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単なる焚き火とは違う! 「炭」のもつ圧倒的なポテンシャルと「活用法」

キャンプに役立つ「炭」の使い方

 薪を燃やす“焚き火”と木炭を使う“炭火”は似て非なるもの。薪は木を乾燥させたもので、木炭は酸素を抑えて蒸し焼きにして木を炭化させたもので、もともとはどちらも木だ。

 高温になると木の組織が分解されてガスが発生し、それに火がつくと焚き火のように炎を上げて燃えることになる。だが、酸素を抑えて「蒸し焼き状」にしてゆけば発生したガスに火がつくことはなく、木の組織はそのまま炭化する。これが木炭なのだ。

 木炭はすでにガスが飛んでしまっているため、薪よりも火がつきにくいが、煙が少なく、きちんと炭化させた木炭はいやなにおいもしない。また、空気を送ると表面は赤くなり、炎こそ立たないものの火力が安定して火持ちがいい、という特徴を持つ。

 ちなみに炭化しきれていない木炭であると、表面が赤みがかって見え、煙が出てにおいもある。本来の木炭のよさがないので、ちょっと残念だ。

 いっぽう、薪は高温になると水分やガスが発生するので少なからず煙が立ち、炎もあがるため焚き火もより温かく感じる。炎が落ち着き「熾火」になると調理向きではあるが、その状態を長くキープするのは手がかかる。

 こうして木炭と薪を比べてみると、燃やすと「あたたかい」「調理ができる」という共通点はあるけれど、木炭はより火持ちがよくて調理向き、薪は火付きがよくて暖をとるのに向いているということがわかるだろう。

「木炭」の着火は「繊維の向き」に注目

 先述の通り木炭は木を炭化させたもので、木の中には水や栄養を吸い上げる細い管が通っているが、これもそのまま炭化している。この管は繊維に沿って同じ方向に伸びているので、木炭を並べるときにもこの管を意識したい。

 また「火起こし器」を使う場合は、ぎっしり木炭を並べるのではなく、少しだけ隙間をあけておく。さらに、管が上下に伸びるよう木炭の切り口が見えるように並べる。こうすることで空気の通りがよくなり、煙突効果が得やすくなる。

 火起こし器がないときは、木炭を積み重ねて煙突状にしてその中心に着火剤を入れる。切り炭なら高さがそろうので煙突状に組みやすい。

 高さがうまく揃わない木炭なら、ひねったり細くたたんだりした新聞紙や割り箸状の枝で小高い山を作り、その周囲に木炭を立てかける。この方法なら着火剤がなくても新聞紙とマッチで木炭に火をつけられるだろう。

 どの方法でも、全体のほぼ半分が白い灰をかぶるまで熱を送り続ける。おおよそ20分で安定した炭火になる。着火剤にせよ新聞紙や小枝にせよ、10分ほど燃え続ける量が必要なので、冬など寒い時期は多めに用意したい。

 なお炭化不足の木炭や、良質な木炭でも、保存状態によっては湿気を帯びていることがある。内部の水分が熱により膨張して木炭を吹き飛ばす(爆跳)原因となる。キャンプ用の黒炭ではパチパチと爆ぜる程度だが、それでもテントやタープ、ウエアに小さな穴があくことがあるので、注意が必要だ。

 木炭を使う前に太陽にあてて干し、木炭を継ぎ足す前に火にかざしてあたためておくことなどが爆跳予防に役立つので、対策をしておきたいものだ。

「強火の遠火」が「炭火調理」おいしさのポイント

 炭火調理の真骨頂は網焼きだ。

 炭火は、ガスの炎よりも赤外線を多く放出するといわれている。赤外線は電磁波による熱伝導(輻射熱)のため炎と違って風の影響を受けず、その赤外線が多い炭火は焼きムラができにくいというわけだ。

 さらにはガスの炎には水分が含まれていてパリッと焼けないので香りがよくない、などグルメな理由を述べる人もいる。それも一理ではあるが、食材から落ちた脂で五徳やバーナーヘッドが汚れるのが嫌という現実的な理由も、ガスの直火焼きが敬遠される所以でもあるだろう。

 またセラミック焼き網など、炎を赤外線に変える網を使えば分離型ガスバーナーでおいしい網焼き料理ができるが、ガス缶を直結するタイプのバーナーは熱の影響を受けやすく、こうした焼き網を使えないものがあるので注意したい。

 中はふっくら・外側はカリッと焼き上げるためには、食材表面が120℃程度になるのが理想とされている。木炭は300℃程度をキープし、あおげば700℃ほどの高温になる。炭火との距離が近いと表面だけが焦げてしまうので、炭火が放つ赤外線を利用して「強火の遠火」が基本だ。

 脂の多い肉や魚は炭の真上に置くと脂が落ちて炎が立ち、焦げたり黒くすすけたりしてしまう。ほどよく脂が落ちて煙があがるのは燻煙効果でおいしく焼き上がるが、焦げすぎは苦みのもとだし見栄えもよくない。というわけで、炭火の真上でなくても赤外線の効果で芯まで火が通るので、脂が多い肉や魚は炭の脇に置くときれいに焼き上がるだろう。

 写真は木炭粉を固めた成形木炭を使ったチキンの炙り焼き。安定した熱を放つので、強火の遠火で2時間ほどかけ、じっくりあぶれば表面は飴色、内側はしっとりパサツキのない肉となる。ダッチオーブンでの丸焼きよりもスモーキーな仕上がりになる。

 ダッチオーブンやスキレットはフタの上から加熱できるのが魅力の調理器具だ。グラタン、ピザなどオーブン料理はダッチオーブンのフタに炭をたっぷり載せて上火中心で加熱すれば底が焦げることなく、表面に香ばしい焼き色が付く。ふたを開けるときに炭を取り除くのが面倒なので、フタに載せられる「炭おこし器」があると便利だ。

 また焚き火料理にこだわる人にも、焚き火の中に大きめの木炭を2〜3個追加しておくだけで熾きが安定するので、少量の木炭を持っていってはどうだろう。

炭火はあたたかいけれどテント内では使えない

 炭火を使った暖房器具といえば火鉢。空間全体をあたためる薪ストーブとは違い、冷えた手先をあたためる道具だ。炭火が放つ赤外線により、血液をあたためるので、炎が立つわけではないので手先がじんわり温かくなる。火鉢がなくても調理後のバーベキューコンロで炭をまとめておくと似たような効果を得られるのはご存知の通り。

 ほかに、木炭ではないが豆炭を使う豆炭あんか、豆炭こたつがある。1個の小さな豆炭で朝までじんわりあたたかさをキープする優れた暖房器具だ。

 ただし、火鉢、豆炭あんか、豆炭こたつは、いずれも狭いテントやシェルター内、車内で使うと一酸化炭素中毒の危険があるし、豆炭あんかは熱に弱い生地を使った寝袋の中に入れるとこげや火災の原因になることも。

 豆炭あんか、火鉢はあくまでも焚き火の補助として使うにとどめておきたい。

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