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今の福祉車両は「障がい者向け」だけではない! 「高齢者」目線がクルマを進化させる

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: トヨタ自動車、ダイハツ工業、Auto Messe Web編集部

福祉車両を「普通のクルマ化」する意味

 こうして、福祉車両の普及が進むと、次に課題となったのが、不要になった後の処分である。ことに高齢者向けに福祉車両を利用しよう考えた場合、数か月や数年で不要となる可能性も否定できない。それによる買い控えも生じやすい。そこで考えられたのが、福祉車両の「普通のクルマ化」だ。

 例えばミニバンで、3列目の座席を取り外して車いす用とした場合、従来はそれを元に戻すことが難しかった。しかし今日では、3列目を活かしながら車いすを載せられるようにしたり、あるいは3列目の座席を後から装備できたりするようにあらかじめシート取り付け用の構造を床に施しておくなど、普通の使い勝手を損なわない福祉車両が現れている。

 こうすることで、福祉車両として使われなくなった後もそのクルマが通常のミニバンとして利用し続けられることになる。そうなれば、福祉車両購入への躊躇が軽減される。

 そのほか、一見普通のクルマでありながら、高齢者が乗降しやすいようにした車両も開発されている。後付けで、ステップを装備できる軽自動車をダイハツは新型タントで実現した。また、乗り込んだ後の車内での移動を楽にする取っ手の後付け部品の商品化も行っている。

 これらは、単に社内で新車企画を行うだけでなく、現場・現物・現実の三現主義に基づき、高齢者や医療療法士、そして販売店などとの協力により、実際に高齢者の体験評価を聞きながら新車や用品の開発が行われた成果である。

 

すべての人に向けた新車開発を

 そうした近年の動向の先に見えてくるのは、標準車と福祉車両という区別のない、本当の意味でのバリアフリー、あるいはユニバーサルデザイン(年齢や障がいの有無、体格、性別、国籍などに関係なく、すべての人のためのデザイン)に基づいた新車開発だ。

 たとえば、トヨタ・センチュリーや、旧車となるかつてのスバル1000は、後席背もたれの位置が後輪のホイールハウスより前に設定されている。こうした後席の配置を行うことによって、乗降の際に体を起こさなくても、そのまま体を横へ移動すれば済む。

 些細なことではあるが、これが体への負担を軽減し、力の弱くなった高齢者や障がいを持つ人にとって乗降しやすいクルマとなっていたのである。少なくともセンチュリーは、そうした視点を意識して開発されていた。人を中心にスバル360の開発を行った当時の富士重工業(現SUBARU)は、前輪駆動を活かしたスバル1000において、後席の配置に際し万人にとって乗降しやすいことを考慮したのではないだろうか。

 今日、多くの新車が”人間中心”という言葉を使い開発を行っているとするが、実はメーカーにとって都合のいい面にだけ人間中心だと語り、運転姿勢や視界、あるいは乗降性や、走行中の快適性を含め、消費者優先の人間中心の開発をしているとは思えない節がある。

 これから自動運転の時代を迎えるにあたって、すべての人が同乗者の立場になるとき、バリアフリーの支点で考えたユニバーサルデザインが、乗降性に限らず乗車中の快適性を含め求められることになるだろう。

 障がいを持つ人の社会進出が望まれ、高齢化社会を世界に先駆けて迎える日本にとって、福祉車両のこれまでの進歩にとどまらず、本当の意味で「万人の為」という視点を入れたユニバーサルデザインが求められているのである。それを実行できれば、世界を牽引する次世代車の概念を構築することになる。

 

 

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