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実はあなたも「予備軍」かも?「あおり運転」の加害者にならない「シンプルな解決策」とは

世界的な社会問題「煽り運転」がついに映画化

 筆者は、たまにしか映画を見ない。しかし、タイトルに惹かれ、久々に「これは!」と興味をそそられた映画がある。「アオラレ」。もちろん、アオラレは邦題。原題は「UNHINGED」。英語で「不安定な」という意味。

 邦題の語源はそのままズバリ、大きな社会問題となっている煽り運転だ。煽られる側を描いた映画なのだろうということは容易に想像がついた。

 煽り運転を題材にしたガチガチの社会派映画かといえばそうではない。マジか!? の連続。ハラハラ・ドキドキ、最後はスカッと痛快なサスペンススリラー。誰でも存分に楽しめる映画なので念のため。

初出:CARトップ2021年7月号

映画“アオラレ”にみる一触即発の煽り運転

 さて、この映画で被害者となる女性が「煽られる」原因となったのは、彼女が怒りにまかせて鳴らしたクラクション。日頃抱えているストレスに加え、渋滞に巻き込まれて募るイライラ。さらに信号待ちで前の信号が青に変わったにもかかわらず、動き出す様子のない前方車が追い討ちをかける。

「早く行ってよ!」と、毒づき、クラクションを鳴らしたのも、むべなるかな。もしかしたら誰もがそうした衝動にかられるかもしれない。

 一方、クラクションを鳴らされた側の受け止め方も微妙だ。そもそもマトモな人間とは限らない。彼女同様、何かしらの原因で精神状態が不安定かもしれない。「挑発しやがって」と思われてもしかたない。

 ところが後に報復の権化と化す、クラクションを鳴らされた男の(冒頭の)言葉は案外マトモだった。彼女が運転するクルマに追いつき、穏やかに諭す。「オレが悪かった。謝る。しかし、キミのクラクションの鳴らし方も乱暴だった。謝ってくれ」と。

被害者にも加害者にもなり得る危うい現代社会

 もっとも丸く収まってしまったら、そもそも物語にならないし、実際よくある話。もし、彼女も自分の非を素直に認め、謝罪していたとしたらどうだっただろう? 

 まったく取り合おうとしない彼女の態度に、ついに男はブチギレてしまう。そこから始まる執拗な煽り運転。そして彼女の周囲の人間をも巻き込みながらの常軌を逸した大暴走。「いくらなんでも、ここまでしないよね」。そこはそこ、エンターテインメントの世界だ。

 それはさておき、“アオラレ”では、いつ自分もトラブルに巻き込まれるかもしれない、あるいは加害者になるかもしれないリスキーな、いまの交通事情を改めて気付かせてくれる。

 要因として、昨今の社会的背景も影響していることは間違いなさそうだ。不景気、パワハラ、リストラ、対人関係におけるマウンティングなどなど。そうした日頃のストレスを発散できる場も、コロナ渦の自粛で失われてしまっている。

 自分では気付いていなくても、ストレスやイライラのハケ口は、運転中には周囲のクルマだけでなく、歩行者や自転車にも向きやすい。 ちなみに、一般社団法人“日本アンガーマネジメント協会”の調査によれば、全ドライバーのじつに83%以上、ほとんどの人が煽り運転を経験しているという。

 高速道路で、市街地で、交差点で……誰もが煽られるだけでなく、逆に煽る立場になるかもしれない。薄皮一枚で辛うじてバランスが保たれている現代社会を生きているのだ。

前のクルマはすべて邪魔! 制限速度+αで煽られる

 筆者も例外ではない。職業柄、安全運転遵守。一般道ではできる限り周囲に気を配り、ほかのクルマや歩行者、自転車の迷惑にならないよう、卑屈なほど遠慮がちに走っている。が、それでも煽られるときは煽られる。

 ルームミラーに収まりきらないほど背後にクルマが急接近。しばらくすると、なにやら車体を大きく左右に振り始める。典型的な煽り運転だ。

 ノロノロ走っていたわけではない。いわゆる、周囲の交通を妨げない程度の速度。制限速度+αで走っていても相手にとっては邪魔な存在なのだろう。「どけどけ!」とばかりに執拗に煽りを繰り返す。

