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なぜ「リトラクタブルライト」でトガッていたスーパーカーは消滅した?「ウェッジシェイプ」な懐かしい名車を紹介

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TEXT: 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)  PHOTO: 高桑秀典/STELLANTIS/Lotus Cars/本田技研工業/Auto Messe Web編集部

マセラティ・カムシン

 マニアックなところでは、ギブリの後継モデルとして1973年にデビューしたマセラティ・カムシンもベルトーネ在籍時代のガンディーニがエクステリアデザインを担当した。ギブリ同様、カムシンもフロントエンジン仕様の豪華なGTカーで、当時関係が深かったシトロエンの影響を強く受けており、パワーステアリング、リトラクタブルヘッドライト、ブレーキ、クラッチなどがシトロエンによる高圧の油圧システムだった。

ロータス・エスプリ

 ガンディーニの作品ばかりを紹介してしまったが、ガンディーニの前任としてベルトーネのチーフスタイリストを務めていたジョルジェット・ジウジアーロの作品も忘れてはならない。彼が描いたウェッジシェイプもたくさんあるが、やはり、ロータス・エスプリが一番分かりやすい代表作であろう。

 エスプリは、ロータス・ヨーロッパの後継車として1975年10月のパリ・サロンでデビュー。スチール製バックボーンフレームにFRPボディを載せるという基本構造をヨーロッパから継承し、エクステリアデザインをジウジアーロが率いるイタルデザインが担当した。直線基調のウェッジシェイプは、1972年にイタルデザインが発表したコンセプトモデルがベースとなっている。

デ・トマソ・グアラ

 ベルトーネと同じようにイタルデザインも有能なデザイナーを輩出したが、1980~1987年までイタルデザインに在籍していたカルロ・ガイノがウェッジシェイプのデ・トマソ・グアラを描いている。グアラはパンテーラの後継モデルで、1993年にクーペ、その翌年にバルケッタ仕様とスパイダー仕様が発表された。

 当初BMW製のV8エンジンを積んでいたが、1998年からパンテーラと同じようにフォード製V8(こちらはスーパーチャージャー付き)を積むようになった。最高速度は260km/h以上を誇っていた。

童夢-零

 最後にウェッジシェイプを採用した国産車を紹介しよう。まずは、童夢-零だ。スーパーカーブームが下火になりつつあった1978年に、レーシングカーコンストラクターとして名を馳せた童夢が世に送り出した和製スーパーカーで、ガルウイングタイプのドアを採用。全高はカウンタックLP400よりも90mmほど低かった。

 日本国内での型式認定取得を前提に法規に合わせて製作したが、許可を受けるどころか申請さえも受け付けてもらえず、実車の販売は見送られた。しかし、プラモデルやミニカーなどが順次リリースされたこともあり、その人気がヒートアップし、現在もスーパーカーブームを代表する1台としてクルマ好きの記憶に残っている。

ホンダNSX(初代)

 和製スーパーカーといえば、ホンダNSXも有名だ。量産車として世界初となるオールアルミ製モノコックボディを採用した本格的ミッドシップスポーツカーとして1990年に発売。ホンダがF1グランプリをはじめとするモータースポーツフィールドで培った技術が余すところなく投入されていた。

 排気量のアップ、6速MTの採用、空力性能の向上、タイヤサイズの変更など、つねに運動性能を向上させつつ、オープントップモデルのNSXタイプTや、運動性能をより際立たせたピュアスポーツモデルのNSXタイプRを設定するなど、時代の要求に合わせて進化。本格的スポーツカーとしていち早く排出ガスのクリーン化に対応するなど、運動性能と両立させた高い環境性能も実現している。その結果、先達であるフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェにも多大なる影響を与えた。

スバル・アルシオーネ

 スバル・アルシオーネは、上記で紹介したスーパーカーの仲間ではないが、見事なウェッジシェイプを採用していたので本稿のアンカーを飾ってもらうことにしよう。

 スバルがリトラクタブル・ヘッドライトを採用した唯一のモデルであるアルシオーネは、1985年にリリースされた2ドアクーペだ。カタログに「エアクラフトテクノロジーの血統」というキャッチコピーや「Cd値=0.29」という空気抵抗係数が躍っていたことからも分かるように、ウェッジシェイプであることをセールスポイントにした意欲作だった。

 残念ながら肝心のウェッジシェイプが受け入れられず、発売当初から深刻な売上不振に陥り、1991年にジウジアーロがデザインした後継モデルのアルシオーネSVXへとバトンタッチしてしまったが、徹底的に空力性能にこだわったアルシオーネの功績は、素直にたたえるべきものだといえるだろう。

* * *

 クルマが高性能化し、ユーザーからスピード感あふれるデザインが求められたことで一時は興隆したウェッジシェイプ・デザインだが、次第に衝突安全性などでフロントノーズを薄くするのが難しくなり、リトラクタブル・ヘッドライトとともにウェッジシェイプも廃れていった。

 さらに、ここ最近はSDGsが喫緊の課題となっており、クルマでパワーとスピードを追い求める状況ではないため、自動車メーカーがウェッジシェイプで訴求するのは一段と難しくなっている。とはいえ、EVにおいても「電費」の観点からは空力性能も重要な要素のひとつ。スバルあたりがEV版「ニューアルシオーネ」でウェッジシェイプを復活させてくれたら面白いと思うのだった。

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  • 本業はフリーランスのライター兼エディター。1998年に買ったアルファ ロメオGT1600ジュニア(通称:水色号)を現在も愛用しており、すでに総走行距離が30万8000kmオーバーとなっている(2022年4月中旬現在)。クラシックカーラリーに水色号で参戦取材することがライフワーク(?)となっており、群馬をホームタウンとして開催されている「スプレンドーレ」では、柴犬を“ワン・コドライバー”、秋田犬を総監督として挑んでいる。全国各地に水色号でお邪魔しているので、これからも走行距離が順調に伸びる予定。
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