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安全追求はメーカーの使命のハズ! 高齢者の「踏み間違い事故」も減らせる「ハンドル調整機能」を軽視するワケ

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: Auto Messe web編集部

「万が一」の適切な操作に必要なのは正しい「運転姿勢」

 安全運転の基本は、正しい運転姿勢にある。普段であれば、多少運転姿勢が正しくなくてもクルマを走らせることはできてしまうだろう。しかし安全の確保は日常ではなく、非日常的な万一の突発時に適切に操作できるかが、事故になってしまうか事故を回避できるかの分かれ目となる。なので、正しい運転姿勢が普段から重要なのだ。正しい運転姿勢に導くためのホンダ・N-WGNの提案

 正しい運転姿勢を改めてやってみると、普段と違って違和感を覚える人もあるだろう。しかし、その姿勢が違和感のない日常となることが、どのような場面でも適切な運転操作ができる基本なのだ。ステアリングと腕の正しい距離感のイメージ

 正しい運転姿勢をするには、まずブレーキペダルを床一杯まで右足で踏み込み、その状態で運転席の前後位置を調節する。次にハンドルの頂点を両手で握り、肘にゆとりが残る位置に背もたれの角度を調節する。以上だ。アクセルやブレーキと足の正しいバランスのイメージ

 ところがこの手順で運転席を合わせても、かえって体が窮屈に思えたり、手足が自由に動かせなかったりするクルマが、軽自動車やコンパクトカーに多い。理由はそれらの車種が小柄な体格の人に合わせて設計されていることに加え、ハンドル位置の調節に「テレスコピック」といって前後位置を調整する機能が省かれているからだ。

軽自動車・コンパクトカーに「テレスコピック機構」が搭載されにくい理由

 ハンドルには、チルトといって上下位置を調節する機構と、テレスコピックといって前後位置を調節する機構の2種類がある。軽自動車やコンパクトカーはチルト機構は備えても、テレスコピック機構は備えないのがほとんどだ。(2020年9月)現在、軽自動車でテレスコピックを装備するのは、ホンダのN-WGN(エヌ・ワゴン)のみである。

 より大柄な上級車種では装備されるのに、なぜ軽自動車やコンパクトカーにテレスコピックが装備されないかというと、原価が掛かり販売価格に影響するからだ。自動車メーカーは、クルマの大小で人の命の尊さを選別していることになる。

 一方、高齢者によるペダル踏み間違い事故が注目を集めると、万一の事態に備え自動ブレーキが作動する装置を追加したり、後付けしたりできるように自動車メーカーは手を打ち、行政もそれを支援している。もちろん、そうした機能があればより安全で、安心に寄与する。サポカーのロゴマーク

 だが、そもそも安全の基本である正しい運転姿勢を体格の違う人でもとれるようにすることが最初であるべきで、追加料金が取れ、いかにも安全に貢献しているように見える新装備にお金をかける姿勢には、大きな疑問がある。

 それは、マッチ・ポンプといわれる偽善行為ともいえる。マッチ・ポンプとは、自ら火をつけておいて、ポンプで消火する意味で、作為的な自作自演の行為を指す。要は、テレスコピックを装備しても宣伝効果は少なく、利益も上がらない。一方、電子制御を駆使した新装備を取り付ければ宣伝文句に使え、収益も得られ、行政は補助金を出す。そういうことだ。経済産業省による「サポカー補助金」制度の啓蒙ポスター

 後付けの自動ブレーキ装置の提供は、従来テレスコピックを装備しなかった反省と対策のようにも思えるが、それならば、無料で装備できるようにすべきだろう。正しい運転姿勢の取れないクルマであるにもかかわらず、ここでも金をとって安全が向上するような善意を演出しているのである。

 自動ブレーキなどの安全装備が取り付けられたクルマを選ぶだけでなく、販売店で正しい運転姿勢をとれるクルマであるかどうかを確認することも、自らの身を守り、また交通事故被害者を無くすことにつながる、運転者の善意といえる。

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