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現代自動車、日本再上陸! 成功の鍵は「日本人ならではの志向」をどう攻略するかにある

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TEXT: 大内明彦  PHOTO: Hyundai Motor America/PSA

世界5番目の自動車メーカー 韓国の“現代自動車”が日本市場に再参入

 2020年11月、韓国の現代自動車が日本市場に再参入するというニュースが報じられた。日本での販売実績がほとんどないメーカーであるため、再参入と言われてもピンとこない方も多いと思うが、最初の日本市場参入は2001年だった。参入車種は、ヒュンダイ・ソナタ(EFソナタ)、ヒュンダイXG(韓国名グレンジャーXG)などで、ちょうど韓流ブームが立ち上がりの兆しを見せ、2002年サッカー日韓ワールドカップの開催を控え、韓国に対する関心が高まりつつある時期だった。日本市場に参入してきた2000年代初頭のソナタ こうした世の中の流れもあり、日本市場参入を意図した現代自動車には、それなりの目算もあったようだが、結果として販売実績は惨敗。2010年には完全撤退を強いられる状況に追い込まれていた。

 しかし、日本市場では大苦戦した現代自動車だが、中国市場、インド市場を重視する戦略で規模を拡大、ヨーロッパ、アメリカ市場でも一定の評価を得ることに成功した。最近の販売動向に目を向けると、傘下に収めた「起亜」と合わせ、年間販売台数700万台後半を記録する世界5番手のメーカーに成長。コロナ禍の影響でここ2年は販売台数を落とし、昨2020年は現代が約374万台、起亜が約260万台でグループ合計は約635万台と報告されている。

日本市場撤退から10年余の海外戦略の実績

 軍事政権の時代から、内需が見込めず海外市場に活路を求める経済政策を採ってきた韓国は、政府が後ろ盾となって工業界の発展を支える歴史があった。また、ほかの国とは異なり、財閥を中心とする独自の経済構造が築かれ、自動車産業もこうした環境で成長を遂げる足取りを見せていた。世界水準で言えば、いわゆる後発組にあたり、経営面は政府支援、立ち遅れていた技術面は海外メーカーとの技術提携で企業力の底上げ、拡充を図る体制で規模を広げていく。現代自動車の場合で言えば、初期はフォード、そして最終的には三菱自動車が技術面での支えとなっていた。ヒュンダイのコンパクトSUVコナ

 こうした状況で、海外進出を図る現代自動車の採った戦略がロープライス性だった。かつて日本車が北米市場で成功する足掛かりとなった高コストパフォーマンス性と同路線である。だが、ハードウェア面で先発メーカーをしのぐまでにはいたらず、逆に、実用に耐える必要十分な性能を有しながら低い価格設定なら市場に食い込める、と読んだ結果の進出戦略だった。そして商品力は、成功モデルをいち早く模倣して追従する「ファストフォロワー」戦略で大きく強化。実際、実用の道具として必要十分な性能を有していれば価格は低い方が好都合、という合理思考が浸透した地域では一定数のユーザー獲得に成功する。しかし、日本市場は不発に終わっていた。なぜか?

特殊な日本市場「ブランド志向」はどうなるのか

 日本市場が特殊だったからである。歴史的に「舶来」という言葉があることからも推察できるよう、もともと日本には、海外の一流ブランドに対する強い憧れがあった。自動車も例外ではなく、上級志向、高級志向が追い風となっていたバブル経済期に、日本市場への本格参入を図った海外メーカーのいくつかは「歴史と伝統に支えられた〜」「クラフトマンシップが培った〜」といった形容語句とともに紹介され、一躍ブランドが確立される動きを見せていた。もちろん、こうしたメーカーの多くは「ブランド視」されるだけの内容や実績を持ち、それを根拠として市場に訴求する戦略を取った。いわゆる日本人が持つ「舶来崇拝志向」をうまく攻略する形となり、市場の一角を形成することに成功していた。2005年撤退前に投入してきたヒュンダイ・ソナタ

 こうした特徴を持つ日本市場に参入した現代自動車が成功する確率は低かった。残念ながら現代自動車の名前では、ブランドとして認知されることがなかったわけである。もっとも、「ブランド志向」は商品の本質を見極めず、ブランド名で商品選択を行うというマイナス面も生み出していた。自分で商品の本質を確かめず、ブランド品だから購入するという商品選択の価値基準だが、ユーザーから商品の判定力を奪うことになっていたことも見逃してはいけないだろう。

 ブランド志向に関する一例だが、かつていすゞ自動車がオペルの販売権を得た際、同社の販売担当重役にインタビューする機会に恵まれたことがあった。オペルの社名が一般には浸透していなかった当時の状況を踏まえ、日本ではどういった販売戦略を採るのか、と尋ねたところ「乗れば優れたクルマであることがおわかりいただける」という回答をいただいた。まず、ブランドの訴求が大切だと日本市場の特殊性を説明したのだが、乗ればよいクルマとわかるから、という主張を曲げることはなかった。われわれの商品は優れているから、1度でも乗ってもらえばそのよさが理解できる、という直球勝負だったのである。オペルは日本市場に生き残れず撤退

 いすゞ自動車も、新たな乗用車市場の開拓ができるとあって、オペル車の販売には重きを置いていたが、結果は想定外の不発。結局、いすゞはオペルを手放すことになり、ヤナセが後を引き継いだ。だが、あれほど輸入車の販売に長けていたヤナセを以てしても、オペルに関しては完全に失速。日本市場でオペルの名前が知られず、ブランド力の不足が敗因となっていた。

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