走行34万km超のR33型スカイラインGT-Rが好調でいられる秘訣とは


15年間で30万km以上を走行
GT-Rを乗り続ける誇りと勇気

一般的に走行距離10万kmといえば、メーカーの保証も切れ、クルマの寿命に近い状態と考える方も多いことだろう。ただ、一方では愛車と向き合いながら苦楽を共にしてきた長い時間は何事にも変えがたい思い出となり、愛情も深まるはずである。
今年で創刊23年目を迎えるGT-R Magazine(交通タイムス社刊・偶数月1日発売)の人気企画の一つ「10万20万km倶楽部」は、そうした10万km、20万kmと走行距離を重ねたオーナー諸氏にスポットを当て、愛車に対する熱い想いを誌面で語ってもらうものである。また、10万km、20万kmに達したオーナー諸氏には距離に応じてステッカーを進呈し、10万20万km倶楽部会員として誌面に掲載。平成15(2003)年のスタートから14年が経過し、会員数は現在249名(平成29年4月現在)となった。
あるショップからは「過走行車両に乗り続けることに誇りと勇気を与えてくれる企画」とお褒めをいただいたこともある。
以前、姉妹サイトである「WEB CARTOP(https://www.webcartop.jp/)」では同倶楽部で最長となる50万kmオーバーの走行距離(現在は55万6978kmで登録)を刻んだ日産R32型スカイラインGT-Rを所有する東京都の由井 元さんを紹介したが、今回はその次の世代、日産R33型スカイラインGT-Rで最も距離を刻む千葉県在住の日高章博さんのGT-Rライフを紹介したい。日高さんの所有するスカイラインGT-R(以下GT-R)はR33型で通常ラインアップされるグレードではなく、平成8(‘96)年式にフランスで毎年6月に開催されるル・マン24時間レースへの参戦を記念して、期間限定で発売された”LMリミテッド”と呼ばれる特別なクルマ。日高さんはフレンチブルーの色鮮やかな限定のボディカラーに惚れて、平成14(’02)年に中古車で手に入れた。

趣味性の高い色に加えて、ヴェイルサイド製のエアロパーツやGTウィングと呼ばれる大型のリヤスポイラーなどを装着するなど、ひと目見たら忘れないオリジナリティ溢れるスタイルとなっている。購入時2万4000kmオドメーターは約15年で、34万5000kmに到達。年間2万〜2万5000kmで刻むペースは前出の最長距離ランナーである由井さんとほぼ同じである。

長距離移動での休息は給油くらい
GT-Rなら何時間も走り続けられる

「GT–Rに乗る前は2代目の(トヨタZ20型)ソアラに乗っていました。レストアして一生乗ろうと考えていましたが、親はもちろん、上司に反対されて止むなく買い替えることに……」。手元にあったのは280万円。同様の話を友人にすると「その金額があれば、GT-Rが買えるよ」と言われ、もともと直列6気筒ターボエンジン搭載車にしか興味がなく、GT-Rはもちろん憧れの存在。「その値段で購入できるなら」という気持ちが日高さんを後押しした。
「初め乗ったGT–Rの印象は“いくら走っても疲れない”でしたね。実家の九州には毎年、クルマで帰省するのですが、ソアラの場合は3時間に1回は休憩が必要でしたが、GT-Rはガソリンがなくなるので、仕方なく止まるという感じです。アクセルを踏めば即、加速しますし、車体もすごく安定しています。抜かれても、いつでも抜けるという気持ちから、運転にも余裕ができました」と日高さん。
通勤からレジャーまでGT-R一台ですべてをこなしているが、特に食べることと温泉が好きで、TVの旅番組で気になる場所があると、即出掛けるというフットワークの軽さが、走行距離が増える一番の理由。しかも、行きは高速道路を使うが、GT-Rと長く走っていたいから帰りは下道を使う。途中で気になる場所があれば、寄り道してしまうことも日常茶飯事だそうだ。
「また、GT-Rに乗ってからクルマ関連の友人が増えました。正直目立つクルマですし、遠出も頻繁に行っていますので、ソーシャルネットワークスサービスでやり取りをしている各地のオーナーさんから、『近くに来られるなら会ってみたいです』という声をいただくことや、パーキングで見ず知らずのGT-Rオーナーに声を掛けられることもよくあります。こうしたことはソアラに乗っていたころはありませんでしたので、GT–Rは仲間意識の強いクルマなんだな、とつくづく思いますね」。
現在は、SNSを通じて知り合った仲間とGT-Rライフを満喫。仲間とのコミュ二ケーションは愛車を維持して行く上でも重要だという。「これまで多くの仲間に助けられて、愛車を維持できてきたと思っていますから、これからはその恩返しではないのですが、困っている人がればアドバイスできる立場になれればいいと思っています。そのようにして、いつまでも仲間とともにGT-Rに乗り続けて行ければ最高です」

