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非力ゆえの面白さがある! 低コストで楽しめる軽自動車モータースポーツとは

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭

新規格NAによる東北660選手権の魅力

 全国的に盛り上がる軽自動車レースの火付け役は、スポーツと対極に思えるエンジンの出力が低い新規格NAエンジン搭載車だった。車体も維持費も消耗品も安く、改造範囲が狭く純粋なウデの勝負ができる。開幕から9年目を迎えた現在も50台を超えるエントリーが集まる「東北660選手権」を例にNAレースの魅力を探ってみよう。

 軽自動車によるスポーツ走行といえば、アルトワークスなどターボ車が主役。自然吸気エンジンのNAは旧規格の時代にビートというホットモデルがあったが、1998年10月に新規格へと切り替わってからは、廉価モデルやエコカーとしての印象が強い。しかし商用ベースとしての性格が強いためマニュアル車が多く、かつ新車の価格は手頃だし、自動車税や保険が安く若者でも維持しやすい。そんなポイントに着目し、2011年から始まったのが東北660選手権だった。

 エントリーは1戦目の時点で25台を超え、3年目には予選落ちが発生する台数に達し、9シーズン目の今年も50台オーバーという驚異的な成長を遂げる。人気の秘訣は多々あるが、何より大きいのはコストの安さ。先に挙げた車体/維持費/消耗品はモチロン、改造範囲を厳しく制限し「速くするためお金をかけ放題」という、草レースにとって永遠の課題をクリアした。ただしチューニング自体が好きな人もいるので、そちらの層には改造範囲の広いクラスを用意。とはいえ過給機や排気量アップはできず、勝つには走り込みと車両のセットアップが不可欠という、要は「努力した人が報われる」レースなのだ。

 そして非力なエンジンであるがゆえに、テクニックを磨くステージとしても最適。一般的なパワーのスポーツカーであれば、ステアリングを切ることでタイヤの抵抗が増し、減速するなんて症状はまず体感できない。しかし実測50psそこそこのパワーでは、ステアリングの舵角が拳ひとつ分違うだけで加速やストレートエンドの最高速が大きく変わってしまう。よりシビアかつ繊細なドライビングが求められ、その技術は当然ながら他のクルマにも応用できるわけだ。

 さらに台数の多さもレースを楽しむには欠かせない。東北660選手権は、エビスサーキット西コースとスポーツランドSUGO、また2014年までは仙台ハイランドでも開催されていたが、いずれもフルグリッドで決勝中はどのポジションでも近くにライバルがいる状態。パワーがないだけに抜くのは非常に難しく、接近戦でしか習得できない技術や経験もある。よほど特殊な状況じゃない限り、ひとり旅にならないのでレース後の充実感もひとしおだ。

 あとは安全性と公平性。6点式を超えるロールケージの装着が義務化され、服装も耐火性のスーツや4輪用ヘルメットが必要で、走行前は安全チェックを主とした車検を行なう。さらに、入賞車は違反がないか再車検まで実施する。

 単純に参戦コストを下げるのではなく、競り合いというレースの醍醐味を誰もが味わい、安全に対する意識と知識まで身に付くイベント。公式レースの経験者から10代の学生まで幅広い層に受け入れられ、東海地方や関西地方からはるばる遠征する人も多い。これは、コストの安さだけが理由ではなく、レースの楽しさや難しさが濃縮されているからなのだ。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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