意外に多いジウジアーロが手がけた日本車
数多くの名デザインを世に送り出してきた天才デザイナー、ジョルジョット・ジウジアーロ氏。アルファロメオ・ジュリアスプリントGT、マセラティ・ギブリ、同メラク、デ・トマソ・マングスタ、BMW・M1などの流麗なクーペ/スポーツカーだけでなく、VW・ゴルフ、アウディ80、ランチア・テーマなどの実用的なサルーンまで手がける、そのマルチな才能には驚かされることばかりだ。
日本車にも、ジウジアーロがデザインに関わったクルマが数多くある。トヨタ・アリスト、日産・マーチ、スバル・アルシオーネSVX、いすゞ117クーペ、スズキ・フロンテクーペなどはよく知られているだろう。しかし「えっ、これもそうなの?」という意外な車種がジウジアーロ作の日本車にはある。今回はそれを5台選んでみることにした。
どちらが前? なデザインのスズキ・キャリイ(4代目)
ジウジアーロは、名門カロッツェリア「ベルトーネ」でキャリアをスタート。1960年のことだった。ベルトーネに5年間在籍したのち、カロッツェリア・ギアに移籍。この時代に、かのいすゞ117クーペをデザインしている。そして1968年、独立して「イタルデザイン」を設立した。
リアゲートの傾斜が強く、どちらが前かわからないようなユニークなフォルムで1969年に登場したスズキ・キャリイ(4代目・L40系)は、フロンテクーペとともに、イタルデザイン時代のジウジアーロが手がけている。4代目キャリイは、実際にはキャブしか持たないトラックが先行して発売された。荷室容積を犠牲にしてまで得た斬新なフォルムだけでなく、当時では珍しい角形ヘッドライトを採用していることにも注目したい。
クリーンなスタイルが美しいマツダ・ルーチェ(初代)
1960年代に入りキャロルで軽自動車に、ファミリアで小型乗用車クラスに進出したマツダが、さらに大きな1500ccクラスに乗り込むため、1966年に発売したルーチェ。1991年にセンティア/アンフィニMS-9にそのポジションを譲るまで、5世代にわたってマツダの旗艦を務め続けた。
なお初代ルーチェは、発売前の1963年の東京モーターショーに、丸っこいデザインの試作車が参考展示されている。発売モデルでは写真のようなシャープな造形に一変していたが、どちらもベルトーネ時代のジウジアーロが手がけていた。細くて華奢なピラーが、美しさをさらに高めている。写真は、1967年に追加されたスポーティ版の「SS」。エンジンは、ツインキャブ化でノーマル比+8psの68psまで高められていた。