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高齢者による事故を防ぐ、後付け安全運転支援装置の費用負担が起こす矛盾点

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

新サービスの安全確保こそがMaasだと思う

 政府が高齢者向けの新しい運転免許制度を検討しているとの情報が、6月に報道された。政府が推進する安全運転サポート車などに限って運転を認めるようにするとの案について、この先関係省庁などが連携して取り組んでいくことになるという。

 高齢者による運転操作ミスや体調不良による痛ましい交通死亡事故が後を絶たない。しかし、事故件数はクルマの安全性能の向上により減っており、このうち高齢者による事故件数も、報道で目立つようなほど増えているわけではない。ただ、減り方が少なかったり、横ばいであったりという状況が、全体のなかで際立たせている。

 かつてに比べ高齢者が健康で長生きするようになり、年齢を問わず生活を自立できていたり、余暇を仲間と楽しんだりする機会が増え、反面、身体機能の衰えとともに運転操作を誤ることにつながってしまうといった不幸が生じている。

 伝えられる事故報道のなかで、高齢者による事故は比較的年式の古いクルマ、もしくは友好的な安全運転支援装置が付いていないクルマが多いようだ。そこで、トヨタやダイハツなどは、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の非装着車に対し、後付けの部品を販売。価格は3万4000~5万5000円ほどだが、安全装置に新たな価格的負担を顧客に負わせることはどうなのだろう。

 なかには、そもそも適切な運転姿勢が取れない車種もある。それが踏み間違いの原因のひとつにもなっているにも関わらず、だ。

 そして特定の車種で”高齢者の事故が多い”というSNSでの風評。その自動車メーカーのクルマを愛用してきた顧客に対し、後付けの安全機能を無償装着するような対応はできないのだろうか(リコール制度のように)。そこで行動を起こすかどうかは、所有者の意識の問題。ドライブレコーダーを装着するかどうかとは別次元の機能装備だと思うのだ。

 東京都の小池百合子知事は、緊急対策として来年8月31日までの期間限定で、踏み間違え時の加速抑制装置の後付けに対し、9割の費用負担をすると表明。しかしながら税金を投じる行政に任せ、なおかつ期間限定の緊急対策に頼っていいのかという問題もある。地方自治体の財源の多少で解決する課題ではない。交通事故は、全国で起こる可能性があるのだ。

 単に汎用の安全装置を後付けするとか、行政によって年齢というひとつの基準で運転免許制度を改定し、個人の自由裁量であるべき移動の仕方を選別することが本当の解決になるのだろうか。ひとりひとりの暮らしに対処したのでは、手間とお金が掛かるから最大公約数で対処しようする発想は、もはや時代に合わなくなっている。

 ダイハツが数年前から実施している地域プロジェクトのような、その土地に根差した相互扶助の取り組みや、先進の情報通信や制御技術を組み合わせた新サービスとしての安全確保こそが、本当のMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)だと思う。

 医師のいない地域で遠隔によって名医による医療が可能となっているように、必ずしも日々顔と顔を合わせることができなくても、地域の販売店などがクルマに関する様々なサービスを提供するコンシェルジュになるという発想から、地域の安全と安心を向上させることにつなげられるのではないか。そこは顧客との接点を持つ販売店の今後の存在理由の一つとなっていくだろう。

 テスラの例に見るように、これからのクルマ販売はインターネットで済んでしまう可能性がある。また、電気自動車(EV)となれば、整備にもほとんど費用は掛からなくなる。自動運転化が進み、事故自体が減って行けば損害保険の在り方も変わってくるはずだ。

 販売店の事業基盤は、中古車販売と、車両の点検整備と、損害保険の3本柱といわれている。そのうちのいくつかは将来的に縮小傾向である。高齢者事故を、単なる一つの課題解決として扱うのではなく、自動車業界全体の先行きを見通しながら、自動車産業に関わる人々が自主的に未来を創造するなかで解決策を見つけ出すのが本来の在り方のように思える。

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