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「どうせGRの独占でしょ」…と思ったらそうじゃなかった! スープラ・GT-R・NSXによる大混戦になったワケ【SUPER GT2020】

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田了,GTアソシエーション

スケジュールとレース展開ともに濃密なシーズンに

 新型コロナウィルスの感染拡大によって、開幕が大幅に遅れた今シーズンのモータースポーツ。国内最高峰カテゴリーであるSUPER GTも、その例外ではなく、当初の予定から3か月半も遅れて7月下旬に開幕。コロナのさらなる感染拡大を防ぐために制限を強化しつつ無観客で、約2か月(8週間)の短期間のうちに、シーズン前半の4大会を実施してきた。2020スーパーGT選手権は「もてぎ」で前半4戦終了

 無観客開催も初めてなら、7月の開幕戦も、真夏の鈴鹿で300kmのレースも史上初。まるで初物尽くしの前半戦だったが、Honda NSXが2勝、Toyota GR SupraとNissan GT-Rが1勝ずつと3メーカーが星を分け合う接戦、いや混戦ぶりだ。新規投入された新型車両など注目ポイントは盛り沢山で、まさにスケジュールだけでなく内容的にも濃密なシーズンとなっている。そんなSUPER GTに注目してみよう。

世界的に注目が高まっているクラス1

 SUPER GTはGT500とGT300、2つのクラスが混走するセミ耐久レースだ。つまりドライバー交代はあるが、レース距離は300㎞が基本で、GT500はトヨタ、日産、ホンダという我が国を代表する自動車メーカーがワークス参戦して鎬を削っている。ホンダ、日産、トヨタの接戦となっている

 GT300は世界的にも大きなブームを巻き起こしているFIA-GT3とJAF-GT規定の車両が対決する図式で、両クラスともに激しいバトルが人気を呼んでいる。GT300クラスでは世界のメーカー車種のバトルが賑やか

 そんなSUPER GTだが今年、GT500クラスは3メーカーがそろって新型車両を投入してきた。トヨタは、久々に復活を果たしたスポーツカーのGRスープラをベースとした車両でデビューシーズンにぜひともタイトルを、と意気揚がるところ。トヨタ GR スープラ

 これに対して日産とホンダは、これまで通りGT-RとNSXがベースの新型車両を用意してきた。ただし「……をベースとした」と言うのが曲者で、市販のロードゴーイングモデルとは全くの別モノ。シルエットこそ似せているものの、カウルを剥がせばカーボンコンポジットで成形した共通モノコックに、NRE(ニッポン・レース・エンジン)と呼ばれる2L直4直噴ターボを3社それぞれで開発して搭載した純レーシングカーなのだ。2020シーズンからフロントエンジンとなったGT500のNSX

 実は昨年までも同様な競技車両でレースが行われてきたのだが、今年は「クラス1」と呼ばれる新たな規定に準拠した車両が出揃ってのシーズンインとなったのだ。「クラス1」と言うのはSUPER GTを運営するGTアソシエイション(GTA)が、ドイツを主な舞台に転戦を続けてきたDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)とのコラボレーションで誕生させた車輌規定で、シャシー(モノコック+サスペンション)を共通部品で製作し、2L直4の直噴ターボエンジンを搭載するというもの。GT500クラスではGT-Rのエンジンも2ℓ直4の直噴ターボエンジン

 厳密に言うなら今シーズンのGT500は「クラス1」プラスα、と言うことになるが、乱暴に言うならカウルを取り換えればGRスープラがGT-RにもNSXにも生まれ変われるというレース車輌なのだ。

3社それぞれの事情と思惑が混戦を生んだ!?

 トヨタが、新たにベース車両に選んだのはGRスープラ。トップの肝いりで復活を果たしたスポーツカーだけに、ベースとは別モノであろうが、その名を語る競技車両がライバルに後れを取ることがあってはならない。

 そんな陣営の熱い気持ちを受け、デビュー戦となる7月の開幕戦・富士では見事なポールtoウィン。トップチームの一つ、TOM’Sが1-2フィニッシュを決めるとともに、ブリヂストン(BS)を装着した5台のGRスープラが上位5位までを独占するという、これ以上はないデビューシーンを飾っている。GRスープラ勢はブリヂストンタイヤ

