福祉車両を買うよりずっと身近なプライスが魅力的
日本が抱える社会問題に高齢化がある。同時に都市への人口集中と地方の過疎化があり、それによって公共交通機関の格差が生じ、過疎地の高齢者の移動の足の確保が課題となっている。もちろん、都市部にあっても、元気な高齢者が移動する際に、クルマへの乗り降りや、車内での体の保持などに苦労する機会も生じる。
かといって、福祉車両を買うほどではないという状況に対し、標準の乗用車に後付けして乗降や車内での体の保持を助けるメーカー純正部品などが出回りだした。
なかでも、そうした装置や機能を豊富に揃えるのが、ダイハツやトヨタだ。
標準車を購入したあとでも取り付けることができる
ダイハツは、昨年モデルチェンジをして4代目となったスーパーハイトワゴンのタントを開発する際に、『地域密着プロジェクト』を通じ、産官学連携によるモノづくりにコトづくりをあわせた、軽介護を支援する商品開発を目指した。そして地方自治体と理学療法士、地域の販売店が互いに協力し、開発中の車両や後付けできる補助装置や器具などを、高齢の消費者と共に実証しながら開発する取り組みを進めたのであった。
その成果は乗り込む際に支えとなるグリップ、車内へ足を踏み入れる助けとなるステップ、車内で体を支えるグリップ、また座席で体を支えるランバーサポートやサイドサポート、車内で体の向きを変える助けとなる回転クッション、シートベルトを楽に装着できるようにするパッドなどの純正部品の実現につながった。これらは、標準車を購入したあとでも、必要に応じて取り付けることができる。
とくに足元のステップは、後付けできるよう左側(歩道側)の床構造をあらかじめ強化し、装着作業を容易に行えるよう、車体開発の段階で考慮がなされた。タント特有のミラクルオープンドアという、前後ドア間の車体に支柱がない構造も、大きくドアを開けられることにより、体の曲がりにくくなった高齢者の乗降を助けることにも役立っている。
タントは、子育て家族を応援するクルマとして初代が2003年に誕生し、2代目以降にミラクルオープンドアが採用された。それが、結果的に高齢者の移動を支援するクルマとしての価値にもつながった。
これら装置や器具の効果は、理学療法士などによって、実際に高齢者に使ってもらうことで、乗降時の姿勢の変化などから数値的にも確認されている。