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「タックイン」「アンダーステア」 クルマ好きがFF車でよく使うクルマ用語4つ

いまとなっては使わなくなった用語も

 乗用車の大半がFFになって久しいが、1970年代から80年代ぐらいまでは、FF(前輪駆動)車は室内は広いが、運転には独特のクセがあって乗りにくいというイメージがあった。令和元年の2019年は、FFを普及させた“ミニ”の誕生から60周年の節目でもある。今となっては使うことが少なくなってしまった、FF車に馴染みに深いフレーズをいくつかピックアップしてみよう。

・アンダーステア

 ”FF”、すなわちフロントエンジン・フロントドライブということは、エンジンとミッションという重量物が車体前方に集中するため、重量バランスが前に片寄る。いわゆるフロントヘビーというヤツで、フロントの慣性重量が大きいということは、弓矢の矢と同じで直進安定性に優れる。

 一方で曲がりにくいという性質があるので、FF車は基本的にアンダーステアになりやすい。しかも、FFは駆動輪もフロントタイヤなので、パワーオンでフロントのコーナリングフォースが減少し、パワーアンダーも出やすい。スポーツモデルで「曲がるFF車」として誕生したのは、ホンダ・インテグラ タイプR(DC2)が登場してからだった。

 

・タックイン

 FF車の特性を生かしたコーナリングテクニックのことをタックインと呼んでいた。

 前述の通り、FF車はコーナリング中にアクセルを踏んでいるとコーナリングフォースが減ってアンダーステアになりやすい。逆にアクセルオンでコーナリング中にアクセルをオフにすると、フロントタイヤのコーナリングフォース(四輪の向心力)が一気に回復し、大きなヨー(上下を軸として水平に回転すること)が出て、オーバーステアに転じる。これが、タックインだ。

 昔は曲がりにくいFF車をアクセルのオンとオフで素早く向きを変え、コーナーリングの立ち上がりで車速を上げるテクニックとして、トライする人が多かった。だが、一方でタイヤやサスペンション、ボディの進歩によりタックイン現象が出にくくなり、わざとテールを流すよりスムーズに走った方がリスクも少なくタイムが出るようになり、次第に廃れていったのである。

 

・トルクステア

 エンジンからフロントの左右のタイヤに駆動力を伝えるときに、ドライブシャフトが左右不等長だったり、継ぎ手の角度が左右で違ったりすると、アクセルを強く踏み込んだ時に、左右輪に伝わるトルク差から、ハンドルを切っていないのにクルマが曲がろうとしてしまう。これをトルクステアという。

 エンジンが横置きのFF車だと、どうしてもドライブシャフトが左右不等長になりやすいが、重量配分やサスペンションのジオメトリーなどの工夫で、最近のクルマはトルクステアが目立たなくなっているが、皆無にすることは難しい。

・Fドリ

 FF車でドリフトをすることを意味する用語、エフドリ。パワーオンでテールスライドを発生させることができないFF車でのドリフトは、かなり特殊なテクニック。コーナー進入時に素早いフェイントモーションとフットブレーキでヨーを出し、サイドブレーキを多用してテールスライドを持続させるというもの。

 前人未到の全日本ジムカーナ100勝、V18の記録を誇る山野哲也のFF車による360度ターンも有名。ちなみに国産車で最初のFF車は、1955年に登場したスズキのスズライトSS。360cc空冷2気筒2ストロークエンジン(15.1馬力)をフロントのボンネット内に縦置きにレイアウトだ。日本初の本格的軽四輪乗用車で、2ストロークのエンジンを積んだ初の本格四輪車でもあり、先進性の固まりのような一台だった。

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