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「ビーチコーミング」って知ってる? 海キャンプでハマること間違いなしの「リアル宝探し」

宝探し、環境保全、たくさんの想いがめぐる浜辺  

 幼いころから海へ行った時は必ずと言っていいほど貝殻集めに夢中になる。貝の形の良いもの、色が綺麗なもの、時には家主がいなくなったヤドカリの家を見つけたり、時間をかけて丸くなったガラス瓶のカケラを拾ったりと、浜辺は宝探しの場所だ。夏休みの課題に集めた貝殻を使った思い出が蘇る。このアクティビティを「ビーチコーミング」と言うそうだ。最近ではそんなオシャレな言い方になったのかと思いきや、英語圏の言葉で20年ほど前から日本でもそう呼ばれるようになってきたアウトドアでの所作なのだ。さて、このビーチコーミングとは一体どのようなものなのか。単なる貝殻集めと侮ることなかれ! あらためて紹介していこう。

浜辺の漂流物と語り合う楽しみ

 ビーチコーミングとは、海岸や浜辺に打ち上げられた漂流物を集めること。コーミング(combing)とは英語で「櫛で梳かす」の意で、櫛で梳かすようにくまなく探すという意味が込められているそうだ。ビーチコーミングは浜辺を歩いて漂流物を探して、気になった物を集めていくシンプルな遊びだ。決まったルールも特になく、特別な道具や知識が必要ないのも手軽に始めやすい点だろう。時間を忘れて欲しいものを探すことに没頭できるし、なんなら浜辺さえあればできる、まだ見ぬ漂着物を探してあちこちへ旅する理由にできるなど、年齢や性別を問わずどこでも楽しめる趣味として広がりを見せている。

 波が届けてくれた海からのプレゼントにはさまざまな物があり、その代表的なものが貝殻。その種類はかなりのバリエーションがある。よく見かけるのは、ほのかなピンク色と小振りなフォルムが可愛いサクラガイやツノのような見た目のヘナタリガイなど。見つけたらテンションが上がりそうなのは、水玉模様がポップなタカラガイや小さな太陽のような形のリンボウガイ、オブジェとしても使われるほど美しく繊細な形のホネガイなど、色や形もそれぞれに個性があって奥が深い。

何が見つかるか分からない ほのかな期待感 

 ウニの仲間である平たい円盤のような形をしたタコノマクラや、丸いドーム型のコシダカウニなど、珍しい海の生き物を発見するかもしれない。欠けがない綺麗な状態でゲットしたいところだ。

 シーグラスはビーチグラスとも呼ばれ、ガラスの瓶などの破片が砂や波でもまれて角がとれ、ドロップ型になったものを指す。瓶の色に多い青や緑、茶色のシーグラスは見つかりやすいが赤や紫、ピンク、黄色のシーグラスはなかなかお目にかかれないレア物だ。

 ガラスの浮き玉は、以前は漁網を浮かせるためや海の目印として使われていたが現在はプラスチックやゴム製に代わり、ガラスの浮き玉はオブジェやインテリアに使われることが多くなったそうだ。あまり見かけないので、見つけられたらスーパーラッキーアイテムである。

 流木はしっかりと乾燥しているものを拾うのがいいだろう。木の温もりを感じられるオーソドックスなブラウンカラーや白っぽく変色したものまであり、アクアリウムなどに使用しても素敵なアイテムだ。

 種子や果実を見つけられることもある。南国の風を感じるヤシの実や身近な存在のクルミや松ぼっくり、見たこともないような木の実に出くわすこともある。湿った土に植えると芽を出すこともあるので、育ててみるのも楽しみのひとつだ。

 そのほか、ライターやペットボトル、空き瓶など、普段ならゴミになるものでもラベルをチェックしてみよう。もしかしたら異国の地の文字が刻まれているかもしれないし、年代物かもしれない。そこにはロマンが詰まっているのだ。ただし、中身が入ったままのゴミは化学薬品などの有害なものである可能性もあるため中身を開けないようにしてほしい。

「おみやげ」採取時のちょっとした注意点

 ビーチコーミングをする際の服装や持ち物だが、波打ち際を歩いたり場合によっては水の中に入ったりするため、夏場はサンダル、冬場は長靴が動きやすいが、貝殻がたくさん落ちている砂浜は素足を怪我しやすいため、スニーカーなど足を保護できる靴もあるとなお良い。集めた漂着物を入れるのにバケツやビニール袋、保存容器などを持っていこう。壊れやすい貝殻を入れるのにはピルケースがおすすめ。基本は素手、または怪我をしないように軍手などをはめるといい。網があれば海面に浮かぶ漂着物や、海中に沈んだ貝殻の採取にも役立つので持っていて損はしない。大きな流木をカットして持ち帰りたい時のために、ノコギリもあると便利だろう。

 ビーチコーミングをする場所だが、基本的には海岸、砂浜ならどこでもOK! 岩場のある海岸なら、岩と岩の間に「貝たまり」もあるので貝殻を見つけやすい。

 適した時期・時間帯はというと、ビーチが海水浴客でにぎわう夏場や、悪天候の日は避けたほうが良いだろう。気候が穏やかな春から秋が行いやすく、特に潮の干満の差が小さい小潮の日、台風が去った後などがビーチコーミングに適していると言われている。時間帯は浜辺が広くなる干潮時がおすすめである。

 採取した漂流物たちは、よく水洗いをし、砂や汚れを落とす。塩分が気になる場合は2,3日真水につけておき、洗った後はしっかり乾燥させればOK。流木は裂けた部分に砂が溜まっているため、流水で流しながらブラシでこすると砂が綺麗に落ちる。

 漂流物は、採集した場所や日付など記録しておくと、思い出にもなるし、どこでどんな物が拾えるのかの分析材料にもなるだろう。ビーチコーミングは採集するだけではなく、その後も楽しめるのが魅力のひとつ。アクセサリーやインテリアに加工したり、瓶に入れて飾るのもステキだ。私も以前、浜辺で集めた貝殻をビーズやラメとともに瓶に入れ、最後にリボンでラッピングをして家族への土産に。旅の思い出のお裾分けとして、とても喜ばれたことがある。

 注意したいのは、海岸には毒を持った海洋生物や、医療廃棄物、船舶用の信号弾など危険なものも流れ着いてくるということ。医療廃棄物は触るとケガや感染症のリスクがあり、信号弾は振動や衝撃を与えると暴発する恐れがある。どちらも危険なので触らないようにしよう。中身の入ったジュースや化学薬品系の容器なども開けないようにしてほしい。

 また、ビーチコーミングは潮干狩りではないので、生きた貝や生物を獲る行為はNG! 石や貝殻類も場所によっては規制されていることがあり、国立公園やジオパークなどの環境保全区域の海岸では、土地や地質特有の希少な石を持ち帰ることはできない。沖縄の海岸ではサンゴの死骸やサンゴの骨は採捕禁止となっているので要注意だ。自然の地形や生態系を守るため、各自治体のルールをまずはチェックしてから採集を楽しもう。

 最後に、ビーチコーミングをしながら海岸に落ちているゴミも拾ってあげれば、綺麗な海と浜辺を保つ一助ともなります。海はまた私たちに美しいプレゼントを届けてくれるでしょう。瓶の中に入った異国の文字が書かれた手紙が流れ着いてきた! なんていうロマンが溢れているアクティビティのビーチコーミング。この夏は、思い出を集めに近くの浜辺に出かけてみてはいかが?

 

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