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日産S13シルビアがクルマ好きに愛され続ける5つの理由とは

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

166万円で買えた秀逸デザインのクーペ

 1989年に日産スカイラインGT-R(R32)、日産フェアレディZ(Z32)が登場する前夜、まさに両車に先駆けて、日産からそれまでにない流麗なスタイルで魅力的なスペシャリティカーがデビューした。それが5代目のS13型シルビアだった。

 1988年にデビューしたS13シルビアのコンセプトは、「若い男女のカーライフをお洒落に演出する、センス良く、走りが楽しい2ドアスタイリッシュクーペ」と今では考えられないが、当時は若者向けのスペシャリティカーの全盛期。

 ホンダからは1982年に登場した2代目プレリュードが、ロー&ワイドなボディとリトラクタブルライトの斬新なボディで、「デートカー」というジャンルを確立。1987年に登場した3代目プレリュードもデートカー路線で大ヒットした。

 それを横目で見ながら開発したのがS13シルビアだった。

 S13シルビアはデビューするや否や爆発的人気となり、1.8~2リットルのスペシャリティカーとして、先行するプレリュードをトップの座から引きずり落とし、デートカーとして若者たちに受け入れられた一方で、トヨタのカローラ・レビンとスプリンター・トレノ(AE86)、スターレット(KP61)などの後継車を求めていた走り屋たちの心も鷲掴みし、国内だけで約30万台も販売された。

 なぜ、これほどまでS13シルビアがヒットしたのか? 理由は大きく3つある。

 ひとつはデザインが秀逸だったこと。国産車の2ドアクーペの歴史を振り返っても、S13シルビアほど美しく、完成度が高いクルマはなかなかない。

 イタリアンな雰囲気、とくにピニンファリーナのテイストを日産流に消化したようなスタイリングは、文句なしにカッコよく、ちょうど大学生ぐらいになったスーパーカーエイジの男の子と、同世代の女の子にも人気があった。

 ライムグリーンツートンがイメージカラーで、キャッチコピーも「アートフォース・シルビア」。インテリアもかなり新しいデザインでクルマとしては珍しく、グッドデザイン大賞も受賞している。このデザインは、いま見ても十分レベルは高いと思う。

 ふたつ目は、なんといってもFRレイアウト(フロントエンジンの後輪駆動)だったこと。

 1980年代後半、乗用車は高効率のFF化が加速していた時代。ライバルのプレリュードやトヨタセリカもFF車(前輪駆動)。走り屋の定番、レビン・トレノもAE92からFFになり、「走りにこだわるのなら、やっぱりFR」というクルマ好きにとって、待望の一台となった。

 もちろん、スカイラインやフェアレディZ、トヨタ・スープラ(A70)やマツダRX-7(FC3S)などは、ターボ+FRのトップモデルとして販売されていたが、ボディもエンジンも大き過ぎず小さ過ぎない若者のジャストサイズのFRとなると、S13シルビアが唯一無二の存在だった。

 ハンドリングもFRらしく、アクセルを踏んでいける足回りで、フロントストラットサスペンションは、ちょっとストローク不足……だったが、リアのマルチリンクサスペンションはよくできていた。

 エンジンは、ターボモデルのK’sが1.8リットル(CA18)の前期型が175馬力、後期の2リットル(SR20)は205馬力。NAエンジンのQ’sとJ’sも、前期の1.8リットルが135馬力、2リットルの後期が140馬力と、グロス(S13シルビアはネット)で130馬力しかなかったレビン・トレノ(AE86)に比べればずっとパワフル。
 トヨタMR2(AW11)やレビン・トレノ(AE92)のスーパーチャージャー付の4A-Gでも145馬力という時代で、グランドシビック(EF)のB16Aだけが、160馬力と抜きんでていたが、シルビアもターボなら負けなかった。

 おまけにシルビアは車重も1.1トンとかなり軽く、当時としてはシフトフィールもビックリするほど上々だった。ビスカスとはいえFRスポーツに欠かせないLSDが入っていたのも大きな長所といえる。

 そしてもうひとつ重要なのは、価格が安価だったということ。S13シルビアのデビュー当時の新車価格はK’sで214万円。NAのJ’sなら166.5万円だった!

 前記の通り1980年代後半はバブル期で、しかもスーパーカーエイジがちょうど免許を取る時代。クルマ好きの男の子が多く、クルマを買うためにバイトに精を出す若者は珍しくなかった。そんな若者にとってシルビアに乗ることは手の届く夢であり、一番の目標。

S13シルビアさえあればデートも友達とワイワイドライブに行くのにも、峠を攻めるにもこれ一台でOK。大人4人がしっかり乗れて万能に使えて、カッコよし・走りよし・価格よし、となれば売れない方が不思議なぐらい。

1993年にフルモデルチェンジでS14型にバトンタッチするが、どうしたことかぼてっとしたスマートとはいえない3ナンバーサイズのボディに……。これが不評だったために、S13シルビアの人気が継続。

1995年の規制緩和で、チューニングカーの合法範囲が大幅に広がったことで、販売台数が多かったS13シルビアのチューニングパーツもドッと増える。とくにターボのK’sはブーストアップで手軽にパワーアップができるのため注目度もアップ。

タマ数も多く、価格の安いS13シルビアの中古車は、自分好みにイジる楽しみも教えてくれる一台として愛され続ける。その後、シルビアはS15になって再びスタイリッシュなシルビアとして帰ってくるが、S13ほどの勢いは取り戻せなかった……。

 いまでは程度のいいS13シルビアは少なく、あのサイズであのパッケージ、なによりあのスタイルは、いまのクルマにはない魅力がタップリ。もし、新車のS13シルビアが当時の価格で再販されたら、飛びつく人は多いはずだ。

 というわけで、S13シルビアのパフォーマンスの総合点はかなり高い。これが人気になった最大の理由といえるだろう。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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