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車いすレーサーだけで2020年にル・マン参戦!チームオーナーが語るプロジェクトの真相

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TEXT: 青山義明(AOYAMA Yoshiaki)  PHOTO: 青山義明

モータースポーツ参戦のハードルを下げる

 毎年、フランスで開催されるル・マン24耐久レース参戦を目指しているのが、車いすの日本人レーサー・青木拓磨だ。今年は、その登竜門ともいえるレース「ロード・トゥ・ルマン(RTLM)」にSRT41チームで参戦。チームオーナーのフレデリック・ソーセ代表にインタビューした。じつは、ソーセ代表自身も四肢切断しながらも、2016年にル・マン24時間耐久レースに参戦した経験を持つレーサーなのだ。

 青木拓磨選手は、幼少時のポケバイからスタートし、世界最高峰レースであるFIA世界ロードレース選手権(WGP、現MotoGP)のGP500クラスまで上り詰め、さらにタイトルを目指していた矢先に、1998年のテスト中の事故によって、下半身不随となってしまった。だが、そのの事故から一念発起し、4輪へ転向。サーキットレースからラリーレイドまで幅広く活動している。

 

四肢切断からわずか4年後にはル・マン参戦

 現在、青木拓磨選手が目指しているのは、ル・マン24時間レースへの挑戦。そのような画策をしていたときに、アジアン・ルマンの代表を通じて、ACO(フランス西部自動車クラブ)から紹介されたのが、青木拓磨選手を今年のRTLMで走らせたSRT41チームのフレデリック・ソーセ代表だ。

 ソーセ代表は現在50歳。2012年7月、家族旅行中に負った擦り傷から人食いバクテリアと呼ばれる細菌が体内に侵入。体組織を壊し、細胞を壊死させていく。結果的に四肢切断ということになってしまったのだ。

 昏睡状態に陥ったソーセ代表は、7月末に病院に担ぎ込まれ、すでにその半月前から身体を切断しなければならない状況にあった。そして意識が戻ったのは8月末だったという。つまり意識が戻ったら自分の手足がない状態であったという。

「意識が戻った直後は手も足もないという実感がなく、すごくショックだった」という。ところが、それからの行動が凄かった。意識が戻ってからわずか2か月後にはリハビリを開始し、3年後となる2015年にはフランスの耐久レース「VdeV(ベドゥベ)耐久選手権」にシリーズ参戦を果たしている。それまではレース経験がなかったのだが、2016年にはLMP2クラスのマシンに国内各所で参戦。そしてル・マン24時間耐久レースにも出場した。

 小さいころからクルマもレースも好きだったのだが、この事故の後、自身にとって「すごく大きな挑戦が必要だった。行くしかないという状況に追い込む必要があった」という。

 ル・マン24時間レースに出場したことについても「夢がかなった」ということ以外に「周囲の多くが無理だといい続ける中、できることを実証でき、不可能だといっていた人たちに対して可能だと見せつけて、驚かすことができた。それはすごくうれしかった」という。その影響は大きく、今でもル・マンのパドックをソーセ代表が移動するだけで、ひっきりなしに声を掛けられるようになっている。

障がい者にモータースポーツ参加の門戸を開く

 また、2016年の挑戦する前、障がい者にとってまだまだレースを行うということはハードルが高く、だからこそこういう障がい者チームを結成してレースを行っていくという活動の必要性を感じていたという。それをカタチにしたプロジェクトが「フレデリック・ソーセ・アカデミー by SRT41」だ。

 このプロジェクトは、3か年計画でル・マン24時間レースに参戦をするというもの。まずはフランス国内での耐久選手権シリーズにLMP3カテゴリーのマシンで参戦。2年目にさらに活動を広げ、そして3年目にマシンをLMP2クラスの車両に乗り換えて、ル・マン本戦及び他のレースを戦うという。青木拓磨選手は、このプロジェクトのメンバーとして参加しているのだ。

 チームは、ベルギー人のナイジェル・ベイリー選手(拓磨選手と同じ下半身不随)、フランス人のスヌーシー・ベン・ムーサ選手(左腕切断)、そして拓磨選手という3人のドライバーで、現在プロジェクト2年目。今回は「ロード・トゥ・ルマン(RTLM)」というル・マン24時間レース参戦を目指す者たちが参戦する併催イベントに挑戦した。

 プロジェクトをスタートさせた当時は、レベルはまだまだ低く厳しかったという。それでもチームは大きく成長し、今はソーセ代表がプロジェクト創立当初の期待値に沿ったチームに仕上がってきたという。

 来年はマシンをLMP2にスイッチ。チームのメカニックは入れ替わり、体制は大きく変わることになる。マシンのスピードも上がるからドライバーの3人にももっとトレーニングを積むように指示を出しているという。そして2020年のル・マン24時間レースに挑戦。「レース自体も24時間と長いけれど、すでに決勝の15日前からレースは始まっているからね」と、今からチームにハッパをかけ、さまざまな準備を進めている様子だ。

 2020年の24時間レース参戦でこのプロジェクトはいったん終了し、再びLMP3を使用して3か年計画でル・マン本戦を目指すプロジェクトを繰り返すという予定だ。

 ソーセ代表は「身体障がい者のモータースポーツ参戦へのハードルをもっと下げていきたい」という強い意志を持って活動を続けており、より広い認知されることを願っている。青木拓磨選手を含む今回第一期の3人には「それぞれより大きくなって活躍していってほしいと思う」という。この活動がもっと広がっていくことを期待したい。

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