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F1のレース技術も投入! アスリートに最適化し2020年メダルを狙う「車いすレーサー」

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TEXT: Auto Messe Web編集部  PHOTO: Auto Messe web編集部

開発メーカー代表に聞く最新「車いすレーサー」

 台風19号襲来のなか、盛況のうちに幕を閉じたF1日本グランプリ(三重県・鈴鹿サーキット)。その2日後10月15日に、東京・六本木では、レッドブル・トロロッソ・ホンダのF1マシンと共に、陸上競技用の最新「車いすレーサー」が展示された。

 2020年の東京パラリンピックでメダル獲得を目指す競技用の車いすを開発したのは、F1チーム「トロロッソ・ホンダ」のをスポンサーでもあるRDS。同社は、なぜこのマシンを開発し、なにを目指しているのか? RDS代表取締役社長の杉原行里(スギハラ・アンリ)氏に話を聞いた。

モータースポーツの技術を投入

 イベント当日、会場の六本木ヒルズアリーナに展示されたのは日本グランプリで8位を獲得したレッドブル・トロロッソ・ホンダのF1マシン「STR13(F1参戦車と同カラーのマシン)」。

 その周囲を囲むように車いすレーサー「WF01TR」、RDSが市販化のために開発中の小型モビリティ「WF01」、車いすから身体データを取得するシミュレータ「SS01」が並べられた。

 「F1マシンと車いす」、一見するとあまり縁がなさそうな組み合わせだが、なぜ同時展示したのだろうか? 杉原氏に聞いた。

「弊社は、これまでモータースポーツをはじめ、医療・福祉、最先端ロボットなどの研究開発を手掛けてきました。特に、クルマやモータースポーツ関連では、様々な先行開発を行なっています。車いす事業は、その技術や経験を活かして、新しいタイプの車いすを作ることを目標としています」。

 続けて「F1で生み出された技術は、例えばパドルシフトなどが普通のクルマにも採用されているなど、すでに一般社会に落とし込まれています。それと同じように、車いすの陸上レースなど、最先端のパラスポーツに挑戦して生まれた技術を、新しい日常に落とし込むことで、人々の生活の質などを高めることに役立ちたいという思いがあります。今回の展示は、そういった弊社のコンセプトを具現化したものです」。

アスリートの感覚に応じた設計

 高剛性のカーボンモノコックフレームや、アルミ、チタニウムなどレースカーにも使われる様々な材質を使い製作されたのが車いすレーサー「WF01TR」。開発プロジェクトは、57歳でメダル獲得を⽬指す伊藤智也選⼿を開発ドライバーに擁して、2017年からスタートしている。

 伊藤選手は、車いす陸上のトップアスリートで、2008年北京パラリンピックで金メダル、2012年ロンドンでは銀メダルを獲得したほか、世界記録保持者でもある。2020年の東京パラリンピックでも、57歳ながら出場が有力視されている選手だ。

 その伊藤選手を迎えた開発により、どんなマシンに仕上がったのか? 杉原氏によると、最も大きな特徴は「パーソナライズ」だという。杉原氏はこう語る。

「もっとこうしたいとか、こうすれば速くなるといった選手の要望は、陸上車いすレースの場合、感覚的なものが多い。F1では、様々なデータに基づいて開発やセッティングができますが、車いすレースでは、選手個々人をセンシングして、それぞれに合ったマシンを作ることが大切になります。

 そこで、3スキャナーやモーションキャプチャ、フォースプレートなどの機器を使い、マシンの動き、⾛⾏中の伊藤選⼿のフォー ム、⼒の分散バランスなどの⼒学なデータを計測。それらのモーションデータを元に伊藤選⼿の『感覚を数値化』してマシンを製作しました」。

目指すは「パーソナライズの量産化」

 同社ではこれを契機に、今回展示されたシートポジションシミュレータ「SS01」を開発。

 千葉⼯業⼤学未来ロボット技術研究センター(fuRo)との共同開発によって⽣まれたシミュレータは、座った状態で座⾯に触れる⾝体形状の3Dデータやハンドリム(車輪を回す取っ手部分)の回転速度、回転トルク、重⼼移動など、様々なパーソナルデータを取得することが可能だ。

 そして、それらデータを基に、車いすに乗る人それぞれに最適な座⾯・背もたれ・ステップの位置、車輪のキャンバー⾓を精密に調整することができる。

 つまり、車いすを使う人それぞれの最適なシーティングポジション(座位姿勢)を導き出せるのだ。また、同社ではこのシミュレータは車いすレースだけでなく、様々な分野で応用が可能で、将来的にはモータースポーツやe-sports、 オフィスワーカーや⾼齢者など、⻑時間座ってスポーツや⽣活をする⼈向けに活⽤できるとみている。

 杉原氏は、これを「パーソナライズの量産化」と呼ぶ。車いすを使う人はもちろん、「座る」という行為を行う人全般について、それぞれの好みや体格などに合った「パーソナライズ」を行ない、それを量産化することが、同社が目指すビジネスモデルのひとつなのだ。

最終目標は普段使いの「車いす」革命

 今回のイベントでは、ほかに「WF01」も展示。これは、車いすの形状をしているが、「新しいカテゴリーのスーパーモビリティ」だという。

 普段は車いすを必要しない人でも移動を楽しめる、福祉機器を超えた乗り物として開発。強固で軽量なドライカーボン製メインフレームを採⽤し、バッテリーと車輪内蔵型の電動モーター(インホイールモーター)を装備している。

 軽い力で動かすことが可能で、まるでスポーツカーを普段の足にするような、「走る」「曲がる」「止まる」といった高い走行性能を持つという。また、ライトを装備するため夜間走行にも対応。日常の足から、軽量さを活かしてテニスやバスケットボールといったスポーツにも使うことができる。

 なお、このマシンはまだプロトタイプで、杉原氏によると、「2020年にはスタイルを含めて刷新した新型をお披露目したい」と話してくれた。

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