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ツインカム、直6、12気筒、ロータリーの素晴らしきエキゾーストノート!サウンドで振り返る日本のレース史

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了、遠藤樹弥

歴史を持つ美しき排気音に魅了される

 毎年、三重県・鈴鹿サーキットで行われるモータースポーツに関連したヒストリックカーのイベント「鈴鹿サウンド of エンジン」ですが、このイベント名称はまさに当を得て妙。モータースポーツ、とりわけレースの大きな魅力には、エンジンが奏でるサウンドがあります。エキゾーストノイズ(排気騒音)ではなく、エキゾーストノート(音楽のような排気音)と呼びたいエンジンサウンドを楽しむためにサーキット詣でを続けるファンも少なくありません。鈴鹿サウンド of エンジン2019(SSOE2019)に登場したマシンから、日本のレース史をサウンドで振り返ってみましょう。

スカイラインGTの6気筒サウンド

 国内モータースポーツの黎明期におけるベストなエンジンサウンドはプリンス・スカイラインGTとホンダS600/S800の2モデルではないでしょうか。

 60年代の日本グランプリで活躍した車両の多くについては、現役時代のエンジンサウンドを聞いたことはないのですが、60年代後半にローカルレースでスカイラインGTのサウンドを聞き、その甲高い音に痺れた記憶があります。

 64年の日本グランプリに登場したスカイラインGTは、ベースとなったスカイライン1500のノーズ(ホイールベース)を伸ばし、本来搭載されていた4気筒エンジンからグロリア用の6気筒エンジンにコンバートできるようにしたもの。基本的にはグロリアも同様なエンジンサウンドだったとも考えられます。が今回のSSOE2019では、グロリアの方はちょっと不調だったようで甲高いエキゾーストノートが…、とはいきませんでした。残念。

 

ツインカムサウンドの甲高い雄叫び

 甲高い音に痺れた、と言えば、やはりホンダの“S(エス)”です。

 エンジンは直4の600ccまたは800ccと小排気量ですが、その分、気持ちよく吹け上がっていました。何よりも国産初のツインカムユニットで高回転域が得意中の得意。2輪のワールドGP(ロードレース世界選手権)やF1GPで活躍したHondaのエンジンは、その精密なことと気持ちよいエンジンサウンドで話題になり、ホンダミュージックと呼ばれていました。S600やS800にもそのDNAが受け継がれていたのでしょう。国内ではツインカムサウンドと呼ばれ多くのファンを惹きつけていました。

 SSOE2019では、6気筒ツインカムと素晴らしいエンジンサウンドの“良いトコ取り”した日産スカイラインGT-R(通称ハコスカ・KPGC10)が最高のサウンドを響かせていました。

 自ら何台ものGT-Rを保有し、一部では究極のGT-Rオタクとも呼ばれている日産/ニスモの現役ワークスドライバー、松田次生選手がレース仕様のGT-Rをドライブするシーンもありました。コックピットから降りてきた次生選手は感動の面持ちで「素晴らしかったです…!」と絶句していました。

 

名機DFVをサウンドで一蹴した12気筒エンジン

 1966年にF1GPのエンジン規定が、それまでの1.5リッターから3リッターへと排気量が拡大されました。様々なエンジンが登場してきましたが、一部の例外を除いて、コスワースDFVへと収斂していきます。

 コスワースから、全てのDFVは平等なパフォーマンスを有している、とコメントが出されましたが車体とのトータル性能で優れていたロータスやティレルなどは、明らかに素晴らしいエンジンサウンドを奏でていました。

 ただし、それ以上に痺れるサウンドがありました。フェラーリのV12も素晴らしいサウンドを奏でていましたが、それ以上に痺れたのがBRM(ブリティッシュ・レーシング・モーターズ)のV12エンジンでした。

 フェラーリのV12が右の耳から左の耳へ突き抜けて行くのだとすれば、BRMのそれは頭のてっぺんを突き破って噴出する…、と言ったらイメージし易いでしょうか。ただし、サウンドの素晴らしさとパフォーマンスは、残念ながら比例しません。ロータスだけでなくマクラーレンやティレルなどのDFV勢にストレートでスパっと抜かれてましたから。

 今回のSSOE2019ではアルファ・ロメオのフラット12エンジンのサウンドを楽しみにしていましたが、当日はトラブルからかフルスロットルは叶わず、12気筒エンジンのサウンドは次回以降にお預けとなってしまいました。

全てを超越したREサウンド

 もうひとつ、サウンドに関して語らずにはいられないエンジンがあります。それはマツダが世界で唯一本格的に生産し、世界に広めていったロータリー・エンジン(RE)です。

 ロードカーのREは、とても静かなことがセールスポイントとなっていましたが、サーキットでは状況が一変します。まさにけたたましいレーシングサウンドでした。しかしそれはレース仕様のREが、信じられないほどの高回転で回り続け、やはりコンパクトな成りからは信じられないほどのパワーを絞り出していたからにほかなりません。

 そのREの究極のモデルが91年にル・マン24時間を制覇した787Bに搭載されていた4ローターのレーシングREであるR26Bユニット。今回のSSOE2019ではル・マン優勝車に代わって、国内で開催されていた全日本スポーツ-プロトタイプカー耐久選手権(JSPC)用に急遽製作された787Bの003号車が登場。

 速さでは、元F1ドライバー&ル・マン優勝者であるティエリー・ブーツェンさんがドライブするポルシェ962Cには及びませんでしたが、ル・マン・ウィナーと同じ、全てを超越した究極のロータリーサウンドを撒き散らしながら、鈴鹿サーキットを駆け抜けていました。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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