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日本車嫌いだったアメリカ人ユーチューバーを虜にした国産セダンとは

日本のカスタムカーに刺激を与えられた

 4年前、息子の誕生日にカメラをプレゼント。そのカメラで愛車の動画を撮影したのが、ユーチューバーになる最初のきっかけ。

 そして、大好きなスカイラインGT-Rや旧車、セダンといった「日本車」をレポートしたYouTube動画が、あまりの面白さから一躍話題の人物に。生粋のアメリカ人の愛車が、なぜ日本のカスタムカーなのか。日本車好きになった知られざる青春時代のエピソードと合わせてインタビューを行なった。

「正直、日本車には全く興味がなかった。というよりも、むしろ嫌いなぐらい(笑)。父親がアメリカンマッスルカー一筋だった影響でカマロやマスタングとか、パワーのあるクルマが大好きでした。僕は1970年生まれですが、70年代から日本車が大量に入ってきた。幼い頃の日本車は、安っぽくて、小さくて、パワーがない……。『何でこんなのに乗るの?』って、そんなイメージしか持っていなかったんです」。

 そんな彼が今、大人気のユーチューバーとして、日本のクルマ業界で一目を置かれている。チャンネル名は『Steve’s POV スティーブ的視点』。チャンネル登録者数は12万人以上、総視聴回数も約3000万回というから凄い。その中でスティーブさんは驚くほど流暢な日本語で、日本車を中心とした改造車をユーモアを交えながらレポートしているのだが、これがじつに面白い。

 それにしてもなぜ、生粋のアメリカ人である彼が、日本語で日本車を解説しているのか。日本車は嫌いだったはずなのに。

「1991年の夏休み、21歳の時に初めて日本に行きました。当時はウィスコンシン州立大学の学生で、経営学を専攻。日本は空前の好景気で、あらゆる人が世界一の経済大国だと認めていた。僕もこれからは日本だと思い、大学では日本経済はもちろん、日本語も一生懸命学びましたね」。
そして、留学生として来ていた日本人と友達になり、「そんなに日本が好きなら、ウチの実家に泊まったら?」という話に。期間は夏休みを利用しての僅か2ヶ月。そこで大きな転機を迎えることになる。

「クラウン、シーマ、ハコスカ、ケンメリ……。一瞬で超カッコイイ!ってなった。小さくてパワーのない日本車しか知らなかったけど、『こんな素晴らしいクルマがあるんだ』ってね。あと、街道レーサーとか、当時の改造も自分好み。あんなに凄いオーバーフェンダーを見たのは初めてで。元々嫌いだっただけに、好きになると反動が凄くて(笑)、一気に日本の改造車に目覚めたんです」。

 日本人留学生の友達からの何気ない誘いをキッカケに、クルマの趣味が180度変わってしまった。
友達の実家は埼玉県の養鶏場。ホームステイ中の2ヶ月間、養鶏場でアルバイトをさせてもらうのだが、卒業の年に『日本の養鶏場での経験』をテーマに全米日本語弁論大会に出場すると、なんと最優秀賞を獲得。副賞として日本航空からファーストクラスのチケットが贈られ、あれよあれよという感じで、憧れの日本企業への就職まで決まってしまう。そんな人生のエピソードも語ってくれた。

「卒業後の5年間、日本でお世話になりました。就職先はコンピュータ会社。そして2年で独立し、日本で有限会社を設立。翻訳や通訳の仕事をしつつ、現在の本業である不動産の仕事をするようになったんです。いま思うと、あのホームステイが僕の人生の大きな転換点だった気がします」。

 日本にいた5年間で乗った日本車は10台近く。セダン系だけでも、ローレル、Y32セドリック、16アリスト、30セルシオ、50プレジデントと、5台も乗り継いだ。
「アリストは、ターボで速いし、セルシオはスムーズな走りが良かった。近所にイエローハットがあって、そこで19インチのホイールを買ってカスタムも楽しみましたね。あと、日産のプレジデントは印象的だった。ソブリンというグレードだったけど、見た目はクールだし、室内も広いし最高に良かった」。

大学で日本のことを学び、念願だった日本での就職。初めて来た時に日本車に惚れ込み、何台もの日本車を乗り回した。こうした経験があるからこそ、ユーチューブの『スティーブ的視点』は多くの日本人にうけ、愛を感じるレポートに親しみを感じるのだろう。

「古き良き日本車はアメリカ人も興味津々、
警察にもよく止められます(笑)」

ユーチューブを始めて3年目の昨年。東京オートサロンの会場で、日本が誇るセダンエアロメーカー「ジャンクションプロデュース」の代表を務める武富氏と出会う。

「ジャンクションプロデュースはアメリカでも有名だし、日本で”JP仕様”のクルマを見たこともあって、カッコイイなって思っていたんです。武富サンが70年10月16日生まれで、僕は10月18日生まれ。偶然にも同級生というのが判明して、一気に意気投合(笑)。その時、彼に僕の夢を話したんです」。
それがトヨタ・クラウン(130系)の輸入。初めて日本に来た時に一目惚れした、クラウンやY31シーマをアメリカで乗りたい。そして、何よりも大切な日本の改造車をアメリカ人にも知らしめたい、と。

武富サンはその思いに応え、昨年の3月に白いクラウンを、6月にシルバーのクラウンを、9月に31シーマをアメリカに送り届けた(その際の模様はYou Tubeに配信)。

「もうね、最高ですよ。近所の人の反応は、『何だあれ!?』って不思議がる人がほとんど。警察にも人気らしく、よく止められます(笑)。特にシーマのハンドルには全員がビックリ。真ん中が固定されていて、外側だけが回るんですけど、こんなのはアメリカにはないですからね。しかも、その固定されている部分にはマルチとかのスイッチボタンがたくさん付いていて、『触っていい!?』って聞いてくるんですよ」。

確かに一目惚れしたクルマではあるのだが、輸入してしまうほど、どうしてそんなに好きなのか。

「仕事で毎日乗るなら、新型のレクサスが一番だと思います。壊れないし、よく走るし、快適だし。だけど、週末のプライベートを共にしたいなって思うセダンは、クラウンとシーマなんです」。

現在、スティーブさんの職業は全米ナンバーワンの不動産会社のエージェント。日本にも年に3〜4回ほど仕事に来るそうで、そんな忙しい彼の癒やしが日本の誇るVIPカーなのだ。

「運転していて気持ちがいい。音もいいし、匂いもいいし、車高短でガタガタするところもいい。それに、アメリカで乗っている人がほとんどいないので、めちゃめちゃ目立てるしね。そういうのが楽しいし、僕をリラックスさせてくれるんですよ」。

(レポート:US VIP Magazine)

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