE37ウルトラ』には19インチも追加した。この流れを汲んだ18インチモデルとして、2017年始めに『TE37SAGA』を発表。細部まで見直すことで研ぎ澄まされた6本スポークを手に入れた。

R35型GT-Rという日本が誇るスポーツカーの足元には、やはり最先端の技術を投入したスポーツホイールがよく似合う

そして『TE37SAGA』と同時に、現在「レイズ」が持つ技術力、解析力、すべての力を結集して、『TE037DURA』が誕生したのだ。
この歴史を知れば、『TE037DURA』が「最先端であり、かつ最速で最強でなければならない」という使命を負っているのもおわかりいただけるだろう。そして『TE037DURA』の実物を見て、触れてみれば、その「レイズ」の願いと決意は、確実に具現化出来ていると確信できるのである。

レイズ VOLK RACING TE37DURA:9.5J×20 IN35~11J×20 IN15(25万1000~26万円・税別)

レイズ http://www.rayswheels.co.jp/

(レポート:GT-R Magazine)

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