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日産R35GT-Rが劇的に変化したイヤーモデルとは【MY14試乗レポート】

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走り始めから分かった進化
世界一級のグランツーリズモへ

「ヴォンヴォオーオーオー」。これまた、記憶を呼び覚ますサウンド。
ダークメタルグレーのMY08の後について、ゆっくりと走り出す。使い慣れた東京都内の一般道を走ってみて、改めてGT-R“タムラ”の変化を知る。タイヤのひと転がし目から、明らかに違う。ステアリングフィールが、相当に軽やかだ。
速度を上げると徐々に締まりを増していくのは、最新モードのスポーツモデルに共通するテイスト。一般道の速度領域においては、多少路面が荒れていようとも、ハンドルとフロントアクスルが一体となってドライバーの邪魔をするような、そんなマナーはほとんどない。片道450kmの旅は、拍子抜けするほどフツーに始まったのだった。GT-R NISSAN R35 MY14

首都高速を抜け、空いた東名高速道路をひた走る。直線路の続く新東名はツマラナイのだ。
“旧”東名を使って、美しい海山の風景を楽しみつつ、適度に曲がりくねった道程を走るのが、月に平均3度、東京〜京都をクルマで往復するボクの流儀である。
まずは、富士川SAまでMY14を駆ることにした。時々リードしながらも、流れに逆らうことなく、淡々としたクルージングに徹してみる。気付くのは、低回転域のさえずりから、たまの加速の吹き上がりまで、エキゾーストサウンドから雑味がほとんど消えていることだった。
澄んだ、とまではいえないまでも、耳に入る音にズレやブレがなく、一つ一つの音質もクリアに重なっているように聞こえてくる。特に、右足に力を込めた際のサウンドには伸びやかさがあって、MY13(2013年モデル)までのそれよりも、正確な音階を奏でているかのようだ。GT-R NISSAN R35 MY14

流れに乗った速度域におけるエンジンフィールにも、滑らかさが加わった。そこからの加速も力感に溢れており、追い越しが非常にラク。これは、グランドツーリングカーを標榜するクルマにとって、ドライバーの疲れを最小限に抑える、最も大事な性能の一つだと思う。
そして、80km/hあたりのパワーステアリングからの反応とフィーリングも、以前に比べて随分とよくなった。程よい手応えを伴って、前足の動きがごく自然にドライバーへと伝わってくる。
両手から身体に伝わってくる感覚は、最新の欧州スポーツカーに近い。それ故、以前に比べると、幸か不幸かMY14は「R35GT-Rに乗っているぞ!」という感覚に乏しい。
フロントまわりから生じるちょっとした“しこり”のような違和感を身体に残すのが従来型までの常で、四輪駆動の重量級マシンを運転しているという気分にはなっても、快適なGTカーでクルージングしているという気持ちにはなれなかったものだが、それができるようになった。
これはかなりの、そして誰もが実感できる路線変更であり、MY14最大の個性であろう。GT-R NISSAN R35 MY14

 

ひとしきりMY14のツアラーっぷりを楽しみ、MY08に乗り換えてみる。
まずは、パーキング内から途方もなく重いステアリングフィールに愕然とさせられた。MY14を転がした直後では、ノンパワステと言われて納得しそうな重さに感じる。そして、フロントアクスルの存在感が、エンジンも含めて、相当に大きく乗り手に伝わってくる。
こちらも、腕力にモノをいわせてコイツをねじ伏せてやろうじゃないか、という気分になっていく。そういう意味でのスパルタンさは、初期モデルの真骨頂である。

取材車両は、MY08半ばに小変更を受けた北米市場向けと同仕様だったから、初期モデルの中でも、最も前足に柔軟性があるタイプであったはず。なのに、これほどまでに”強情”なフロントまわりを抱え込んでいる。
それでも、京都までのクルージングは、これはこれで楽しいものだった。MY14に比べて、サウンドとトルクフィールに不満があったとはいえ、まわりの性能から比べれば、初期モデルもまだまだ絶対王者級。
適度にバラけたパワートレインのフィールや、僅かに緩いボディ特性もまた「これはこれで、R35らしくていいよな」というのがホンネだ。GT-R NISSAN R35 MY14

 

そして、京都におけるホームコースのひとつ、比叡山ドライブウェイで2台を乗り比べてみた。
これはもう、圧倒的にMY14のほうが操りやすく、速い。ブレーキコントロールのしやすさ、旋回時の小ぶりで安定した動き、脱出時の分厚いトルクフィール……。一連の動きに、およそクセというものがなく、さほど汗を滲ませることなく、速いペースをキープできるのだ。
MY08で、それは不可能で汗をかく。両手両足の操作に、ひと筋縄ではいかない“何か”が宿っている。
克服すべき課題が、沢山待ち受けていて、それを楽しみにするような、ある種“マゾヒスチック”な感情が湧く。これはこれでユニークな乗り物。否、むしろ、世界中の何者にも似ない感覚として、積極的に肯定したい乗り味でもあった。GT-R NISSAN R35 MY14

 

なるほど、水野GT-R(2013年モデル以前)は、スーパーカーの世界をそう解釈したわけだ。
ランボルギーニ、フェラーリ、マクラーレン、アストンマーティン……その中で一人ユニークなライドフィールを持つものだけが、輝きを放ち続けることができる、と。それが多少、いびつなものであってもだ。否、いびつであれば、あるほどに。

一方、田村GT-R(2014年モデル以降)は、誤解を恐れずに言うと、“スカイラインGT-R”への回帰路線である。世紀のグランドツーリングカーだったBNR34型スカイラインGT-R Mスペックの、それは正当深化だと思う。
どちらを好むかはあなた次第。ユニークなスーパーカーか、それとも、秀でた世界一級のグランツーリズモか。帰ってきたミスターGT-Rに、それが相応しい称賛かどうか、今度会ったら直接聞いてみたいものである。GT-R NISSAN R35 MY14

【西川 淳氏によるR35型GT-R 2015年モデル(MY15)試乗記】

 

*この記事はGT-R Magazine 115号掲載文を再編集したものです

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