予想はしていたが拍子抜けするほど
良好な状態だったトランスミッション
新車以来使い続けてきたトランスミッション(下の写真)は、さすがに46万kmという距離を刻んできただけあって、シフト操作の渋さなどフィーリングが悪化していた。オーナーの心情とすればトランスミッションもオーバーホールをして使い続けたかったようだ。
R32型スカイラインGT-Rのような古いクルマの部品は、純正でも年々定価は高騰している。そのなかで、トランスミッションは新品でも16万2000円(税別・2016年12月時点の価格)と、当時と大きく変化していなかったのである。
これは、修理するより新品に換装した方が費用対効果は高いという結論になり、R32型スカイラインGT-R後期型用5速トランスミッションを搭載することになった。
ちなみに後期型ミッションは、さまざまな改良が施されている。クラッチがプッシュ式からプル式に変更されているため、オペレーティングシリンダーを交換するなどの手間はかかるが、それ以上に得るものは大きいのだ。
今回は特別に、46万km走行したトランスミッション内部をチェックしてみることにした。
これまでのインタビューで、丁寧に乗ってきたことはわかっているので、各ギヤに驚くようなトラブルがあるとは思っていなかった。
しかし、実際に目にしてみると、その予想を上回るほど良好なコンディションだった。
確かに、ギヤの歯当たりしている部分の摩耗は認められるが、歯欠けや異常摩耗は一切見受けられなかったのだ。ベアリング類は目視では正常。計測してみれば、コンマ1ミリ単位の摩耗があるかもしれない。シフトフィーリングの悪化の原因は、そんな些細な摩耗の積み重ねなのだろう。
大きなダメージを受けていなかっただけに、オーバーホールして使い続けることが可能だったかもしれない。
ちなみに、オーナーにどのようなシフト操作をしていたかインタビューしてみると
「エンジンが温まっても、すぐに負荷をかけた走りはしません。トランスミッションやデフなどのオイルはまだ温まっていませんから。1速や2速は軽く加速して、アクセルを踏み込むのは3速以上ですね。もちろん、ガツンとシフトレバーを叩き込むような操作はしません。ギヤが噛み合う間合いみたいなものを感じ取りながらシフトしています」と、聞いているだけでも丁寧な操作を感じさせる。
「走行46万km」
この距離だけでも驚かされるが、それを1基のパワートレインで達成するには、クルマを丁寧に扱う気持ちと実行力が必要だ。ただ、何度も記すが「丁寧に乗る」と「速度を出さないで乗る」とは同意語ではない。
このオーナーは、スカイラインGT-Rの楽しさを感じながら走っているのだ。
<取材協力>
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(撮影:吉見幸夫)