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ミスターBMW Studie 鈴木BOB康昭氏インタビュー 【afimp×Auto Messe Web連載企画 第8回】

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TEXT: 山田弘樹

ブランパンでアジアのサーキットへ行く度に
『スタディの商品を扱いたい』と言われる

 afimp1月号(2018年12月10日発売号)とafimp3月号(2019年2月10日発売号)、afimp5月号(2019年4月10日発売号)、afimp7月号(2019年6月10日発売号)で掲載した”afimp web”連動企画、スタディ代表である鈴木康昭氏のロングインタビュー。第8回目となる今回、我らがBOBさんは「スタディとチューニング業界の未来」について語った。

「afimp7月号」(2019年6月10日発売)掲載前号のあらすじ
 主人公は、BMW専門プロショップ「スタディ」の創始者である鈴木康昭氏(すずき・やすあき)。1968年7月30日生まれの50歳。
神奈川県横浜市生まれの鈴木氏が1995年、東神奈川のマンションの一階で産声を上げたスタディの創立から、VWやアウディのチューニングを得意とするコックスと出会い、レーシングダイナミクスで始まったBMW人生。そして、BMW専門プロショップスタディをスタートさせ、インターネット時代とE46型3シリーズでブレーク。そして満を辞してレースの世界、SUPER GTへの参戦。そして2011年チャンピオンを獲得。さらにセミワークスチーム「BMW Sports Trophy Team Studie」でブランパンGTアジア参戦した。

「ここからの20年は、全てがまったく違うものになると思うよ。2019年、BMWも全く新しくなる。ボクたちにとっても、全く新しいビジネスが始まる! とすら思っているよ」
 1995年に東神奈川にあるマンションの1階から創業し、今や全国6店舗に及ぶ多店舗展開。2008年にはスーパーGTへの参戦も果たし、今なお「ブランパンGT ワールドチャレンジ・アジア」で2台のM4 GT4を走らせるスタディ(ワークス名はBMW Team Studie)。
 まさに破竹の勢いで突き進む鈴木代表は、しかし今後のチューニング業界について「今までのようには行かなくなる」と未来を予想する。

「チューニングそのものは、日本がちょっとシュリンク傾向にあるだけで、むしろアジアでは伸び続けているよ。ブランパンでアジアのサーキットへ行く度に『スタディの商品を扱いたい』というオファーは受けるし、ショップを出さないか? という提案も沢山来る。ただ……」
 そこから少し沈黙を挟んで、鈴木さんは続けた。
「ただ、これまでと同じことをやっていてもそれは続かないと思うんだよね」

 新型車をいち早く購入し、これをベースにデモカーを作る。そこに最新のホイールとパーツを装着して、ユーザーの購買意欲を高める。低く構えた車高とエアロでスタイルアップ。吸排気系とDMEでターボパワーを高め、見た目も速さも兼ね備えたBMWを提案する。
「もちろんそうしたチューニングは基本。より魅力的なBMWを作るためにスタディが、スタイルアップを提案し続けて行くことは変わらないよ。ただこうしたチューニングが続かない理由は、市場というよりもまずクルマ側の問題で、その方向性が大きく変わって行くからなんだ」

自動運転へのシフトが始まったら、
本当に今までのようには行かなくなる

 クルマそのものが変わって行く・・・・・・。
 そう言われてイメージするのは電気自動車だ。ということはBMWがi3やi8で先鞭を付けたように、今後チューニング業界にもEV化の波が押し寄せてくる、と鈴木サンは予想しているのだろうか?
「もちろん自動車の多くがEVになったら、今までのチューニングが全て通用するわけじゃなくなる。でもそれは、別の話。クルマをカッコよく、速くしたいというのは電気自動車になっても変わらないからね。共通点は沢山あると思うよ」

 ここで言うのはもっと具体的な話なのだと、鈴木さんは言う。
「それは、自動運転へのシフトが始まったら、本当に今までのようには行かなくなるという意味なんだよ」

「ADAS」という言葉を聞いたことがあるだろうか? これはアドバンスド・ドライバーズ・アシスタント・システムの略称で、つまりは自動運転を睨んだ先進運転支援システムを意味する。

 現状自動車メーカーは、こうした先進安全技術を、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を軸として展開している。前車との車間距離を自動調整するクルーズコントロールをベースに、さらなるカメラやミリ波レーダーの搭載で左右および死角をもキャッチ。電動パワーステアリングを自動制御することで車線逸脱を防止しながら、これがカーブに追従したり、ウインカーを使えば車線変更までするようにまでなって来ている。

