苦労はあれどやっぱり「低い」のがカッコいい
愛車をドレスアップする手段のひとつとして、純正よりも車高を下げる「ローダウン」がある。最近ではSUVや4WD系モデルの車高を上げる「アゲ系」なるカスタムも流行してはいるが、まだまだドレスアップスタイルの主流はローダウンであり、そこにはそれなりの理由が存在する。
それが「クルマは低い方がカッコいい」理論。速さを求めるレーシングカーはすべてが低重心で設計されていることはもちろん、自動車メーカーのCMでは少し車高を下げた状態で撮影していたりと、その理論自体にはそれなりの信憑性もある。
けれどもそれを極めるとなると……そう、日常生活にさまざまな支障を来たしてしまうのだ。ノーマル状態よりも不便で乗り心地も悪くなったりするけど、それでも「カッコ良さ」にこだわるのが、コアな“車高短(シャコタン)”車両のユーザーたち。オシャレのためにガマンを重ねる彼らの“苦労あるある”を紹介しよう。
1)通れない道や入れない店は多々あり
普段使いできる範囲でのローダウン量に留めているユーザーがほとんどだが、なかには限界ギリギリまでの低さに挑戦するツワモノも。その場合に最大の難関となるのが、コンビニやスーパーなどの駐車場出入口に存在する段差やスロープだ。
車体と路面とのクリアランスに対して無理に入れば前後バンパーや車体の底やを擦ってしまうし、段差が大きければ最悪の場合、車体の腹下が路面に引っかかり“カメになって”動けなくなることも…。
それを避けるために入れる店、通れる道を日常から探しながら移動するのが車高短乗りの習性で、結果、行ける店が限られてくるから、デートのときなどにはヒンシュクを買う。このようなことから、特に知らない土地では駐車場ひとつを探すのも大仕事になるため、行動範囲が極端に限られるようになってしまう…。
2)キャンバー効かせ過ぎでタイヤ寿命“ゼロ”
カスタム度合いがハードなローダウン車両で定番なのが、キャンバーを効かせる、いわゆるタイヤを“ハの字”にするカスタム。理由はより太いホイールを履けたり、後から見たときにクルマ全体が台形に見えてカッコイイから。ただしそのキャンバーも、角度によっては大変なことになる。
そもそもタイヤは路面と面で接しているものだが、角度が付けば付くほど、その面が点へと変化する。つまりその点に負担が一極集中することになり、タイヤの減りが驚くほどに早くなるのだ。接地面がその極わずかな部分に集中すれば当然、路面との摩擦熱もその一点に集まるようになり、その場合はさらに摩耗する速度が速くなり、場合によってはトレッド面が剥離したりバーストする危険性も出てくる。
なので長距離を走ってのイベント参戦などとなると、ちょっと走っては休んで、とタイヤを冷ましながらの旅路に。それでも新品から1500〜3000㎞も走れば要交換で、スペアタイヤの常時車載は必須。極端な引っ張りタイヤは通常の車両に比べてタイヤ脱落の危険性が高くなるし、そもそもタイヤとフェンダーとのクリアランスがギリギリだったりするから、ノーマル車両であればなんともないような道路上のギャップだって、車高短のクルマには命取りになることもある。
段差があれば徐行や蛇行して避けたり、場合によっては道を引き返したりと、一般ユーザーでは考えられないほど、路面状況に気を配って走らせているのだ。