 この程度のことは、誰だって少なからず経験したことがあるはずだ。

「深夜のバイパスで青信号を通過した時のことです。信号待ちをしていたクルマが、急発進してコチラを追走。先の赤信号で止まった途端、相手が降りてきてワケのわからない言いがかりをつけてきたんです。しまいにはドアを蹴られ、凹んだので警察を呼びましたけど……。相手は残業で疲れていて、イライラしていたと言っていました」(アルバイト・27歳)

「私はサンキューハザードを使わない主義。手をあげて、ありがとうの意思を伝えるのですが『譲られたら必ずハザードを出せ!』という人に出くわすと厄介です。合流や車線変更でハザードが出ないことが気に食わないのでしょう。グイグイ車間を詰めてきますから」(会社員・40歳)

「制限速度を少し超えるくらいのスピードで走っていたら、某輸入スポーツカーが凄い勢いで迫ってきて、コチラをせっつき始めたんです。何があったか知りませんが、勝手にイライラをコチラにぶつけている感じ。ヘンな人とは関わりたくないので、クルマを左に寄せてやり過ごしました」(フリーター・29歳)

 そう。君子危うきに近寄らず。

 相手にしても事態を悪化させるだけでなんの解決にもならない。「倍返し、十倍返し」はドラマの世界だけでいいのだ。

身に覚えがなくてもじつは怒りをかっている

 この手の記事は、煽られる側=被害者の立場で語られることがほとんどだ。しかし「煽られるほうにも非がある」という意見も少なくない。

 確かに。事故ればクルマがダメージを受けるだけでなく、人がケガをしたり最悪死んでしまうことだってある。いい加減な運転に怒りを覚えて、思わずそれを相手にぶつけてしまう可能性は否定しない。

「危ない車線変更はやめてほしいですね。急に割り込んでこられるとヒヤッとして、イラっとします。もっと酷いのになるとウインカーすら出さない。これで相手に追突したら、コチラも前方不注意を問われるわけでしょ?」(店員・38歳)

「まだ二十歳代のころの若気のいたりです。信号で右折待ちをしていた時のこと。安全に曲がれるタイミングをはかっていたんですが、よほど急いでいたのか、後方の(右折)車が強引に私のクルマを追い越して曲がって行ったんです。ヘタをしたら私のクルマと接触していました。さすがに、この時はパッシングを浴びせて煽りまくりました。助手席に乗せていた母親が『やめて!』と泣き叫んだことで我に返りましたが……」(金融・42歳)

「高速道路の走り方を知らな人、ルールを守れていない人が多過ぎると思います。一番右の追い越し車線を、制限速度を大きく下回るスピードで延々と走り続けているクルマにはイライラさせられます。それで後ろはつかえて、安全な車間距離が保てなくなる。で、しかたなく走行車線に移って追い越さざるを得ない。さすがに煽ったりはしないですが、こういう人は教習所に通い直したほうがいいですね」(不動産・50歳)

 確かに筆者も過去に同じような経験したり、「なるほど」と思える事例もある。怒りを覚えるのはもっともだ。

 考えてみるとこうした光景は、たまにしかクルマを運転しなかったり、経験が浅い、運転に慣れていないドライバーが問題を引き起こしているケースが多いような気がする。相手がヘタッピなのだと考えれば「しかたない」。諦めがつく(かもしれない)。

アウトレイジならぬ“ロードレイジ”

 そうはいっても、性格は人それぞれ。ブチギレて、煽り運転におよぶ人間だっている。

「知人にせっかちな人がいて、とにかく運転が慌ただしい。信号が青に変わって、前のクルマがすぐ反応しないと、怒鳴る&クラクションを鳴らす。急だったりノロノロした車線変更をしてくるクルマにも同じことをするんです。隣に乗っていてヒヤヒヤしっぱなしです」(食品・32歳)

 さらに、過激な例では……

「幹線道路を走っていたときのことです。車線変更をしようとウインカーを出すや、意地でも進路を譲るまいと後ろのタクシーがパッシングして煽ってきたんです。お客も乗せているし、まさかと思いましたが、確実に安全確認をしたし、車線変更禁止の区域でもない。コチラに落ち度はまったくなかったので、この時ばかりはキレましたね。いったんそのタクシーをやり過ごし、後ろについて5分間ずっとクラクションを鳴らし続けて追い回しました。で、途中の赤信号で止まったとき、横につけてそのドライバーを睨みつけると泣きそうな顔をして謝っていたので、さすがに勘弁しましたけど……」(映像クリエイター・49歳)

