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「くうねるあそぶ」の名コピーも誕生! スポーツセダン「初代セフィーロ」が傑作だった理由とは

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 日産自動車

華麗な4ドアとして誕生したセフィーロとは?

 1988年にデビューした初代セフィーロ。セダンでありながらクーペのように流麗なスタイル。そして後輪駆動のレイアウトで大ヒットしたモデルだ。開発コンセプトやスペック、そいてコンセプトからはかけ離れたドリフト界での人気などを振り返ってみたい。

糸井重里や井上陽水も巻き込んだ独特の存在

 2003年に3代目となるA33型を最後に歴史に終止符を打ったセフィーロ。その初代であるA31型はバブル経済の真っ最中、1988年9月1日に発売がスタートした。糸井重里が考案した「くうねるあそぶ」のキャッチコピーや、井上陽水が自ら作った曲とともに出演したCMは、今も記憶しているクルマ好きが多いに違いない。初期のターゲットは20代の後半や30代の男性で、同クラスで猛威を奮っていたのはトヨタのマークII三兄弟、マークⅡ/クレスタ/チェイサーだった。

 日産も巨大なマーケットを無為に眺めているワケにはいかず、似たコンセプトの兄弟車を計画したのは必然といえるだろう。その長兄がA31型セフィーロであったのだ。共通の基本コンポーネンツを使ったR32型スカイライン、さらにC33型ローレルが1989年に登場し三兄弟が成立。スポーツのスカイラインにラグジュアリーなローレル、そしてスタイリッシュなセフィーロと、それぞれキャラクターの違いも明確になっており、カッコいい大人に憧れる若者たちのハートをガッチリと掴む。

個性を求める若者層の心をつかむ装備

 彼らがセフィーロに惹かれたのはコンセプトだけじゃない。スカイラインの4ドアよりスポーティにも感じるスタイリング。特にヘッドライトは当時としては珍しいプロジェクターを採用。残念ながら最初のマイナーチェンジで廃止されてしまったものの、エンジン/ミッション/サスペンション/内装/外装色などを、自分で組み合わせる『セフィーロ・コーディネーション』も、人とは違った個性を求める若者たちにピッタリのシステムだった。エンジンはRB20系でシングルカムとツインカムのNA、さらに205psを発揮するツインカムターボもあり、後期型では排気量が2500ccのNAも追加されている。

ツインカムターボ+5速MTでドリフト界でも活躍

 エンジンや駆動系はR32スカイラインと共通のFR、それが後にドリフト界で一大旋風を巻き起こす要因となったのだ。ツインカムターボ(RE20DET)と5速MTの組み合わせは絶対数こそ少なかったが、チューニングや走らせ方はスカイラインと同じだし、4ドアのドリフト車両はかなりレアな存在といえた。大会では他と同じ走りであっても審査員の目を引きやすいうえ、積み込めるタイヤの本数が多いといった4ドアならではのメリットも。

 時代が進むとR33スカイラインに搭載されたRB25DETや、純正で280psを誇るGT-RのRB26DETTをスワップする猛者も増え、マークII三兄弟と並び4ドアにおけるドリフト仕様の定番となった。人気が高まると元から希少だったMT車はアッという間に買い尽くされ、激しい走りとは無縁で程度のいいボディのAT車を安く仕入れ、R32スカイラインなどのMTに載せ替える手法も多く用いられた。

4ドアのFRセダンとして存在感を放ち14万台を販売

 このようにメーカー本来の意図ではなかったかもしれないが、セフィーロはFRの駆動方式と豊富なチューニングパーツにより、ドリフトのベース車として多くの走り屋に認知されていく。しかし新車の販売はライバルのマークⅡ三兄弟に押され、決して好調とはいえない状況が続いていた。マイナーチェンジで落ち着いた印象の角形ヘッドライトを追加したり、BNR32のアテーサE-TSを採用した4WDモデルを投入するなど、数々のテコ入れを行なったがマークⅡ三兄弟の牙城を崩すには至らず。1994年8月に2代目のA32型へバトンタッチ。新車登録台数は14万オーバーという数字だった。

世代交代後は旋風を巻き起こせず終焉

 2代目はFF化され外観もA31ほどのインパクトがなく、スポーツセダンとしての印象は払拭されてしまう。V6エンジンの高級感あるフィールや広い室内は好評な反面、セフィーロらしい革新性やスタイリッシュさがスポイル。1998年から販売されたA33型も同様で、新車登録台数はA32とA33を足しても初代に遠く及ばない。ちなみにセフィーロとはスペイン語で『そよ風』を意味する。

 スカイラインGT-Rを筆頭に魅力的なモデルが数多く揃っていた、バブル期の後半における日産を代表するクルマのひとつといえるだろう。現時点での中古車は決して多くないうえ、価格もATで100万円~が相場。MTでチューニングしてある車両は200万円オーバーも多く、今後はさらに入手が難しくなっていくと思われる。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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