GT-Rを長く乗り続けるには
信頼できるショップは必須

もうひとつ、生産から20年以上が経過したGT–Rを維持して行く上で大切なことが、トラブルの早期発見。そのためには信頼できるプロショップの存在は欠かせないと語る。
「34万km以上を走行していますから、オルタネーター、クラッチ、エアフロメーター、エアコンなど経年劣化で数多くの部品を交換してきましたが、道路上で止まってしまった経験はありません。それはかかりつけ医とも言える千葉県白井市の『デンソンオート(TEL:047-492-6577)』の後藤一樹メカニックにオイル交換と同時に各部を点検していただき、不具合の出そうな部分を指摘いただいているからだと思います。今では経験値である程度、この時期に壊れるということは判断もできるようになりましたが、乗り始めて間もない人などはプロの指示を仰いだ方がいいでしょうね」
以前は、手を汚すのが好きで自分自身で整備をしていたというが、今はショップに一任している。
「DIYはどうなっても、いいなら、やってみな、という気持ちでやっていましたが、時間もかかりますし、幾度も失敗を重ねたことで、工賃の意味が理解できたことから、自分でやることは控えるようになりました。やはり、プロとして整備することは、技術はもちろんですが、安全安心も提供するという意味で大変な仕事だと思います」。

また、愛車に対しても平成19(’07)年の600psを超えるハードなチューニングエンジン搭載を機に、労る心が強くなり始めた。そうしたエンジンを載せたら、普通は踏みたくなる気持ちが強くなるはずなのだが、日高さんは逆に愛車への傷みが気になるようになったという。
「昔はちょっと広いところがあれば『コーナーをいいスピードで抜けてやろう』と思ったりしたのですが、今は『それをやると各部に負担がかかるよな、もし、ガツンとブツけたらクルマを降りるしかないぞ』という自制心が働きます。もちろん、たまには踏むのですが、勢いにま任せてというのはなくなりました。15年32万kmも一緒に走ってきましたから、やはり愛車を失いたくないですね。これを愛情というのでしょう」と日高さん。
チューニングエンジンを載せたことで、ノーマルの何をしても大丈夫という安心感が消え、逆に各部に気を使う、神経質になることが増えたというから、これは本末転倒なのか? それともより愛車への気持ちが深まってよかったというべきなのか。ただ、コンディション維持という点から見れば、いい方向に向いていることは間違いない。現在は純正部品の製造廃止に対応するため、ガレージセールや解体屋をまわり、必要な部品を探すなど、これからも愛車に乗り続けるための準備は着々と整えつつある。

日高さんのGT-Rは青空駐車のため、外観は塗装に傷みがみられ、室内もキレイではないが、愛車と一緒に楽しんできたという痕跡があちらこちらから見て取れる。そうした傷や傷みが共に歩んできた思い出なのだ。同じ年式でコレクターズアイテムのように大切に保管され、走行距離も少ないクルマもある。楽しみ方はオーナーそれぞれで異なるが、時間だけでなく距離も重ねる方が、よりGT–Rの本質を知ることができると思う。無償の愛をいかに注ぎ続けることができるか、これが愛車に長く乗り続けるために大切なことだ。そして、オーナーにそう思わせてしまうのがGT–Rの魅力でもある。

(レポート:GT-Rマガジン編集部)

【関連記事】