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バブルの徒花「マツダ5チャンネル」戦略! ユーノスの隠れた名車「500」「800」が今見ても「意欲作」と断言できるワケ

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

贅を尽くしたスペシャルティモデルを販売していた

 コスモ、ロードスター、プレッソ、800、500、300、100、それからカーゴ。車名をこう並べて「ああ、ユーノス。懐かしいなぁ」と思う人も多いことだろう。今からもう32年も前のこと。当時5チャネル構想を打ち出したマツダが、そのひとつとして“欧州車テイストのモデルを揃えたブティックのような販売チャネル”として設定したのが、ほかでもない「ユーノス」だった。

 ちなみに欧州車風どころか、実際に当時のシトロエン各車(BX、AX、MX、ZX、エグザンティア)も扱い車種に取り揃え、マツダの販売チャネルのなかでも、くだけて言うととびきりシャレオツ(お洒落)なディーラーでもあった。

 もちろん、初代NA型ユーノス・ロードスターがイメージリーダーだったのは言わずもがな。筆者も当時、ロードスターには飛びついたクチで、チャネル発足直後ということもあり実際にお世話になっていたのは既存のマツダオート○○だった。だが、新規にユーノス店としてショールームが丸ごと立ち上げられた拠点なら、今の輸入車ディーラーのような楚々(そそ)としたムードが味わえたはずだ。ユーノス・ロードスター

 余談だが、筆者が初代ユーノス・ロードスターの購入に踏み切ったのは発表後、半年ほど経ったころ。だが実車の人気の高さはすさまじく、いよいよ契約の段になり、店長が手元の書類を示しながら「えー、諸費用の総額がこちらで、値引き額は今回は0円ということで」と説明した瞬間、気持ちが上擦っていた筆者は「はい!」と屈託なく相づちを打っていたことを思い出す。

ユーノス専売車だった500と800

 そんなユーノスに投入されたモデルでは、マツダの他チャネルで展開されるクルマのバッジ違いで用意されたモデルもあった。100(ファミリア・アスティナ)、300(ペルソナ)、プレッソ(オートザムAZ-3)、カーゴ(ボンゴ)などがそう。いずれも内・外観デザインの小変更、エンジン違い、専用ボディ色の設定などでユーノス・ユニークに仕立てられていた。ユーノス300

 一方でユーノス・オリジナルモデルではロードスターや、ユーノスのフラッグシップとして設定された、3ローター・ロータリーエンジン搭載の4代目コスモがあった。ロードスターが、もはやなくてはならない日本車へと育ったのはご存知のとおりだが、一方でコスモも、今では考えられないような贅を尽くしたスペシャルティなパーソナルクーペとして忘れられない。ユーノス・コスモ

 そして、忘れられないといえば、ユーノス専売車として登場した2台のセダン、500と800だった。とりわけ500(1992年)は、当時の5チャネル化で各チャネルごとに設定された専用モデルがことごとく3ナンバーサイズの全幅だったのに対しこの500だけは5ナンバーサイズの全幅を堅持。その上で上級車にいささかもヒケをとらない、優雅で均整のとれたプロポーションで人目を惹いた。ユーノス500

 当初設定されたボディ色はメイプルレッドMc.、コーラルシルバーMc.、ブレイブブルーMc.、パーリーホワイトII Mc.の4色で、いずれも粒子の細かなマイカを使用した。塗装も高鮮映鋼板の上にカチオン電着塗装/カラー中塗り/上塗り/硬化クリア塗装を施し、遠赤外線を用いた独自の回転焼き付け技術で仕上げた高機能ハイレフコートで、耐久性と美しさを実現したものを採用。日本車離れした凛としたスタイルを引き立てていた。ユーノス500

 また搭載エンジンに2Lと1.8LのV6が選ばれたのも、走りの質感にこだわり、コンパクトな高級車を標榜してのことだった。サスペンションはコンベンショナルな4輪ストラットを基本とし、一部のグレードには前後にストラットタワーバーを装着していた。「クセドス6」名義で欧州市場にも展開されたが、日本市場では1992年〜1996年のわずか4年の販売だったことが何とも惜しいクルマだった。ユーノス500のエンジン

世界初だった自動車用ミラーサイクルエンジンを投入した800

 もう1台、ユーノス専売のセダンとして1993年に登場したのが800。“十年基準”をキーワードに、息の長い本質的なクルマの価値を造りこむこと(当時のカタログより抜粋)に注力して仕上げられた点が特徴だった。ユーノス800

 メカニズム面でも意欲的で、世界初だった自動車用ミラーサイクルエンジンの投入はその代表。簡単に言うと、これは吸気バルブを遅く閉じることで低圧縮比と高膨張比の状態を作り出し、ノッキングを起こさずに効率的な燃焼エネルギーを得る理屈の4サイクルエンジン。このために低回転でも吸気圧が高められ、高圧まで効率を保つリショルムコンプレッサーを採用していた。この技術のおかげで、800に搭載された2.3LのV6エンジンは、220ps(ネット)/30.0kg−mと、当時の3Lトップクラスのパフォーマンスをモノにしていたのだった。ユーノス800

 スタイリングは先行していた500のイメージを拡大したような上品さだった。さらにこの800はユーノスチャネルの廃止後も、ミレーニアと車名と変え、フェイスリフトを受けるなどして2003年まで生産された。その後、マツダの上級セダンは現在のマツダ6が受け継ぐことになったのはご承知のとおりだ。

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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