「給電から始まる新たなライフスタイル」　出光興産とデルタ電子が実証実験を開始した複合型EVサービス「Park ＆ Charge」とは

投稿日：2020.08.16

TEXT: 青山義明（AOYAMA Yoshiaki） PHOTO: デルタ電子、青山義明

EVの充電待ち時間を有効活用できる！

　2020年8月8日（土）、神奈川県横浜市のガソリンスタンドの跡地を利用した実証実験がスタートした。それが「EV Charging Station（神奈川県横浜市中区山下町193-1）」だ。

　これは、出光昭和シェルとデルタ電子がEVの新たなビジネスモデルとして考案した、複合型EV充電サービスモデルである「Park ＆ Charge」を検証するための実証店舗。もともと昭和シェルブランドのガソリンスタンドだった場所を利用してできた駐車場プラスαという使い方の実証を行うもの。駐車エリアには6台分の駐車スロットがあるがそのうち4台分には充電器が備わる。

　また、カフェスペースを併設するほか、ショールームとして使える部屋を用意するなど単なる模様替えにとどまらない。

　急速充電器を備えた駐車スロットは3台分が用意され、急速充電器は25kWタイプで使用料金は30分700円となる。デルタ電子は50kWタイプの急速充電器はもちろん、100kWタイプもラインナップに加えたところだが、今回は壁掛けタイプの25kWモデルをあえて設置している。その理由は、実証実験のテーマでもある「Park ＆Charge」にある。充電待ちの時間を楽しむ、ということなのだろう。

　EVへの充電は、個人情報や車両番号等の事前の会員登録が不要なデルタのEV充電課金＆クーポンアプリ「EZQC」を利用する。充電を利用すると、駐車場利用の最初の30分が無料になり、敷地内の「Innergie CAFE（イナジーカフェ）」でのクーポンも発行される仕組みとなっている。待ち時間をそのままカフェで過ごすことも可能。さらにそもそもは駐車場なので、充電終了後もそのまま駐車場として利用もできるのがポイント。

　またもう一つの充電駐車スロットは、EVに搭載されたバッテリーからビル等の施設への給電を可能にする双方向EV充放電器「V2B充電システム」を搭載した6kWの充電器が備えられている（こちらで充電する場合は60分300円の利用料金となる）。

　このスロットは、EVへの充電だけではなく、EVからの給電も可能になるシステムとなっており、災害などの停電の際にEVから施設への給電（放電）をしてもらうということも想定。その場合、店舗で使用できるクーポンを発行するとしている。

　ステーション内にある「イナジーカフェ」は、スペシャルティコーヒーやスイーツ類を提供するだけでなく、デルタ電子が一般向けに販売展開している超小型USB-C電源アダプター「Innergie」が飲食スペースに配置されている。これを利用して携帯電話やPCなどを充電することが可能。

　このステーションは出光側が施設と駐車機器等を受け持つが、ステーション内のLED照明や、プロジェクター、監視カメラなどデルタ電子が提供。また他にも次世代型ホームマネジメント「CONSCIOUS」を設置し、ステーション全体の消費電力量やバッテリー残量、蓄電池情報、EV充電器消費電力量、電気料金等のエネルギー消費量といった全体のエネルギー消費量の可視化・制御を実現している。

　また、災害や非常時の災害拠点としての活用も視野に入れ、ステーションには49.7kWhのリチウムイオンバッテリーを備え、停電発生時にでもコンセントや照明・エアコンの稼働ができ、スマホへの充電や寒さや暑さをしのぐ避難場所としても活用できるとしている。ちなみにステーションに掲げられる看板も出光のロゴマークは入らず、すべてDELTAで統一されている。