 さらに、その3週間後に同じく富士で行われた第2戦ではTOM’Sの36号車(au)が、前戦の成績上位車に車重増などが科せられる競技規則で30kgのウェイトハンディがあったが、これを跳ね返して2位に入賞。30kgのウェイトハンディを跳ね返して2位に入賞。続く鈴鹿では60kgのウェイトハンディ(実際には43kgのウェイトと燃料リストリクターを1段絞る)をものともせず3位入賞を果たしており、ポイントランキングでもライバルを大きくリード。これで今シーズンはTOM’S/GRスープラのワンサイドゲームになってしまう……。多くはそう思ったかもしれないが、状況が一変する。ウェイトを考えればGRスープラの速さはそのままだったが、ライバルが反撃の狼煙を挙げたのだ。

第2戦の富士で反撃に転じたNSX

 まず第2戦の富士ではNSXが牙を剝いた。今シーズンのNSXは、これまでのGT500車両とは一転し、エンジンをフロントに移動させ、ライバルと同じFRレイアウトにコンバートされている。つまりこれまでのようにミッドシップのアドバンテージを活かすわけにはいかなくなったのだが、反対にミッドシップを理由にハンディを課せられることもない。ライバルと同じ土俵に立ち、ガチな勝負を挑むことになったのだ。第2戦で勝利したケイヒンNSX

 それが理由なのかはともかく、これまで苦手とされていた富士でフロントローを独占。決勝ではARTAがアクシデントに泣いたもののセカンドポジションからトップを快走したKEIHINがそのまま独走でトップチェッカー。GRスープラにとってホームコースである富士スピードウェイで一矢報いることになったのだ。

 NSXはこれまで、富士で何度もポールを奪い、何度も勝っているが、予選の速さをそのまま決勝でも再現し、地力で勝ったのは記憶にも珍しい。強くなった証拠にKEIHINは、46kgのウェイトを載せられた第4戦のもてぎでも、比較的ウェイトの軽いZENTを相手に力勝負でこれを下している。ダンロップ(DL)を履いたModuloやヨコハマ(YH)を履いたMUGENも侮れない速さを見せたレースがあり、これもNSXが強くなった証拠と言うことができるだろう。

第3戦の鈴鹿では強いGT-Rが復活

 そのDLを履いたModuloがポールを奪った第3戦の鈴鹿では、GT-Rも復活の狼煙を挙げている。第3戦の鈴鹿では、ニスモGT-Rが優勝

 毎シーズンのように勝ち星を挙げ、チャンピオン争いを繰り広げてきたGT-Rだが、昨年はエースとも言うべきNISMOが未勝利で陣営としてもCRAFTSPORTSが1勝を挙げただけ、と不調に喘いでいた。

 これはメーカーサイドから公式にコメントされているのではないが、現在、GT500ではエンジン技術として副燃焼室(プレチャンバー)がトレンドとなっていて、トヨタとホンダで採用している(らしい)のだが、日産はこの採用で後れを取っていた(らしい)。そして今シーズン用には、これを採用したのだが開発テストの段階でトラブルがあり、信頼性を確保するためにチューニングが控えめになった(らしい)のだ。

 実際に開幕からの2戦では、明らかにストレートスピードが遅く、下位に低迷する結果となってしまった。ところが、第3戦の鈴鹿から、今期2基目のエンジンを搭載したNISMOが、全盛期を彷彿とさせる圧倒的な強さで今季初優勝。予選でもフロントロー2番手を奪っており、速くて強いGT-Rが戻ってきた、との声が聞かれた。

序盤をリードしたTOM’Sに加えZENTの復調もGRスープラに追い風か

 このようにライバル陣営が反撃に転じたというものの、現状ではGRスープラの強さには一目置かれるところがあるのも事実だ。もてぎではTOM’Sの2台が接触してポジションを下げてしまうという一幕があり、その要因の一つに燃料補給の際のミスも伝えられているが、それでもランクトップに躍り出たKEIHIN NSXに僅差の2~3位につけており、RAYBRIG NSXを挟んでWAKO’SとZENTが続いてランキングのトップ6のうち4台を占めている。GRスープラ勢も6台が混戦となっている

 開幕の富士2連戦を不調なまま終えたZENTが第4戦のもてぎではポールを奪い決勝でも2位でゴール、と復調してきたのはチームはもちろんだが6台のGRスープラを擁してタイトル獲得が絶対条件とされている陣営にとっても朗報だったに違いない。GRスープラが再びライバルを圧倒できるか、にも注目が集まっている。

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