快適性と上質感にこだわったクルマだった
ライフステージの“ステージ”と“Advance”の“A”を掛 け合わせて生まれた車名のステージア。このクルマはデビュー当時 、栃木にある日産のテストコースで行われたGOLD CARトップの取材に立ち合っているが、イメージカラーだったエ メラルドグリーンパール(M)♯DS0が表紙の色にも使われてい たカタログを開くと、まったく新しいLクラスのステーションワゴ ン専用モデルとして登場したステージアの、 静かだが熱い思いが今でも伝わってくる。
とにかくハイクラスで上質なステーションワゴンを目指して開発さ れたのが、初代ステージアの大きな狙いだった。当時の取材メモを 見返すと、開発主管だった宮内照雄さんが「ボルボの実用性、 アウディA6アバントのハイセンスさ、S 124 メルセデス・ベンツEクラスワゴンの造りのよさ、BMW5シリー ズツーリングの走りを意識した」と取材時にお答えいただいている。
時はステーションワゴン・ブームの真っ只中。確か、 すでにセドリック/グロリアのワゴンは役割を終え、 アベニールサリュー、ウイングロードといった日産車のワゴンが揃 うなかで、Lクラスのスカイライン・ ワゴンに代わるモデルの必要性があり、そこで誕生したのがこの初 代ステージアだった。
ちなみに当時の取材メモをもう少し読み返すと、リヤゲート側から レバー操作で後席がパタンと倒せること、後席は25度のトルソア ングルを中心に13度から37度まで計8ノッチで角度調節が効き、 快適な乗車姿勢が得られること、それと(自分でもよくもまあそん なところまで目をやったものだと思うが)センターコンソールのフ タのヒンジが金属製であることなど、快適性、 上質感にこだわったクルマであることを筆者自身、取材を通して確 認している。
DAYZ仕様のコ ンプリートモデルもあった
走りについては当初から2.5Lターボ(RB25DET型=23 5ps/28.0kgm)をフラッグシップに据え、これにシンク ロモード付きアテーサE-TS(4WD)を組み合わせたRS FOURを設定。カタログ写真を載せているが、特別塗装色のラ イトニングイエロー#EV1が鮮烈な印象だった、DAYZ仕様のコ ンプリートモデルも用意されていた。 なおイエローの高性能ワゴンとして、1995年にボルボから特別 限定車の850T−5Rエステートが登場しており、色味は違った もののイメージがオーバーラップした。
ステージアではサスペンションにもこだわりをみせ、4WDモデル では4輪マルチリンク式を採用。RS FOUR Vにはフロントストラットタワーバーが標準で装着されていた。メ カニズム面ではほかに、デュアルエアバッグの標準装備化、前後に クラッシャブルゾーンを設け乗員を守る設計のゾーンボディコンセ プトなどもポイントだった。
全長4800mm、全幅1755mm、全高1490mmまたは1 495mm、ホイールベース2720mmというサイズにより、実 車はゆったりとした居住スペースと、当時のボルボなど輸入ライバ ル車にも勝るラゲッジスペースを確保していた。 装備でひとつユニークだったのが“収納式2ウェイマット” と呼ばれるマットで、ラゲッジスペースに敷いておけば汚れ物の積 載が構わずでき、裏返してリヤバンパー側に引き出して使えば、こ こに腰かけてスキー場で靴を履き替えるときにウェアなどを汚さな いというアイデア装備だった。
ただし(カタログ写真でお分かりい ただけるかどうか)、裏返して外から見える状態の面が割と大胆な “馬蹄形柄”で、無難なチェック柄などでもいいのでは? と思った筆者は、どこかの記事で“トランクスの柄のような” と書いた。するとその記事を目にした宮内主管から「パンツの柄っ て書いたでしょ!」とやんわりとした反応(クレーム?) があったというのは、今は懐かしいここだけの話だ。そういう話も 含めて(?)、ステーションワゴンがブームで、今よりも人の気持 ちが豊かだったような気がする時代のクルマだ。