初代フェアレディZの最上級モデルだった
今年のオートサロンで東京国際カスタムカーコンテスト2022のグランプリを受賞したのは、日産自動車の「フェアレディZカスタマイズ・プロト」だった。このクルマは新型フェアレディZをベースに、“フェアレディZ 432(S30)を現代に蘇らせる”というコンセプトで作られたモデルだ。
展示された「フェアレディZカスタマイズ・プロト」は、オートサロンの会場でも大反響で“幅広い年齢層のクルマ好きに大きなインパクトを与えた”というのが、グランプリ受賞の理由とされている。モチーフとなったZ432は、1969年のデビューだった。現在、50歳の人でもまだ生まれていない時期なので、リアルにZ432を知っている人の方が少ないはずだ。
とはいえ、アラフィフのクルマ好きでも、「Z432(R)は、サーキット狼で『シュトコー戦闘隊・神風』の魅死魔国友が乗っていたクルマ」というイメージしかないかもしれない。しかし、このZ432はある意味、ハコスカGT-Rよりすごくて貴重といえるクルマだったのだ。
Z432はハコスカGT-Rの心臓と同じエンジンを搭載
そもそも初代フェアレディZ=S30は、国産車で唯一の本格的なスポーツカーとして登場し、セダンベースのスカイラインとは毛色が違う。スカイライン最強説は、プリンス時代のスカイラインGTがポルシェ・904カレラと激闘を演じ、その後継車のハコスカが本格レーシングカーR380の高性能ツインカムエンジンGR8型のデチューン版、S20エンジンを搭載しツーリングカーレースで活躍したからだ。Z432はそのハコスカGT-Rの心臓と同じ、S20エンジンが与えられた、フェアレディZの最上級モデルだった。
フェアレディZは1969年の発売当時、国内では「Z」「Z-L」「Z432」の3グレードが用意されていたが、「Z432」以外は、シングルカムの2リッター直6+SUツインキャブレターのL20型エンジンを搭載。L20の最高出力が130psだったのに対し、DOHCのS20は160psの大パワーを誇った。
当時の速いクルマとは、最高速が速いクルマでもあったのだが、Z432は同じS20を積むハコスカGT-Rよりも、10km/h速い210km/hをマークしていた。これはボディの空力性能の違いが大きい。後年、平成元年に登場したスカイラインR32GT-RとフェアレディZ(Z32)も同じような構図で、同じ280psのエンジンでも、最高速はZ32がR32よりも20km/hほど速かった。同じS30Zでも、L20エンジンのZは185km/h、ZL(5速MT)は195km/hだったので、Z432の速さは突出している。
また直線番長というわけではなく、ハコスカGT-R(PGC10)よりも車重が80kgも軽く、最小回転半径も50cm小さく、コーナリング性能も高かった。実際、1970年に富士で行なわれたレース・ド・ニッポン6時間レースでは、日産ワークスの北野・長谷見組のZ432が、同じ日産ワークスのハコスカGT-Rに勝って優勝している。