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「メルセデス・ベンツ」はなぜ高級なのか? 安全性や品質にこだわった“車造り”を紐解く

ベンツ創始者の名言「最善か無か」

 メルセデス・ベンツは、創始者ゴットリーブ・ダイムラーとカール・ベンツによって造られた。彼等2人の信念が今日のメルセデス・ベンツ車造りに脈々として受け継がれている。

 ゴットリーブ・ダイムラーの信念としてあまりにも有名なのが「最善か無か」。つまり、工場の門を出るものはいかなるものも、品質と安全においてすべて最高の規準まで進歩したものにするという意味だ。

 一方、カール・ベンツは「発明への情熱は決して消えることは無い」と技術者の強い意志を示し、常に革新の信念を抱いていた。

 中でも、ゴットリーブ・ダイムラーのモットーである「最善か無か」は、今もメルセデス・ベンツ車造りの哲学の中核。自動車の安全性がルールとして取りざたされている。

特許公開で世界のクルマを安全に

 ずっと以前から、メルセデス・ベンツの設計思想には「安全性」が大きな地位を占めていた。1951年にメルセデス・ベンツの技術陣は自動車の安全性理論を確立し、「衝撃吸収式前後構造」と「頑丈なパッセンジャーセル構造」の特許を取得。この構造が今日の自動車における安全ボディの基本となっているのだ。

 そして1969年には、実際の事故現場に急行して人間や車両の被害状況を調査し、事故原因を含めた様々な事実を分析・研究する事故調査活動を開始する。累計4200件以上という調査を行ない、貴重なデーターを数多く蓄積。

 自動車の衝突形態のひとつで、車体前方の一部分のみに負荷が加わる「オフセット衝突」に対応する衝撃吸収式ボディや、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、シートベルトテンショナーなども事故調査による結果から導き出された安全技術である。

 また、これらの特許を独占せず次々に公開してきたのは、メルセデス車だけでなく世界中の車に向けて安全性の向上を願ったからだ。さらに、人間工学に限らず、生理学、心理学を取り入れ、人間を中心にした安全設計を採用。だからこそメルセデス・ベンツのエンブレム「スリーポインテッドスター」は、高級車の中でも安全性の象徴として君臨しているのだ。

 彼らの車造りには、一貫したポリシーがあり、時代の最高技術を反映させて「安全で高品質」なメルセデスを造ること。つまり、メルセデスのエンジニア達は優れた個々の技術を如何にうまく組み合わせ、自動車の求める総合性能のバランスを納得ゆくまで追求し、安全で高品質な車を造ることにある。また、安全に造ることは“義務”であり、同様に経済的に走るように努めることも“義務である”としている。

10人のうち1人は品質管理の検査員

 メルセデスの品質は製品のアイディアを生むこと。開発、生産、耐用年数、アフターサービスへと連なる基礎となっている。例えば、ジンデルフィンゲン工場はじつに近代的な設備によって、組み立て生産が行われている。

 エンジンルームなどの非常に重要な電気接続部分には表面を銀メッキ処理、エアバックなどの安全システムの接点は金メッキ処理し、腐食を徹底的に防止。しかも「品質管理」は、以前と変わらず頑固なまでに熟練工が厳しくチェックするが、10人の工員のうち1人は検査員と言われており、事実、彼らの鋭い目にかかると悪いものに対する「妥協は一切受け付けなく」跳ねつけた。

 ボディは素手でなめるように検査し、ドアとボディ、あるいはトランクやボンネットとボディの合わせ目の調整は、長い経験と優れた技術を持った熟練工が実施。内張りは手作業で行なわれ、木目は彼らの手の感触を頼りに確かめ、職人気質による「手造り」といわれる所以は決して大げさではない。

 「親子3代」にも亘りメルセデス・ベンツ車造り一筋に従事している一家も有名なハナシ。まさに車造りに対する職人気質が代々受け継がれている証しであり、AMGの”One man-One engine”もクラフトマンシップゆえの証しなのである。

素材からテストまで厳格な本革

 インテリアで使われる本革は、独特の香り、見た目の質感、触った時の感触が室内に高級感を与える。このため、メルセデスにはこれについても「厳格な基準」が適用されている。

 同社で高品質規準を満たす「最高級の本革」になるとされるのが、2歳の南ドイツ産の雄牛。厳選された飼料だけを与え、管理の行き届いた牛舎で注意深く育てられる。何故なら、虫刺されや有刺鉄線の傷跡等は高級レザーには不適格。生皮になめし加工をした後、シワや細かな傷等を厳しく検査し、栽断後は個々の部位を互いに手で縫い合わせ立体的に仕立てられるという。

 自動車に使用される本革は過酷な使用に耐えなければならず、特にハンドルやシート等に上質のナッパレザーが使用されるのは温度や湿度の変化にも耐える高い耐久性があるため。

 さらにダッシュボードまわりは、温度が100℃にも達することがある。永年に亘り、温度や湿度の変化にも耐える高い耐久性が要求される。しかも人の乗り降りを想定し、機械で約3kgの力をかけて8000回こする。他の機械では人間が数年間シートの端に座ったのを想定して、10万回の圧力をかけるテストを実施(パワーシートは1万5000回)。そのうち3分の2はホコリを混入させて行なわれるという。

 

ウッドフェイシアも安全スマートに適合

 1950~1960年代にわたる全盛期にダッシュボードを華やかに飾ったウッドフェイシア(木製パネル類)は大木から削り出された生(ムク)だった。ところが、今日では衝撃吸収能力という安全面からするとこれでは通用しなくなった。理由は独自の事故調査で割れ目が「ささくれて」乗員に危害を与えるケースが明らかになったからだ。

 しかし、メルセデスには一時期姿を消していたウッドフェイシアを新たに採用。改良されたウッドフェイシアはスペシャリスト達が長年研究を重ね、裏表の高級木目版に「アルミ」を中に挟みサンドイッチの多層構造にし、衝撃を受けた時にはアルミ板が柔軟に変形するという安全対策を施したのである。

 

 これを「メルセデス・アルミサンド」と称し、木目模様が持ち合わせている本来の美しさを生かしウッドフェシアの安全もスマートに適合。もちろん、仕上げの精度やわずかな濃淡の調整は全て手作業。安全なアルミ・サンドウッドフェシアの特許を取得して30年以上が経つ。そして、今や世界中のメーカーがこの安全なウッドフェシア構造を採用しているわけだ。

 ところで、リアウインドウ左下端に貼られている濃紺の「ゴットリーブ・ダイムラーのサインステッカー」の深い意味はご存じだろうか(最近は黒色)。モットーである『最善か無か』はゴットリーブ・ダイムラーで造られたメルセデス・ベンツの正規輸入・販売のシンボルであり、「高品質の証し」なのである。

 

※参考文献:メルセデス・ベンツ ミュージアム&マガジン、ダイムラー・ベンツ社カタログ、ヤナセ・カタログ

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