 現状こうしたADASは、奇しくも最も進んだものとしてBMWが「ハンズオフ」機能を初めて実現した(条件は高速道路上、時速60km/h以下の渋滞支援)。また日産がスカイラインに搭載する「プロパイロット2.0」で、一定条件下における「同一車線内ハンズオフ機能」を謳っている。

 ただどちらも現在は「レベル2」といわれる段階にあり、ドライバーは最後まで責任を持って走行状況を監視しなければならない。だから運転中に眠ることや、まったく他のことをするといった意味での完全自動運転からは、まだほど遠い状況だと言うことができる。

 ただ完全にしろ不完全にしろこの自動運転化の波は間違いなく押し寄せてくるものであり、これに対して鈴木サンは強い警戒心を抱いているのだ。
「もしこうした自動運転化が行われたら、ホイールやタイヤを換えることすらもできなくなるかも知れないからね」

センサーを極めたモノが
これからのチューニングを極める

 自動運転中に万が一の事故が起こった場合。問題となるのは保険会社がこうしたチューニングを「メーカー指定の常態にない」と判断して、保険料を支払わなくなってしまうということだと、鈴木さんは語った。そうすれば言わずもがな、既存のチューニングビジネスは下火になってしまう。

「あと10年も経たないうちに、こうした世界が現実として見えてくると思う。その上でスタディも生き残らなければいけないから、いつも頭を悩ませているよ(笑)。ただ本当にクルマ好きな人たちに向けた、クラシック・ビジネスは生き残ると思う。むしろこれは、伸びて行くよね。あと、メーカーがオーソライズ(認定)したスポーツカーやスポーティカーは、絶対にこれからも生き残る。BMWで言えば「M」は確実に生き残って行くだろうね。だからオレも、そこを見ながらこれからの10年を作り上げて行かなきゃと考えているんだ」

 では、具体的にはどんなことをやって行くつもりなのだろう?

「それはまだ言えない(笑)。いや、少しだけ言うと、スタディが車輌販売を始めるというのもその一環なんだ。あと地に足のついたことろで言うと、センサーに対応するチューニングパーツの開発。今のクルマは(ADASの影響もあって)センサーの持つ意味がとても大きくなってきた。アプリでパワーや車高が変えられたりとか、そういうチューニングも当たり前になって来ているよね? つまりセンサーを極めたモノが、これからのチューニングを極める。そんな風に考えているんだ」

 そしてそのデジタル化は、クルマにとって必要なことだと鈴木さんは言う。

「ボクはクルマの他にも時計やカメラが好きなんだけど、時計や趣味性の高いカメラがアナログへと戻っていったのに対して、クルマだけはデジタルを突き詰めたよね。それはクルマが安全性も大きく関係するものだから。デジタル化って決してコストのためだけにやってることじゃないんだ。たとえばメーターの視認性を向上させたり、情報量を増やすことが可能になる」

 こうしたインフラに対応して行くためにも、これからのチューニングにはセンサー、そしてデジタルを極めることが大切になってくると鈴木さんは語った。

実はいまスタディで面白いことを考えてるんだ!

 そういう意味でスタディがレース活動を行い、メーカーに認められたことは、何よりも大きなアドバンテージだと言える。

 なぜならいち早くメーカーが発売する車輌の情報に触れることができ、これを先んじて解析することが可能になるからだ。そうなるとスタディが、先々ディーラーとして機能して行くというストーリーにも、一環性があって大きく頷ける。

 ちなみにこうした、メーカーと密接な関係を持つ大切さを説く発言は、あのアクラポビッチや、KW(カーヴェー)にインタビューしたときも同じように語られていた。つまりスタディはレースでの活躍を通してBMWが認める立ち位置となり、世界規模のチューニングメーカーと、肩を並べる存在になったのだと言えるだろう。

 ではスタディが具体的にはどんなことを行って、チューニングのデジタル化を行って行くのだろう? またこれからのスタディは、どのようにして10年先を乗り越えて行くのか。

「実はいまスタディで、面白いことを考えてるんだ。それを教えてあげるタイミングも、もう少しで来ると思うから楽しみにしていてよ!」
 そう語って、鈴木サンは今回のインタビューを締め括ってくれた。

 ちなみに8月10日発売のimp本誌では、COX会長 渦尻栄治氏と鈴木氏の「師弟対談」が実現! スタディがレース活動に踏み切るきっかけとなった一言や、COX時代の懐かしい話、そして未来に向けたおふたりの気持ちをインタビュー形式でお届けする予定だ。

続く。

afimp9月号(2019年8月10発売号)の本誌で続きをお楽しみ下さい!

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