フロアからシート座面の高さが重要
だが、実際に高齢者の身になって、そうしたスライドドア車に乗り降りしてみると、スライドドアや低いワンステップフロアだけが乗り降りのしやすのポイントになるわけではないことに気づく。実際、筆者の高齢の母親が以前に言っていたのは、乗り込んでからの座りやすさ、立ち上がりやすさもまた、高齢者にとって欠かせない要素ということだった。
どういうことか。簡単に言えば、後席の位置である。フロアに対して座面が高めであるほうが、乗り込んだときの腰の移動量が少なくて済み、座りやすい。また、降車する際に、シートから立ち上がる場面でも、シート座面がフロアに対して高めであるほうが、立ち上がりやすい……ということだ。
例えば、健常者でもローソファに座り、ローソファから立ち上がるのは、けっこう大変だ。逆に、ダイニングの椅子のように、フロアに対して座面が高い位置にあれば、座りやすくて立ち上がりやすい。それと同じ理屈である。フロアからシート座面までの高さを専門用語でヒール段差と呼ぶのだが、その高さはミニバン、プチバンでもまちまち。ざっくり言えば、そのヒール段差が340mm以上あれば、比較的座りやすく、立ち上がりやすいシートということになる。
代表的なミニバン、プチバンの2列目席(後席)ヒール段差は、ノア&ヴォクシーが370mmとかなり優秀。新型ステップワゴン340mm、ソリオ355mmもかなりいい。スーパーハイト系軽自動車ではルークスが380mmとかなり高く、タント360mm、N−BOX 355mm、スペーシア360mm(ワゴンRスマイル350mm)となり、どれも合格と言っていいだろう。
スライドドア部分のステップ地上高、ヒール段差の高さなどから総合的に判断すれば、Mクラスボックス型ミニバンでは新型ノア&ヴォクシー(ユニバーサルステップのOP含む)、プチバンではソリオ、スーパーハイト系軽自動車ではルークスが、足腰が弱った高齢者を乗降させるのにお薦めの、ユニバーサルデザインを持つ高齢者フレンドリーカーということになるはずだ。