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高性能車に採用されているブレーキローターの「穴」や「溝」のメリットとは?

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 吉見幸夫、Auto Messe Web編集部

走りによって受ける大きな恩恵

 高性能スポーツカーや社外品で見かける、穴が開いていたり溝が切られている「ブレーキローター」。ディスクブレーキの場合、このブレーキローターをブレーキパッドで挟み込み、その摩擦によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで制動する。「穴」や「溝」は、メリットを生み出すための加工であることは想像できるけど、仕組みや加工の違いは何なんだろう。通常のローターと比べてデメリットはないのだろうか。

 最初に名称か説明しよう。ディスク表面に穴が開いているタイプは『ドリルドローター』で、溝が切られているタイプは『スリットローター』と呼ばれるのが一般的だ。ハイパワーのスポーツカーに採用されるブレンボ製ブレーキシステムや、スポーツ走行を想定した社外品のブレーキローターなど、クルマ好きであれば一度は見たことがあると思う。

ブレーキローターの表面積を増やし放熱性を向上

 最大の目的は、ブレーキの効き(制動力)を高めること。具体的に効果を説明すると、放熱性のアップが挙げられる。

 先述のとおりブレーキは、パッドとローターの摩擦抵抗によって制動力を発生させており、摩擦すればするほどブレーキの温度は上がり、最終的にはフェード現象(削れたパッドがガス化しローターとの間に膜を作って制動力が落ちる)や、ベーパーロック現象(熱がブレーキフルードに伝わって気泡が生じて制動力が落ちる)などを招いてしまう。

 それらを防ぐには適度にブレーキの熱を逃がさなければならず、通風性を高めて温度が上がりすぎないよう、穴や溝を設けることで表面積を増やすことができる。つまり空気がブレーキローターに触れる面積が増加することで、放熱性は高くなるわけだ。

 また、熱だけじゃなくフェード現象を引き起こす原因のガスを排出させる効果もあるので、ブレーキの負担が大きいハイパワー車や激しい走りをすることが多いスポーツカーには恩恵が高い。さらにローターとの密着性を高めて制動力をアップさせたり、パッド表面を削ることで熱などで炭化した摩擦材を排除(クリーニング)して摩擦力の低下を防ぐ効果もある。

ブレーキパッドの摩耗は早くなる

 とはいえ、ドリルドローターやスリットローターはメリットばかりではない。共通するのは、ブレーキパッドの減りが早いことだろう。上で説明したとおりパッドを削ることの代償として、安定した強い制動力を手に入れているので減りが早いのは必然。

 パッドが削れやすいということはブレーキダストの量も多く、通常のプレーンなローターよりもホイールやボディが汚れやすいのも悩みどころだ。最近はカーボンなどダストを落としやすいパッドが主流とはいえ、以前は摩擦係数の高さからメタル素材を多く含んだパッドが多く使われており、こびり付いたダストを取り除くのもひと苦労だった。

 また、スリットローターはあまり影響ないが、ドリルドは強度が低いという説もある。例えば、ハードな走行によって起こる”熱割れ”という症状だが、純正ベースの加工品は除いて大手メーカー品ならば素材にもこだわっているし、よほど負担が大きい使い方をしなければ心配はないはずだ。

 最後にドリルドローターやスリットローターをより効果的に使う方法。純正よりも放熱性が高いからといって過信せず、本格的なサーキット仕様ならブレーキに風を送るダクトを引いたり、適度にクーリングを挟みながら走ることが大切だ。もちろんコスト面や乗り方、ホイールの汚れといった面では、プレーンな純正品のほうが無難なケースもある。

 また、ローターも摩擦により少しずつ減っていくので、なるべくブレーキパッドと同じタイミングで交換するのが理想。その場合は費用もそれなりに高くなるので、じっくりとプロショップに相談してアドバイスを仰ぐようにしたい。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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