クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • CAR
  • 高齢者の「踏み間違い」事故の抑制にも効果があるのにナゼ? ハンドルのテレスコピック不採用車がいまだ多いワケ
CAR
share:

高齢者の「踏み間違い」事故の抑制にも効果があるのにナゼ? ハンドルのテレスコピック不採用車がいまだ多いワケ

投稿日:

TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

より求められる「安全」に対する社会貢献の意識

 疲れにくいクルマの運転には「正しい姿勢」が密接に関係し、それは最近問題になっている「ペダルの踏み間違い」軽減にもつながる。そこでキーとなるのが「テレスコピック機構」というステアリング調整機能。にも関わらず、軽自動車やコンパクトカーへの装着率は低い。その理由とは何か。内情に詳しい評論家に解説して貰った。

【改めて確認】正しい「運転姿勢」の作り方

 安全運転の第一歩は、正しい運転姿勢にある。これは教習所でも最初に教わることだろう。運転に限らず芸術でも運動でも、また仕事においても基本が肝心だ。そのうえで、「技」が加わることで上達していく。

 正しい運転姿勢に不可欠なのが座席位置の調整と、ハンドル位置の調整機能だ。ペダルは配置を動かせないので、座席とハンドルで運転者各人の体格に合わせていく。

 まず、ブレーキペダルを左足でしっかり奥まで踏み込み、ペダルがそれ以上奥へ動かなくなったところで、座席の前後位置を合わせる。このとき、腰をしっかり背もたれに押し付けて座っていることが肝心だ。

 次にハンドルの一番上を両手で握り、肘にゆとりがある位置まで座席の背もたれの角度を調節する。このとき、背もたれには適度な角度が保たれることが大切だ。起き過ぎていると、背中を背もたれに預けることができず、体が左右へ動きやすい。それでは運転中に姿勢が崩れてしまうので、ある程度背もたれに体を預けることが大切だ。

 ところが、ハンドル位置が遠いと背もたれを起こさざるをえない。ここで、ハンドルの前後位置調整用のテレスコピック機構が役立つ。ハンドルの奥にレバーや電動のスイッチがあり、これを利用してハンドル位置の固定を外し、座席の背もたれが丁度よい位置にあり、かつ、手がハンドルに届く位置へ前後位置を調節する。

 ハンドルには高さを調整するチルト機構も備わり、ハンドル位置を上下に動かしながら、メーターを確認できるように合わせていく。

「姿勢作り」のキモ「テレスコピック機構」 大衆車ほど普及率が少ない「悲しい理由」

 これら一連の運転姿勢の調節機能のうち、軽自動車や登録車のコンパクトカーを中心に装備が省かれているのが、テレスコピック機構だ。各自動車メーカーに取材をするうち、その理由が原価低減にあることがわかってきた。

 しかし、テレスコピック機構がなければ、ハンドルに手が届きにくくなる人が出て、ハンドル操作を十分にできなくなる懸念が生じる。それは安全性を損なうだけでなく、ハンドルを回すたびに上体を背もたれから起こさなければならなくなるので、疲れを促す。

 またハンドルをしっかり持ちにくかったり、遠くて回しにくかったりすると不安でもあるので、座席を丁度よい位置より前へ寄せてハンドルを握れるようにすると、ペダルが近くなりすぎ、踏み間違いや踏み損ないを誘発しかねない。社会問題化している高齢者のペダル踏み間違い事故も、テレスコピック機構を持たないことにより、関節の動きが制約されるようになった高齢者にはペダルを踏みにくくなり、事故につながっていることも考えられる。

 そのような状況がありながら、自動車メーカーは原価低減のためないがしろにしているのである。私は6~7年前から事あるごとに開発関係者や役員などへ訴えているが、黙殺されたままだ。

 一方で、政府が補助金を支給するサポカー(安全運転サポート車)の装備は採り入れている。つまりは安全も銭勘定というわけだ。人の命を、金儲けで計算しているのだ。それを改めようともしない。唯一、ホンダN‐ONEはテレスコピックを装備している。だが、次に販売されたN-ONEには装備されていない。自動車メーカーの姿勢ではなく、車種開発担当一個人の良識にまかせたまま、企業としては知らぬ顔なのだ。

 それが、日本の自動車メーカーの一面でもある。自ら考え、自ら調べ、そして選ぶ姿勢を持つことが、自らの命を守ることにつながると思う。

すべて表示

 

 

 

 

 

 

ranking

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

 

 

 

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

ranking

AMW SPECIAL CONTENTS