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「排ガス規制」をキッカケに大躍進! 世界に誇れるレーシングエンジンまでも生み出した日本の技術力

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TEXT: 大内明彦  PHOTO: ホンダ、日産、Auto Messe Web

ガソリンを確実に燃やす=排ガスのクリーン化

 1970年代、日本の自動車メーカーを技術面で悩ませたのが「排出ガス規制対策」の問題だった。排出ガスによる大気汚染が問題視されていたので、それまでのガソリンをたくさん送り込んでエンジンパワーを引き出すという高性能車作りの方法は禁じ手に。ところが、排ガス対策のために積み上げた燃焼解析技術は、後に名機と呼ばれるレーシングエンジンを誕生させる礎となったのも事実なのだ。

 総力を傾注して排出ガスのクリーン化に臨んだ日本の自動車メーカー。しかし、その過程は紆余曲折したものだった。排出ガスに含まれる有害物質は一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)で、供給したガソリンを完全燃焼すればこれらの排出量を抑えることができると理論では分かっていたが、シリンダー内での燃焼に関する蓄積資料がまったくなく(燃焼解析は行なっていなかった)、基本データの収集、検証から始めなければいけない状態だった。

 こうした状況下で燃焼に関してひとつの答えを出したのが「ホンダ」と「日産」である。そのエンジンこそ、ホンダの”CVCC”と日産の”NAPS-Z”であり、解析することで燃焼効率向上のノウハウを得ていたのだ。

 

パワーと燃費の向上につながる進化

「燃焼に関する基礎データ」と言い換えてもよいが、燃焼効率を引き上げることで未燃成分を抑え、排出ガスの浄化につなげる。この事を逆から見ると、1ccのガソリンから得るエネルギー量が大きくなることを意味し、排出ガスの浄化を図った燃焼の解析は、高出力化の技術と表裏一体の関係だったのである。

 もともと高主力エンジンの開発技術には長けていたホンダだが、排ガス対策期の燃焼に関する基礎研究によって高速燃焼の実状を把握。日本メーカーが排出ガス対策を終えたのは1979年と見てよいが、ホンダはこのタイミングでF2レースに復帰。V6エンジンを開発して臨んだが、その高出力性によってまたたく間にF2を席巻したのだ。

 さらにホンダはターボ時代のF1に参画するが、進んだ燃焼ノウハウによるパワーで他を圧倒。1987年にドライバー(ネルソン・ピケ)、コンストラクター(ウイリアムズ)の両タイトルを獲得し、さらにターボ最終年となった1988年にもドライバー(アイルトン・セナ)とコンストラクター(マクラーレン)の2冠に輝くなど、16戦15勝を挙げる圧倒的な強さをみせつけた。

 一方、日産は1980年代にターボエンジンによるグループCカーでル・マンを目指す。しかし、エンジン開発はうまくいかず、新規プロジェクトとして中央研究所内に専門部署を設定。社内でエンジン開発を行なう体制で、責任者として任命された「林 義正」である。じつは、1気筒当たり2プラグといった新技術を投入した「NAPS-Z」エンジンの開発により、日産の排出ガス対策を乗り切った超本人だった。

 林が設計したV8ターボ(VRH35型)は、NAPS-Zの開発で得た燃焼ノウハウを活用するエンジン。1990年のル・マンでコースレコードをマークした高出力性、そして燃費規制のあるグループCレースでの優れた燃費性能(ピット回数を軽減)は、まさに優れた燃焼効率を土台とするものだった。

 こうした省燃費性は、レース用エンジンながら希薄燃焼によって得られたもの。あまりに強すぎ、F1とグループCのターボ規定を廃止する一因となったホンダと日産だったが、その基本となる高い燃焼効率確立の原点が、排出ガス規制時の燃焼解析作業にあったというのは興味深い出来事である。

 

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