 まさに、絵に描いたような煽り運転。しかも、煽ったほうが煽られるという逆パターン。

 当の本人に聞いてみると“制裁”だという。つまり「アナタのしていることは煽り運転。そんなことをしてはダメですよ」をわからせる教育的指導なのだという。

 もっともらしく聞こえるが、まさにこれは今回紹介した映画・アオラレの、序章のシーンを想起させる行為。

「やられたらやり返す」は、誰にでも芽生える感情かもしれないが、それを実際に行動に移すかどうかは、また別の問題だ。

 この物騒な時代、どんな人間が運転をしているかわからない。もしかしたら、“アオラレ”同様、めちゃくちゃアブナイ人間かもしれない。

 安全運転の教本にでも書いてあるようなセリフだが、つねに安全運転を心がけ、仮に煽られてもグッと我慢する。

 結局、これに尽きるだろう。

“怒り”は人間として当たり前の感情! 肝心なのは怒りの感情のマネージメント

 では、なぜ煽り運転をしてしまうのか? 冷静に自分の運転を振り返ってみることが必要かもしれない。

 交通心理学が専門ではないが、心療内科/精神科医として、つねに患者の心の悩みに向き合う心理カウンセリングのプロ、“後楽園こころのあかりクリニック”の院長・吉川大輝先生に話をうかがった。

「コロナ渦での行動の自粛、ストレスが運転に影響を及ぼしている可能性はゼロではないかもしれませんが、それより個々人のもともとの性格特性によるところが大きいでしょう。個々人のもともとの性格は多種多様ですので、一概に断定はできません」「マスコミで報道される煽り事件は極端な例。ストレスを抱えている人は大勢いますが、煽り運転をする人はまれです。過激な行動に出そうになる人は、怒りをコントロールする方法を身につけることが大事です」。

“怒り”は、自分の大切なものを守りたいと思う、人間として自然な感情。怒りを覚えることは決して悪いことではない。肝心なのはアンガーマネージメント。いつもと違う考え方や行動に切り替えるなど、怒りの感情を管理することで、クルマの運転だったら「煽りたい」感情を抑えることができるのだという。

 怒りを鎮める方法として、深呼吸を試してほしい。

「有効なのが“自律訓練法”です。息をゆっくり大きく吸って、止めて、ゆっくり大きく吐く、を繰り返す腹式呼吸。昂ぶった感情がおさまり、落ち着きを取り戻せます。また、ガムを噛んだり、チョコレートを食べたり、キャンディを舐めるなども(五感のうちの)味覚が刺激されて、イライラを紛らわすことができます。聴覚を刺激するという点では、音楽を聴くのもいいでしょう」。

 さらに「心の余裕が大事」だと吉川先生はいう。

「たとえば睡眠不足で、決められた時間に遅れそうなときが危険です。焦り、イライラを生じやすいのはもちろん、睡眠不足は脳がとても疲弊している状態で、判断力が著しく鈍ります」。

 奇しくも冒頭で紹介した映画・アオラレで、寝坊をして焦りながら運転していた被害女性が、感情にまかせて前方車にクラクションを鳴らしたことが、煽り運転を受けるキッカケになったことと符合する。なるほど、納得だ。

【映画アオラレのあらすじ】

 シングルマザーの美容師、レイチェルは今朝も寝坊。慌ててクルマで息子を学校に送りながら職場に向かうが、高速道路は大渋滞。度々の遅刻に、途中、かかってきた携帯電話でクビを言い渡される。最悪の気分のまま下道を走る。

 しかし、今度は、青信号になったにもかかわらず、動き出す気配のない前のクルマ。イラつくレイチェルは、乱暴にクラクションを鳴らし、そのクルマを追い越す。が、ドライバーの男は後を追いかけてきて「運転マナーがなっていない」とレイチェルを咎め、謝罪を求める。彼女はバカにした態度で拒否、クルマを出すが、相手が悪すぎた。

 そこから始まる男の狂気に満ちたあおり運転、そして、レイチェルの周囲の人間を巻き込みながらの執拗な報復。果たして、些細な交通トラブルが引き金となった最凶最悪の煽り運転の結末は!? 息をつかせぬ90分間のノンストップ・アクションスリラー。

◎アオラレ
5月28日(金)より全国ロードショー
配給 KADOKAWA
©︎2021 SOLSTICE STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

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