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車いすのレーサー青木拓磨が「ロードトゥ・ルマン」を完走!ル・マン24h参戦の夢をつなぐ

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明

周囲の心配を払拭する意義ある完走

 フランスのル・マンで開催されるル・マン24時間耐久レースの前に、同じル・マン・サルト・サーキットで行われた「ロード・トゥ・ルマン(RTLM)」。このレースにエントリーするチームは、ル・マン24時間耐久レース本戦参加を目指している。車いすのレーシングドライバー・青木拓磨選手もそのひとりで、「SRT41」チームからRTLMに参戦。現地時間の6月13日行われた予選とレース1をドライブし、最後尾スタートとなりながらもチームメイトとともに50台中36位でフィニッシュした。

 ご存じない方もいるだろうから改めて青木拓磨選手のことを紹介すると、1990年代に2輪のレース界で活躍し、世界ロードレース選手権(現MotoGP)に参戦をしていた1998年、テスト中の事故によって脊髄を損傷。下半身不随となったものの、現在はル・マン24時間レース参戦を目標にフィールドを4輪に移してレース活動をしている。

 青木拓磨選手が合流したチーム「SRT41」は、実業家のフレデリック・ソーセ代表がオーナーを務める。ソーセ代表は、人食いバクテリアによって四肢切断を余儀なくされたが、その後の2016年にル・マン24時間レースの特別出走枠で参戦したという経験を持つ。そこに集うドライバーも皆身体になんらかの障がいを持つ選手で構成されており、青木拓磨選手以外に、ベルギー人のナイジェル・ベイリー選手(下半身不随)、フランス人のスヌーシー・ベン・ムーサ選手(左腕切断)の3名がチームで走ることとなっている。

 今回、青木拓磨選手が参戦する「RTLM」は、ル・マン24時間耐久レースを目指すチームが参戦するレースで、GT3車両17台、そしてLM-P3車両33台の計50台がエントリー。「SRT41」チームのマシンは、ゼッケン84のウルティメイトカップLMP3クラスに参戦をしている『リジェJS P3』だ。

 予選およびレース1決勝日となった6月13日。ここ数日よりは天候が安定した1日となった。まず午前中に練習走行セッションがあり、青木拓磨選手はすでに12日のセッションで走行済みだったため、ナイジェル選手とスヌーシー選手の2人が走行しマシンの感触を確かめた。

 続いて、2回の予選セッションが行われた。1回のセッションは15分。2回目のセッションまでに15分間のインターバルが設けられている。予選1回目のスタートドライバーは青木拓磨選手となった。

 予選は、パドックからピットロードに入り、そのままコースインとなる。ところが、青木拓磨選手のマシンに火が入らず、パドックでスタートできなくなってしまったのだ。さらにパドックはピットが離れていることもあって、チームのメカニックは青木拓磨選手のそばにいなかったため、すぐに対処することができなかった。結果的に、コースインの時間に間に合わせることはできず、予選1回目をふいにしてしまう。

 そして2回目の予選セッションでは、無事にほかの車両とともにコースインできたものの、赤旗中断があったりして、思うようにタイムを狙うことができず。「まともに走れたのは1ラップのみ」という状況だが、なんとか無事に予選セッションを消化した。

 そして迎えたレース1。このRTLMは、ドライバー交代1回で55分間のレースを行う。そこで比較的短時間に車両の乗り込みができるスヌーシー選手がスタートを務め、後半のセッションを青木拓磨選手が受け持つという戦略になった。

 レースは無事にスタート。SRT41チームの84号車は特別枠での出走のため予選結果に関係なくグリッドは最後尾。それでもスヌーシー選手は快調に飛ばしていき、オープニングラップですでに40位まで順位を上げ、さらに前車を攻め立てる。しかし、レースも中盤に差し掛かろうというタイミングでセーフティカーが導入される。

 ここがドライバー交替に最も有効なタイミングだが、もちろんほかのチームも同じ。SRT41チームは84号車をピットインさせるも大混雑。周りのチームのマシンも続々と戻ってくるため、狭いピットではいったん車両を斜めに止めて、メカニックたちがまっすぐに位置を直してからドライバー交替を行った。

 チームの迅速な作業もあって、青木拓磨選手はコースに素早く復帰。そして後半スティントをしっかりと追い上げて、見事36位でフィニッシュした。

 レース後、ソーセ代表は「今日のレースには満足している。このレースウィークで多少トラブルがあったものの、レース1はすべてうまくいった。スタートドライバーのスヌーシーが36番手まで追い上げて、ピット作業では他のチームからは後れを取ったものの、ドライバー交替で2分30秒というロスのないピット作業で終えることができた。そしてタクマ(青木拓磨選手)によって再びその順位を取り戻すことができた。2人ともよくやってくれた。このプロジェクトに対して周りから本当に大丈夫か? という見方があった。だが、今回のレースでその雰囲気が変わるほどの大きな偉業だ。明後日も今日と同じようにレースをできることを願っている」とコメント。

 スタートドライバーを務めたスヌーシー選手は、「ル・マンというのは特別な場所。クルマを壊すことなくいいポジションまで順位を上げることができて、そしてゴールできた。言うことなしだね」と話す。

「年に1回しか走れない、この特別なサーキットで貴重な体験ができた。そして完走できた。もちろんもっとプッシュをすればタイムを削ることも可能だったけれど、それよりもチームの目標である、無事故・無違反・完走を達成でき、オーナーも喜んでくれている。スヌーシー選手もスケベ心を出さず、無事走り切ってくれた。よかったと思う。コースもわかって来年のル・マン24時間レースに向けてイメージトレーニングもできた。自分の走行は今日で終わりだけれど、明後日のレース2、そして今シーズン残りのウルティメイトカップ(SRT41チームが今シーズン挑戦しているレース)の成績を上げていくべくトライをしていこうと思います」と青木拓磨選手。

 ル・マン24時間レースは、翌6月14日(金)に市内でのパレードなどがあるが、「RTLM」としてはスケジュールはなにもなく休息日となる。そして15日に、ル・マン24時間レース決勝を前にRTLMのレース2が行われる。ここには、レース1を走行しなかったナイジェル・ベイリー選手とスヌーシー選手が参戦する。

 

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