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60年以上前の初代クラウンを学生たちがレストア! 若者の自由な発想で蘇らせた感動秘話とは

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭

“整備士育成のために”生徒が奮起する

 1955年にデビューしたトヨタの初代クラウンを、クルマ業界の未来を担う学生たちが力を合わせてレストア。東京オートサロンで初披露され、若者ならではの斬新なアイディアと高いクオリティで注目を集めた。今回は、そんな1台に迫ってみたい。

 日本を代表する高級セダンとして知られるクラウン。歴史は長く、初代モデル「トヨペットクラウン」の登場は1955年と65年前に遡る。そんな旧車をレストアしたのは「TIST 筑波研究学園専門学校・自動車整備工学科」のメンバーたち。「学生たちの整備士育成のために役立ててほしい」と、故  西谷隆義 同校前理事長との縁があって寄贈されたクラウンを、東京オートサロンを目指し本格的に作業を進めることになった。レストアがスタートしたのは、約1年前のことだ。

 エンジンやミッションは「オリジナルを再現するだけがレストアじゃない」と、11代目クラウン・アスリート用に載せ替え。大胆なスワップは若者ならではの斬新な発想で、まずはボディと切り離されたシャーシにエンジンを搭載し、それからボディを被せて干渉する部分を加工したという。

 というのも初代クラウンに搭載された直4OHVに対して、換装したエンジンは大きな直6DOHC。エンジンルームのスペースが足りないのは明らかであり、エンジンルーム後方のバルクヘッド部分をカットすると同時にインナーフェンダーも大幅に加工するなど、苦労の甲斐あって載せ替えに成功した。カットされた部分の室内側には透明なパネルでカバー製作。直下に配置したトグルスイッチと11代目クラウンのエンブレムと合わせ、切り貼りしたバルクヘッド部分をスタイリッシュに見せている。

 そして、ネックとなったのが外装。年式が年式だけにサビどころか、腐食し欠けていた部分も多かった。そこでインターネットで初代クラウンの画像を検索し、欠損した部分の形状を見ながら違和感が出ないよう成型。特に苦労したのは曲線だけで構成されるヘッドライトまわりで、歪みがなく左右対象になるよう手作業でコツコツと作り込んだそうだ。

 もちろん純正パーツもほとんど入手不可能。そのため、ボンネット先端の”TOYOPET”エンブレム跡はパテ埋めし、フロントのウインカーはホンダ・シビック純正のサイドマーカーを流用。メーターについても11代目クラウン純正を使って、初代のフードを加工して装着するなど、アイディアを出しながら欠損した部分をうまくカバーした。

 このトヨペットクラウン再生プロジェクトの次なる課題は、足まわりとブレーキ。搭載された1JZ-FESエンジン(200ps)の性能に対して、タイヤを含めて初代クラウンの足回りでは明らかにキャパ不足であることは言うまでもない。とはいえ、タイヤ&ホイールを極端にサイズアップすれば、見た目のバランスが悪くなってしまう。古き良き初代クラウンの風合いはキープしつつ、いかに安全に走れるよう仕上げていくのか、今後も彼らの柔軟なアイディアと確かな技術が活かされることになる。

 いまは亡き前理事長と、寄贈した人の想いが詰まったトヨペットクラウン。整備士育成のためだけでなく、若者のクルマ離れや自動車整備士の人材不足といった問題の解消など、自動車業界への貢献に少しでも繋がれば……という思いも込められている。学生たちが蘇らせたクラウンが元気いっぱいに走る日まで、天国からあたたかく見守っていることだろう。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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