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ミニバンのルーツは乗用車の派生モデル!欧州では戦前より登場

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了

車内が広いハイト系が人気を博す

 2000年代初頭に一大ブームを巻き起こしたミニバン。ここ数年はSUV、特にクロスオーバーSUVに取って代わられた感はありますが、日本のファミリーカーとしての地位を確立したといえるでしょう。さらに国内の販売台数で上位を競い合っている軽乗用車のハイトワゴンなども、この範疇にはいると考えたなら、7月にはダイハツのタントとホンダのN-WGNがフルモデルチェンジするなど、今も熱いカテゴリーであるのは疑う余地がありません。

 軽乗用車のハイトワゴンと言えば、そもそもは72年に登場したホンダのステップバンがその祖とされています。もちろんこの当時は『軽自動車のハイトワゴン』などという洒落たカテゴリーや呼び方などなく、軽のバン(=商用車)とひとくくりにされていました。

 今回、アメリカの博物館ツアーではミニバン、軽乗用車のハイトワゴンではなく本来的なミニバンに関する展示車両も少なくありませんでしたので、その歴史を振り返ってみることにしましょう。

 

ミニバンの先達として認められたクルマとは?

 ミニバンの歴史を語る上で、これこそがミニバンの始まり、と広く認識されているのが北米ではクライスラーが84年モデルとして投入したダッジ・キャラバン/プリマス・ボイジャー。日本国内では82年に発表された日産のプレーリーでしょう。日米ミニバンの始祖とされています。

 キャラバン/ボイジャーは、GMやフォードに水をあけられ苦戦していたクライスラーにとって、まさに中興の祖とも言うべきアメリカ市場における大ヒット作となりました。国内ではミニバンという概念自体が時期尚早だったせいなのか、残念ながらプレーリーは爆発的なヒットとは成り得ませんでした。

 しかし、前輪駆動の乗用車をベースに、着座姿勢を立たせ気味(アップライト)に設定するパッケージングは、その後多くの国産モデルに継承されていきます。さらにピラーレススライドドアを左右に採用したのも画期的でした。一方、1ボックスタイプの商用バンを持っていなかったホンダは、これを逆手にとってアコードのプラットフォームを使用して94年に投入したホンダ・オデッセイがヒット。これによりミニバンそのものが認知されることになってゆきました。

 プリマス・ボイジャーはデトロイトにあるヘンリー・フォード博物館/The Henry Ford Museumで撮影。日産プレーリーは神奈川県・座間にある日産ヘリテイジ・コレクションで撮影です。

 

戦後には海外で乗用車ベースのミニバンが登場

 まだミニバンという呼び方も概念もありませんでしたが、ヨーロッパでは戦後の早い時期から、ミニバン“的”なモデルが幾つか登場しています。ドイツの小型自動車メーカーLloyd(ロイト)のLT 600などはその好例で、その車名からも分かるように前輪駆動の乗用車であるLP300~LP600をベースに開発され、全高/室内高を引き上げたアップライトなパッケージングなど、後のミニバンの文法通りのクルマに仕上がっていました。

 またリア・エンジンでフロントノーズを突き出してないから1ボックスの範疇とされることもありますがVWのタイプ2もタイプ1(ビートル)をベースに開発されたことを考えるなら、これもミニバンでしょう。

 そしてFIAT 600をベースにしたムルティプラ(Multipla)も印象的なミニバンの一台と見ておかしくはないはずです。

 Lloydはテネシー州のナッシュビルにあるレーン自動車博物館/Lane Motor Museumで、VWのタイプ2はヘンリー・フォード博物館/The Henry Ford Museumで撮影。それにしてもヘンリー・フォード博物館の多岐にわたる収蔵には驚かされるばかりです。なお今回出逢えなかったムルティプラは、以前訪れたイタリアはトリノ市内にあるフィアット歴史博物館/Centro Storico FIATで撮影したものです。

 

革新的な戦前のミニバン“的”モデル

 さらに時代を遡って戦前のモデルを見て行くと、1933年のダイマクション・カーを発見。スタイル(エクステリア・デザイン)も独特だが、メカニズム的にもリア・エンジンの前輪駆動と革新的です。

 このダイマクション・カー(レプリカ)は、レーン自動車博物館で撮影しました。

 1935年のスタウト・スカラブを35年のスタウト・スカラブは、インディアナ州のサウスベンドにあるスチュードベーカー博物館/Studebaker National Museumで発見しました。リア・エンジンの後輪駆動と、当時一般的だったフロント・エンジンの後輪駆動とは一線を画しています。

 これを果たしてミニバンと呼ぶべきかは意見の分かれるところかもしれませんが、全高/室内高を引き上げたアップライトなパッケージングや、パッセンジャーの乗車スペースを確保するために工夫されたパッケージなどを考えれば、この2台がミニバンの源流と考えて間違いはないでしょう。

 ちなみに、スタウト・スカラブは戦後の46年にスタウト・スカラブ・エクスペリメンタルとして新たな試作モデルが登場しています。こちらは戦前のモデルに比べると、随分オーソドックスなスタイルとなりましたが、世界で初めて、グラスファイバー(FRP)製のボディ外板を採用するなど、技術的に挑戦を続けるスタイルが貫かれています。

 スタウト・スカラブ・エクスペリメンタルはケンタッキー州のボーリング・グリーンにある国立コルベット博物館/National Corvette Museumで撮影したもの。アメリカを代表するスポーツカーのコルベットとは一見無関係のようにも思えるのですが、実はともにFRP製のボディを纏っています。そんな経緯もあって、コルベット博物館が、歴史的な大先輩に敬意を表しての展示となったようです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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