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富士スピードウェイで大型トラック「クオン」を全開試乗!

国産トラック初のディスクブレーキを採用
すぐにリミッターが作動するパフォーマンス

13年ぶりにフルモデルチェンジした「UDトラックス」の大型トラック『クオン』。その試乗会が何とF1が開催されたことがある国際格式のサーキット「富士スピードウェイ(静岡県)」で開催された。

富士スピードウェイと言えば1960年代からモータースポーツの数々の名シーン・名勝負が繰り広げられた名門サーキット。2000年にトヨタ資本となりリニューアル。2005年から現在のコースレイアウトとなった。このサーキットの特徴といえば、1.5kmの日本一長いホームストレート。チューニングカーの最高速は300km/h超に達する。

欧州ならともかく、日本のサーキットで大型トラックの試乗会が開催されるのは、歴史上初めてのこと。
「UDトラックス」は、何を考えて新型『クオン』をわざわざサーキットで試乗させようというのだろうか?

試乗は長いストレートを利用して、スターティンググリッドで乗り降りする1周ごとの交代制だった。
12段変速のAMT(自動変速MT)『ESCOT-VI』は、荷物の積載量や路面の斜度などの負荷によって、発進時のギヤが自動的に選択される。
富士スピードウェイのストレートは若干の下りなので、3速発進だった。

エンジンを始動させるとECOモードが基本のポジションとなり、ノーマルモードを選ぶためにはECOオフのスイッチを毎回押す必要がある。それくらい、燃費性能を重視しているのだ。

ECOモードになっていると、アクセルペダルをいきなり床一杯まで踏み込んでもアクセルストッパーが作動して緩やかな加速しかしない。
当然のことながらキックダウンも抑制されており、加速はかなり穏やかだ。
シフトフィールはダイレクト感が高まった感じ。セレクターゲートはストレートなデザインで乗用車のATみたいに操作できる。コックピットは、高級感と使い勝手を両立したデザイン。各操作系も分かりやすく、扱いやすいレイアウトになっている。

1コーナーでブレーキをかけていくとブレーキブレンディングが働き、ディスクブレーキと排気ブレーキを自動的に併用して制動力を発生させる。
排気ブレーキは4段階あり、一番強力なモードはシフトダウンを併用して、かなり強力な利きを見せる。

国産トラック初装着となるディスクブレーキのフィーリングが絶妙だった(従来はドラムブレーキ)。乗用車みたいで、筆者のようなトラックの素人にも扱いやすい。ちなみにディスクブレーキの採用だけで100kgも軽量化に貢献しているそうだ。

高床車を試乗した後、低床車を試乗。今度はECOモードを解除してノーマルモードで加速する。
ハンドリングがいい。ロール感も少なく、とても重量物を積載して総重量が20tもあるトラックとは思えない。ヘアピンカーブも安定感が高い姿勢で旋回するし、富士スピードウェイの難所である逆バンクのプリウスコーナーも難なくクリアしていく。何より運転するのが、とっても楽しい。
ちなみにストレートでは、速度リミッターが作動する90km/hにあっという間に到達するほどパワフルだ。

しかも助手席の乗員と普通に会話できるくらい、室内の静粛性も上がっている。安全かつ快適で、長時間の走行でも疲労はかなり少なそうだ。

運転支援システムなど安全装備が充実
エンジン&ミッションも改良された

新型クオンの開発では、テストは92台の試作車を使い、延べ250万時間も費やしたそうだ。
従来型と名称は同じながら、GH11型エンジンはインジェクターやピストン、ウォーターポンプなどを改善し、燃費を大幅に向上させている。先代と見た目はあまり変わらないが、ユニットインジェクターにコモンレールを組み合せた新型の燃料噴射装置や吸排気系の改善などが施されている。ピストンの形状を変更。マルチホールインジェクターの噴射パターンを活用するウェーブ型トップを採用した。

さらにウォーターポンプは切り替え機構が備わり、高回転時の抵抗を軽減する工夫が施されている。

AMTのESCOTも第六世代へと発展。クラッチ板の枚数を増やし、ソフトウェアも改善した。後退は瞬間的にクラッチ板を押し付けて弱いクリープを作り出していると言う。

ノンシンクロのMTをシフトさせるカウンターシャフトブレーキ(写真下の黒い部分)が強化されている。

圧雪路のような滑りやすい状態で凹んだ路面からの発進や脱出時には、車体を前後に揺らして勢いをつけて発進するようなこともできるそうだ。
新型『クオン』では稼働率を高めるため、メンテナンスフリー化も進めている。これがクラッチ板の摩耗を抑える制御につながっているのだ。

GPSで高速道路の起伏を記憶して、次回走行する際には道路の勾配を考慮した加速をすることで燃費を向上させる先読み機能のフォアトラックや、加速を穏やかにするソフトクルーズコントロールなど、燃費性能を高めるための先進装備も充実。

クッキリと見やすい大型のメーターパネル。クルーズコントロールなどのスイッチが組み込まれた4本スポークステアリングを採用する。

レーダーとカメラで前方の状況をチェックする自動ブレーキのトラフィックアイブレーキを始めとした、安全性を高める運転支援システムも豊富だ。
トラフィックアイクルーズと呼ばれるACC(アダプティブ・クルーズコントロール)は30km/h以上で設定できるが、15km/h以下の速度ではキャンセルされてしまう。 ノロノロと走行を続けている状態であれば問題ないが、ゴー・ストップが続く状態では使えない。これは現場の声を尊重し、ドライバーの運転を優先するような仕様にしたためだ。
ナンバープレート上のミリ波レーダーとフロントウインドー中央底部のカメラで前方を監視。自動ブレーキやオートクルーズ、路線逸脱警報などをこれらのセンサーで実現している。

ちなみにトラフィックアイクルーズとECOモードは、AMTだけに装備されている。これを考えれば、MTを選ぶ理由はほとんどなくなってしまうのではないだろうか。

シャシーも高張力鋼により薄肉軽量化されている。プラットフォームに直付けする際の使い勝手を向上させるため、エアサス仕様はリフト量が増やされているそうだ。

これまでディスクブレーキを採用できなかったのは、ブレーキパッドの耐久性に課題があり、ドラムブレーキほどのロングライフを実現できていなかったからだとか。
しかし今回、ディスクブレーキにしたことで大幅な軽量化を実現できた。ブレーキドラムはディスクローターに更に太い輪っかを追加したようなものなので、非常に重いのだ。

長い峠道の下りなどブレーキを多用するシーンでは、ドラムブレーキでは利きが甘くなるフェードなどが起きることもあるというから、ディスク化がこれから進むかもしれない。
ようやく日本の大型トラックも、欧州トラック基準の安全性と快適性、そして走行性能を得たと言えそうだ。

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