極上の乗り心地と快適性、操安性を実現したシステム
ハイドロニューマチック・サスペンションとは、スプリングとダンパーの代わりに高圧窒素ガスと鉱物性オイル(後年は化学合成オイルを採用)が用いられた自動車用サスペンション機構のこと。窒素ガスとオイルが「スフェア」と呼ばれる球体の中に入っている。簡単に説明すると、球体の上半分に封入された窒素ガスがスプリングの役割を果たし、ゴムの膜で仕切られたもう半分を行き来するオイルの量、流速、圧力にダンパーとしての機能をもたせている。
1955年に発表されたシトロエンDSが根幹を成すシステムとして採用したことで、シトロエン独自の機構として有名となった。DSではハイドロニューマチック・システムの油圧動力を、サスペンション、パワーステアリング、ブレーキブースター、クラッチ動作を自動化したセミオートマチックトランスミッションの制御にも利用し、乗り心地、快適性、操縦安定性を高水準なものとしていた。

電子制御を組み込み「ハイドラクティブ」として進化
自動クラッチとギヤセレクター以外の機構は、SM(1970年登場)、CX(1974年登場)、BX(1982年登場)にも採用されたが、BXからパワーステアリングが普通の油圧式となった。さらに、XM(1989年登場)では従来のハイドロニューマチック・サスペンションに替わり、前後の各中央に1スフェアを追加し、電子制御を組み込んだ「ハイドラクティブ・サスペンション」が新たに採用された。
ハイドラクティブ・サスペンションのセンサーは、ハンドルの切れ角および回転速度、アクセルの開度および開閉速度、ブレーキ圧、車速、車体の揺れなどを感知し、その情報をもとにコンピューターがオイルバルブを開閉して制御。エグザンティア(1993年登場)は、このハイドラクティブ・サスペンションを進化させた「ハイドラクティブII」を導入した。
