サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

クルマのシフトレバーにある「B」や「S」ってなに? 意外と知らない正しい使い方

オートマ車のシフトモードは多種多様

 日本で販売されている多くのクルマはAT(AT免許で運転できるクルマと言う意味でCVTやDCT、AMT含む)だ。基本的にはそれらのシフトレバーは駐車時に使う「P」のほか、バックの「R」、ニュートラルの「N」、そして通常走行で利用するドライブの「D」で構成されている。

 しかし、一般的なAT車はそれ以外にも走行ポジションを備えているが、かつてのように上限ギヤを固定する「3」「2」「1」ではないので、パッと見たところわかりにくいのも否めない。それぞれのポジションはどう使えばいいのだろうか? 

強いエンジンブレーキが必要な時に使用

 まずは、多くのクルマに備わる「D」の下にある「L」というモード。たとえばホンダ・N-BOX(エヌボックス)の場合だ。

 取扱説明書を読むと、Lは「低い」を意味する「ロー」と表記されていて主な使用シーンとしては

 ●強いエンジンブレーキが必要なとき

 ●上り坂や下り坂を走行するとき

 と書かれている。

 一般的には急こう配の峠道を下るときに、フェード現象(ブレーキの過熱による効きの低下)を抑えるために使うモードと覚えておけばいいだろう。

 

「S」はなんのため?「L」とはどう違う?

 いっぽうで同じホンダ車でも、CVTのマニュアルシフトモードを備えているクルマなどは「L」ではなく「S」が用意されることが多い。

 同じN-BOXの取扱説明書によると「S」は「ドライブ(S)」と表記され、

 ●高回転領域を有効に使用

 ●上り坂や下り坂を走行するとき

 ●7速マニュアルシフトモードにするとき

と書かれている。

 「L」に対して「強いエンジンブレーキ」という表記がなくなっているほか、「マニュアルシフトモードにするとき」と加わっているのがポイント。単にエンジンブレーキをかけるだけでなく、マニュアルシフトモードを活用してエンジンブレーキの効きや、エンジン回転数をコントロールしたいときにも有効というわけだ。ちなみに、「S」モードにしなくてもパドルシフトは機能する。

 また、ホンダ以外のメーカーのクルマにも「S」が用意されていることもあり、たとえばトヨタの取扱説明書には「S」の使い方として「坂道走行」という記述がある。

 

「B」はブレーキ? アクセルオフでの減速が強い

 プリウスやアクアなどトヨタ系のハイブリッドカーでおなじみなのが「B」。ハイブリッドだけでなくCVT車でも見かけるこのポジションは、プリウスの取扱説明書によると

 ●急な下り坂など、強いエンジンブレーキが必要なとき

 を使用目的としている。

 アクセルをオフにした際の減速度が強まるモードで、ブレーキの「B」を意味するから分かりやすい。さらにクルマによっては「S」と「B」の両方を備えることもあり、トヨタ・スペイドの取扱説明書には「S」を「坂道走行」、「B」は「急な下り坂走行」と想定シーンが分かれているのも面白い。

 ちなみにトヨタのハイブリッドカーの場合、「B」レンジは回生ブレーキよりもエンジンブレーキを強める制御となり、燃費面では「D」レンジ+フットブレーキのほうが勝る。ただし、フェード現象を防ぐために、長い下り坂では積極的に使うことをおススメしたい。

 

「M」を持つクルマも存在する

 「D」のほかに「M」を備えるクルマも多いが、これを備えるクルマには共通の特徴がある。パドルシフトを使ったり、シフトレバーを前後(左右)に倒してシフトアップ/ダウンする機構を備えているクルマだ。

 「M」とは”マニュアル”の頭文字。MT車のように、シフトアップ/ダウンをドライバーの意思で行うためのモードだと考えればいいだろう。想定シーンはエンジンブレーキの効きを調整する際や、追い越し加速の際、そしてサーキットなどのスポーツ走行用だ。

 もちろん「M」に入れなくてもパドルシフトなどは機能する場合がほとんどだが、「M」にするとエンジンを高回転まで活用できたり、スポーツカーなどでは「M」にするとギヤが完全に固定されドライバーの操作以外の自動的なシフトアップやシフトダウンが行われないこともある。

 

使うのはエンジンブレーキのため?

 いずれも共通しているのは、「D」よりもエンジンブレーキが効くこと。だから通常走行においては、「D」以外のモードはエンジンブレーキを効かせるためと考えておけばいいだろう。

 また、「S」と「B」のどちらも備えるクルマは、エンジンブレーキの効きの強さを切り替えできると考えるとわかりやすい。

 

なかには「N」ですら備えないクルマも

 ところで、世界には「N」や「D」ですら備えないクルマもある。たとえばランボルギーニ。シフトモードはボタンで切り替えるのだが、用意されているのは「R(リバース)」と「M(マニュアル)」のみ。

 プラス側のパドルを引くことで「D」に入り、「M」のボタンを押せば“自動変速モード”と自動変速しない“マニュアルモード”が切り替わる。

 エンジン始動時は自動的に「N」となり、手動で「N」にしたいときは左右のパドルを同時に引くことで「D」から「N」へ切り替わる仕組みだ。

 近年のフェラーリも同様の方式を採用しているが、それらのクルマを動かす際はあらかじめ知識がないと「D」に入れることができず、クルマを発進させることすらかなわないので注意が必要だ。

モバイルバージョンを終了