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ヤリス登場でさらに加熱! いま「ナンバー付き」レースが人気なワケ

ふだん使いのクルマでレースを楽しむ時代

 爆音・ドンガラ・シャコタンが当たり前のレースカー。しかし現在はそんな認識が引っくり返されて、快適装備がありナンバーも付いた車両が増えている。その歴史を振り返りながらメリットや人気の理由を探ってみよう。

ナンバー付きヴィッツレース登場から早くも20年余

 レーシングカーといえば室内は運転席しかないドンガラ、軽量化のためエアコンどころかヒーターまで取り外され、爆音のマフラーにわずかな段差でも擦るほどの車高と、およそ快適性とはかけ離れた仕様だった。しかし現在は街乗り仕様とはいわずとも、規則により安全装備を除いてはノーマルに近く、ナンバー付きで公道を走行できるレース車両も多い。

 その流れを作ったのは2000年にスタートした、初代ヴィッツ(SCP10)によるワンメイクレースだ。ロールケージなど安全装備は従来のレースカーと同等のレベルを維持したうえで、エアコンの取り外しが禁止されたり触媒を備えた車検対応マフラーなど、快適性を損なわず環境にも配慮した車両規則が設けられた。レース中でも最低地上高は車検をクリアする9㎝以上が求められ、最後には公道を走行できる状態であるかのチェックも実施されるのだ。

 目新しさと車両価格が安いこともあって、低迷していたアマチュアレースの人気が再沸騰。以降もヴィッツワンメイクレースのネッツカップは、2代目のヴィッツNCP91、3代目のヴィッツNCP131と続き、今年からはヴィッツの後継車に当たるヤリスによるワンメイクレースの開催が決定している。

また、ナンバー付きで言えば、2013年からは86/BRZのレースがスタートしてこちらも人気だ。

モータースポーツの挑戦開始やエンジョイ継続

 ナンバー付き車両のレースが主流となった理由、それはコストを含めた手軽さがイチバンだろう。今まではレース車両が自走でサーキットへ行くことはあり得ず、積載車をレンタルして運搬するしか手はなかった。レース当日は大きなクラッシュを起こして自走不能になったり、ランプ類などが割れて公道を走れない状態になる可能性もある。このためもあって、依然としてレース当日は競技車運搬として積載車を使うエントラントが過半数を占めてはいるものの、練習やメンテナンスで車両を動かす必要があるときに、いちいち積載車を使わずに済むのは大きなコストカットでもある。

 かと思えば、まったくの無名ビギナーであっても、自走してサーキットにゆきレース界の限りない頂点を目指す挑戦が始められるのだ。

 またレース車両ではあってもナンバー付きなので通勤や通学にも使用でき、静かなマフラーは近所からのクレームを気にすることもない、車高であるので段差や輪止めにいちいち神経質にならなくてもすむ。

さらにはエアコンが当たり前に使えるし、NCP91以降のヴィッツではリヤシート付きで普段使いも遜色がなかった。タイヤもスリックやセミスリックではなく、雨でも安全なラジアル限定なので、レースと生活どちらでもOKだ、などとありがたいことも多い。

日本に根ざしたモータースポーツ 

 車検や自動車税といったナンバーなし車両と違う出費はあるものの、レーシングカーを所有するハードルはかなり低くなったといって過言ではない。その気になればフェリーに積んでの旅行も可能だし、レースをやめてもステッカー類を剥がしてしまえば、見た目はそこらを走っているクルマとほぼ変わらないだろう。レース参戦を勇退するとなっても日常のアシとして、共に戦った相棒と付き合えるということになる。低コストで汎用性の高いナンバー付きレースが流行るのも、当然といえば当然なのではないだろうか。

 こうした流れはいわゆる草レースにも波及している。一例を挙げると新規格NAの軽自動車によるレース、「東北660選手権」はナンバー付きであることが前提となっている競技車両規則なのだ。プロショップなど積載車を持っているエントラントの参加などにも対応しているため、ナンバーがない車両でも参加は認められているが、車両規則は共通なのでお互いの競技車両の戦闘力が変わることは一切ない。

 モータースポーツ界に一石を投じたナンバー付き車両のレースによって、よりいっそうレースは身近になっていった。今後もアマチュアが対象のカテゴリーでは、JAF公認であっても非公認であっても、主役であり続けるだろう。

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