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ICカード免許証導入から10年余り、活用の進む現場と落とし穴

活用が進むICチップの技術

 年を追うごとに巧みになる犯罪。記憶に新しいところでは某住宅メーカーが被害にあった55億円の地面師詐欺なんていうものもありましたが、このように本人になりすまして相手を騙す詐欺事件が横行してます。パスポートや運転免許証など、身近なものを偽造することで本人のふりをすることができる時代なのです。

 そんな偽造運転免許証への対策だけではないですが、2007年よりスタートしたICチップ入り運転免許証。IC運転免許証は明るい光などで透かすと顔写真中ほど左側位置にICチップの影が見えるはずです。このチップ内には、運転免許証に記載される情報をデータ化。表向きは本籍地の表示はなくてもICチップ内に記録されているほか、さまざまな活用が進められています。

 例えば、トラック・バス・タクシーなどの運輸・運送・交通関連事業者向け「IC運転免許証連動型アルコール検知器」。運転免許証のICチップを読み取って本人確認し、検知器に息を吹きかけて飲酒状態をチェックするというもの。運転免許証の不携帯も同時チェックできるメリットもあります。

 他にも「ヤマト運輸」では、ICカード運転免許証を活用した運転免許証管理システムを採用。ドライバーが携帯するポータブルPOS端末にICカード運転免許証を読み込ませることで「本人確認」「有効期限確認」「自動車運転免許種別」で乗務する車種の整合確認をしています。

 3点いずれかでエラーになれば端末は起動せず、作業は不可。中型免許の導入以降、運送業界ではミスや誤解などから新制度の普通免許で中型車(8トン)を運転する、運転させられるトラブルが多発。事業者にとってはドライバーの割り振りや運転可能な車両の確認などが手間のかかる作業なので、そのようなトラブルを防ぐのに役に立っています。

カーシェアや車両制御に活用  

 クルマを借りるカーシェアにも「IC運転免許証がそのままIDカード(会員証)になる」という新たなシステムがあります。これも運転免許証のICチップを活用したシステムで、専用ICカードが不要となるため忘れる心配もありません。借りる前に自分のIC運転免許証情報をネットで申請登録しておけば、無人のカーシェア拠点でクルマにIC免許証をかざすだけで解錠。あとは車内のキーを使ってスタートし、返却時もIC免許証をかざして施錠するという使い方です。すでに日産やホンダのカーシェアで実施されています。

 他にも、クルマに備えたリーダーなどで運転免許証確認を行ない、登録した人以外ではエンジンがかからないようにするというもの、クルマに運転免許証を差し込むことで、シートやミラーなどの調整を自動でできるシステムなども検討されているとのこと。昨今、問題となっている自動車窃盗「リレーアタック」(過去記事:新手の自動車盗難リレーアタックの仕組みと対処法4つ)」を防止できるシステムになるかもしれません。

 こうなるとカーシェア車両であっても、マイカーのような感じになるので、1台のクルマを複数人で乗る場合でも便利だと思います。また、IC運転免許証を差し込まないと運転できないわけですから、無免許運転を防ぐことにも繋がりますよね。

 ちなみに、警視庁のホームページではICチップについて次の記載があります。

「ICカード免許証は、表面に記載されている内容がICチップに記録されます。ICチップの記録内容は、ICカード読み取り装置に暗証番号を入力しないと見ることができません。また、免許証を身分証明書として使用する際など、表面に記載されている内容の真偽を判定する場合に暗証番号が必要となります。暗証番号を設定しなかった場合は、ICカード読み取り装置を持っている人が、何らかの理由で至近距離(約10センチ)まで近づくとICチップ内の個人情報が読み取られるおそれがあります」。

 すなわち、運転免許証のICチップは”RFID”というチップが使われている可能性が高いということ。これは商品タグなどにも使われている技術で少しなら離れていても、データの読み取り、書き換えが可能な技術。同じくRFIDチップを採用するアメリカでは、免許証から個人情報がハッキングされる恐れがあるとして警鐘しています。

 日本のIC運転免許証は暗証番号(免許更新時に設定する4桁の番号)でセキュリティをかけた状態ですが、心配ならばリレーアタック防止用のスマートキーケースに入れて、電波を遮断し、傍受することを防ぐようにした方がいいかもしれません。

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