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アウトバーンでコンパクトカーが最速!ヨーロッパの特殊な道路工事事情

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

片側3車線道路を対面4車線するから
トラックが車線からはみ出し走行

 ヨーロッパでは、フランスやイタリアを除いて、高速道路が通行無料の国が多い。その分、馬鹿丁寧なメンテナンスもないから、日本の高規格道路とは比べ物にならないほど、舗装の荒れたエリアが少なくない。しかし、馬鹿丁寧なメンテナンスがない代わりに、エリアを区切っての補修工事も少なくないようで、取材で訪れると、たいてい数回は道路工事に出くわすことになる。

 それがまた、日本国内では考えられないほどアバウトだ。走行料金が無料のアウトバーンは、速度無制限エリアのほか、制限速度が決まっているエリアもある。制限速度が決まっていなくても時速130kmが推奨速度とされている。
 道幅は、基本は片側3車線で、片側4車線以上のエリアも少なくない。その反面、山間部などでは2車線のエリアも多い。

これはドイツ・アウトバーンの道路工事の影響。それにしても道幅は狭い。
3ナンバーボディになったとはいうものの、Cセグメントのゴルフですらこのありさまだから、前の方を走行している大型トラックにとっては、とてもじゃないが、2台が並走するには無理があるように映る。
以下3枚の写真は、ドレスデンからフランケンベルクに向かうアウトバーンのA4号線を走行中に撮影。

 

 で、工事を実施する場合は、1車線分か2車線分を削るのがよくあるパターン。4車線エリアが3車線や2車線になるのはともかく、もともと3車線の道路で1車線分を閉鎖して残りの2車線を3車線にするケースでは当然1車線の幅は狭くなる。

 ときには片側3車線エリアを全部封鎖して、反対側の3車線を往き還りの4車線に設定する場合もある。単純計算すれば1車線半の幅で2車線を生み出しているわけだ。
 当然、車線の幅は狭くなり、大型のトラックなどは車線一杯…車線(の幅)を超えてしまうように見えるほど、窮屈に映る。
 こうなると大型トラックの脇をすり抜けるのは至難の業。追い越し車線に移って抜かずに、走行車線でおとなしく大型トラックを追走するに限る。

 彼の地の大型トラックは時速100kmで走っていることも多い。それなら問題ないのだが、時速80kmとかそれ以下の速度で走られると、流石にイライラしてくる。
 そして意を決して、大型トラックを追い越しにかかるのだが、左側のセンターラインに相当する部分には大抵はコンクリートのブロックが並べられていて、ディーゼルエンジンが唸りを上げている大型トラックとの狭い隙間を通るには気合も必要になってくる。それで『エイヤッ!』と速度を上げて素早く追い越すことになるのだが、スピード違反しても良いという免罪符となる訳もないのは当然だ。

 

写真右手に行先案内標識があることから分かるように、ここは本来フランケンベルクからドレスデンに還ってくる車線。もちろん逆行しているではなく工事で本来の車線が閉鎖されているため。1.5車線を2車線分に分割しているので、車線の狭さが強烈な印象だ。
後ろ姿のメガーヌIIIが堂々と走っているのに対して、その左側に見える大型トラックは、こちらが本来的には車線の主のはずだが、控え目に走っているように見えるのは気のせいか。

 

 それにつけても思い出されるのは、かつてレンタカーでスマート・フォーフォーを借りた時のこと。モデル末期で安くしてくれるというので、フランクフルトのダウンタウン外れにあったレンタカー屋で借り出した。独り旅だから特に問題があったわけじゃないが、大型のスーツケースを後部座席に載せたために圧迫感は少なくなかった。それにハイスピードの巡航が当たり前のアウトバーンでは、大型のエグゼクティブ・リムジンやハイパフォーマンス・スポーツと張り合うことなどさらさらなく、身を縮めるように(もともとボディは小さいが)…って走行車線を走っていたのだが、レーンが狭くなる工事区間では立場が逆転した。

 日本国内でいうところの軽自動車みたいなスマートだけに狭い場所なら得意科目、とばかりに大型トラックの脇をすり抜けていく。
 それに対して全幅1.8mを超える…モデルによっては2m近くもある幅広なリムジンなどは、なかなか追い越しに掛れず、また走行車線に戻るのを潔しとしない輩も少なくない。走行車線をノロノロ…と言っても時速80km程度では走っている大型トラックを斜め前方にロックオンしたまま追い越し車線を走り続けるリムジンやスポーツカーがいて、それがまた、さらなる渋滞を呼び起こすことになる。
 もともとコンパクトなクルマが好きで、心の中では自慢しながらスマートに乗っていたのだが、この時ばかりは思わず『やった、やった!』と快哉を叫んだことを思い出す。

3車線を往きと還りで2車線ずつ、都合4車線に設定し、しかも中央には、往きと還りを区分するコンクリートブロックでできた分離帯が設置されている。その分も計算すると、それぞれの車線は、本来の幅から7割程度まで狭くなっている訳だ。自分が旨としてきた『コンパクトは正義』に自信を持った、って我田引水に過ぎるか。

 これには後日談があって、軽自動車に毛が生えた程度、と思っていたスマートだが、実は借りていたフォーフォーの全幅は1.7m近くあったことを知り、改めて無知は無謀を呼ぶ、と反省した次第。ほんと、海外取材で無謀な運転から事故した、恥ずかしい限りだからね。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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