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「ウインチ」に「カンガルーバー」! かつての4WD車の王道装備が消えた理由とは

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: 三菱自動車、日産自動車、トヨタ自動車、メルセデス・ベンツ

かつてはクロカン四駆の人気装備だったが…

 第二次四駆ブームと言われる現在、国内外を問わず各自動車メーカーから次々とSUV(スポーツユーティリティヴィークル)車種が発売されている。現在が第二次と呼ばれるようにかつても四駆ブームがあった訳で、それが1980年代後半から1990年代前半のこと。

 当時の本格四輪駆動車を象徴する装備が「カンガルーバー」や「ウインチ」だが、現代のクルマではすっかり見かけなくなり、コアな四駆ファンのなかには少々物足りなさを感じている人もいるだろう。ではなぜ、これらの装備をメーカーが採用しなくなったのか時代背景とともに見ていきたい。

現在のSUVブーム以前にはRVブームがあった

 冒頭でも述べたように現在の自動車市場はSUVの人気が続いている。国内でSUVの人気に火が付いたのは、トヨタ・ハリアーが1997年に発売されてからとなる。しかしその前に、前兆ともいえるRV人気があった。RVとは「レクリエイショナル・ヴィークル」のことで、クロカン四駆などともいわれる車種だ。

 かつて4輪駆動車といえば米国のジープや英国のランドローバー、あるいはドイツのゲレンデヴァーゲン(現在のメルセデス・ベンツGクラス)のように軍用を下地としながら悪路走破性を活かし、郊外の道なき場所をクルマで移動するのを目的としていた。その未舗装路走行の技術を活かしながら、より乗用車としての快適性を加味したのがRVだ。クロカン四駆とも呼ばれる理由は、クロスカントリー(山野を駆ける)に適した4輪駆動車ということで、その言葉を縮めた呼び名である。

 1980年代の米国でジープ・チェロキー2代目が爆発的人気を呼び、1983年から2001年まで根強く販売された。国内では、1981年にいすゞからビッグホーンが生まれ、翌82年に三菱パジェロが現れ、輸入車として日本へも導入されたチェロキーとも相乗効果となって一気にRVブームとなった。

 RVが当時の人々をどれほど魅了したかは、たとえばパジェロに加え、軽自動車のパジェロミニが1994年に誕生し、翌95年には5ナンバーの小型車扱いとなるパジェロ・ジュニア(のちのパジェロ・イオ)が登場したことからも想像できるのではないか。そしてRVを販売車種に持たなかったホンダが94年にミニバンのオデッセイを発売するまで、「ホンダは倒産するかもしれない」との話が持ち上がったほど、RV一辺倒の時代があった。

「カンガルーバー」は荒野、「ウインチは」険しい悪路用

 もともと4輪駆動車として存在したトヨタ・ランドクルーザーやランドクルーザープラド、あるいは日産サファリなども人気を高め、そうしたRVに乗る人はひとつの象徴として「カンガルーバー」や「ウィンチ」を装備することも流行った。

 カンガルーバーとは、まさしく文字どおり荒野を走行中に現れたカンガルーと衝突した際に、車体への損傷を抑えるためラジエターグリルの前にパイプで作った保護用品である。動物と衝突して車体が凹むだけならまだしも、ラジエターを損傷したらオーバーヒートを起こして走れなくなる。その擁護が目的だ。

 もとはカンガルーの多いオーストラリアで必要に迫られ用いられたが、ほかに「グリルガード」とか「アニマルガード」などと呼ばれることもあり、野生動物が生息する土地でクルマを走らせる際の保護として用いられた。

 ウィンチは、荒れた路面の急斜面や大きな凹凸などによってタイヤが滑り、前進できなくなった場合に、周囲の岩や樹木にウィンチのワイヤーを掛け、引っ張ることで脱出するために使う。ウィンチの駆動はエンジン回転を利用するものと、電動で行なうものがあった。

 RV人気の時代、実際にはそれら装備を必要としない所有者たちも、カンガルーバーやウィンチを装備することで見かけ上の雰囲気をより高めたいとの希望もあっただろう。実際カンガルーバーを必要とする荒野や、ウィンチで牽引しなければ脱出できないような場所を走るには、日常的な運転の技量以上に、かなりの専門的な知識やコツを要する。それでもことに国内においては、1980年代から90年にかけてはバブル経済期でもあったことから、気持ちを浮き立たせる演出に対する欲求は高かったといえるだろう。

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