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「カリコボーズのホイホイ便」ってなんだ? 過疎化に負けじとアイディアで勝負するユニークな取り組み

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TEXT: 石田 徹  PHOTO: 石田徹

民話の里の村営バスに3社の”荷物混載”を開始

 宮崎県の西部にある西米良村(にしめらそん)は、人口およそ1000人という県内でもっとも少ない人が暮らす自治体。豊かな自然と民話にも由来する「カリコボーズの里」として知られており、村内の一之瀬川にかかるカリコボーズ大橋は日本最大級の木造車道橋だ。宮崎県産スギ材の需要拡大などを目的として2003年に完成し、橋の長さ140mは日本一。最大支間長の48.2mは世界一のスケールを誇っている。

 さて、そんな西米良村で3月23日から開始されたのが、村営バスによる「カリコボーズのホイホイ便」。これは村の中心部である村所地区から小川地区までの約21kmの区間で運営されている村営コミュニティバスに、佐川急便/日本郵便/ヤマト運輸の3社の荷物も一緒に載せるシステムのこと。具体的には小川地区で村の委託配達員がバスから宅配荷物を受け取って、各戸へ配達するとのこと。 この小川地区は現在55世帯で人口が87人、高齢化率が約58%という過疎化に直面している。自家用有償旅客運送によるコミュニティバス(白ナンバーのワンボックスカー)が平日は1日に3往復(土日祝は1往復)しているが、このままでは運営が厳しいことは容易に想像がつく。同時に宅配事業者にとっても集配効率の低下で、近い将来にはサービスの提供が懸念される状況だった。

 そういう状況の中、ホイホイ便の果たす役割は以下の通り。まずは人口減少および高齢化が進展する地域での効率的な配達モデルの確立や村営バスの維持、村内の物流サービスの円滑化に直結することが期待される。さらにCO2排出量の抑制による環境負荷の低減、委託配達員による高齢者の見守りなど、総合的な住民サービスの展開・向上への可能性を感じさせるものとなっている。

 じつはこのホイホイ便の前提として、最寄りの宮崎県西都市と西米良村の村所地区の間には、宮崎交通の路線バスに日本郵便とヤマト運輸の荷物を混載させる事業がスタートしていた経緯がある。これにより西米良村は国内ではおそらく初めての、複数の貨客混載を運行する地域となった。またホイホイ便は3社の宅配荷物だけに限らず、地区の住民や事業者が村内で荷物をやり取りする場合にも使えるとのことだ。

 貨客混載の取り組みはすでに全国各地で実施されているが、佐川急便/日本郵便/ヤマト運輸という大手3社が共同で実施する取り組みは全国初。また村営のコミュニティバス(白ナンバー)で実施することも画期的だ。ちなみに、このホイホイ便実施に至るまでは長い年月を要している。最初に検討されたのは2010年で、日本都市計画学会九州支部に設置された研究分科会からだという。

 その後の調査検討やコーディネートに関しては建設や地域開発などの総合コンサルタント大手の日本工営福岡支店が技術支援を担当。2017年9月の制度改正で貨物輸送と旅客輸送の兼用が可能になり、かつ積載可能な貨物量の上限(350kg)が緩和されるなど、貨客混載事業に関する規制が緩和されたことも追い風となった。そして2018年度に国土交通省九州運輸局宮崎運輸支局が村営バスによる少量貨物有償運送の許可を与えたことで、2019年の3月に実証運行も実施されている。

 最後にもう少しだけネーミングの由来を紐解くと「カリコボーズ」は昔から伝承されている山の神、村の精霊であると同時に、西米良村のキャラクターでもある。そのカリコボーズが鳥獣狩りをする際に鳴く声が「ホイホイ」と聞こえるため、村民たちは「ホイホイくん」と名付けて呼んでいる。

 日本最大の古墳群のある西都市とともに、立派な日帰り温泉施設もある西米良村にぜひ一度、皆さんも足を運んでいただければ幸いだ。

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