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「ポルシェ911 RSR」2台を1週間で完璧レストア! ワークスチームの仕事ぶりがスゴすぎた

WEC=世界耐久選手権を戦うポルシェ・マンタイ・レーシングチーム

 2021年シーズンのWEC(世界耐久選手権)は富士スピードウェイでの日本ラウンドがキャンセルされ、最終2戦がバーレーン6時間と8時間となった。そのインターバルのたった1週間で、「GT-PRO」クラスのタイトルを争うワークスチーム「ポルシェ・マンタイ」が2台の「ポルシェ911 RSR」を整備する様子を公開した。それが単なるメンテナンスどころか、フルレストアといっていいほどの内容。しかしながら、恐るべきスピーディな仕事ぶりなのだ。

スペアパーツはコンテナ6個分をつねに用意

 9時30分、前日の激しいレースで受けた2台のダメージをまずはチェック。タイヤラバーの跳ねた跡や他車との接触跡が生々しい。10時からチーム全体でブリーフィングを行ったら、早速に作業開始だ。

「ボディとサスペンションをバラして、パワートレインを抜くのに約40分。クルマに残っているのは燃料タンクと電装系、インテリアのコンポーネントぐらい」と、チーフクルーのトビアス・ハンソニスは説明する。

 この状態からあらゆるパーツが清掃クリーンアップと同時に、手と目でチェック。もし不具合があれば各部門のエキスパートが呼び出され、交換かリペアかの判断が下される。空力に影響を及ぼすため、カーボンのボディパネルも念入りにチェックしていく。バーレーンの気候なら、現場で補修したレイヤーが固まるのも早いそうだが、ドライヤーやオーブンなら2時間もあれば望みの硬度にできるのだそうだ。

 フロント側の車体下部のスキッドプレートのように、路面にあたること、摩耗することが前提のパーツもあるが、約5000点もの交換パーツは約6個のコンテナに収めて、レースウィークのサーキットに持ち込まれる。

ボディパーツからサスペンションパーツまで全部バラす

 消耗パーツの管理と並行して、外されたボディパーツはピット前に並べられる。エアジャッキを利用してシャーシはフレームに固定され、メカニックが下に潜り込んでボルトを緩めると、パワートレインがフォークリフトで抜き出される。かくしてエンジンとギヤボックス、それぞれのエキスパートがそれぞれを外してワークショップに持ち込み、チェックする。

 ギヤボックスのエキスパートによれば、設計上の走行耐用時間である30時間ごとにサービスが入り、60時間でオーバーホールを行う。6時間レースのあとなら基本的になんら問題はないはずだが、最終戦だけにチェックは全般に及ぶ。

 オーバーホールの手が及ぶのはサスペンションも同じだ。サスペンション部門のエキスパートいわく「レース直後のサスペンション・コンポーネントは、ラバーで真っ黒に汚れているのが常」とのこと。

 サスペンション・コンポーネントもすべてが分解され、ショックアブソーバーはあらゆる特性に瑕疵がないか、ベンチテストにかけられる。不具合があれば当然、交換だ。「911 RSR」のショックアブソーバーは走行30時間ごとにオーバーホールが必要で、走行90時間で寿命に達するという。レースウィークには通常、予備として3セットが持ち込まれるのだとか。

ポルシェのワークスならではの万全さと集中力

 いわば、すべてのコンポーネンツはランタイム・リストに基づいて管理されており、1台あたり5人のエキスパートがついて、メカニックたちは包括的なメンテナンス・プログラムを通じて作業を進める。

 WECは土曜にレースが行われるため、日曜から作業できるとはいえ、ロジスティックに載せるには火曜にはオーバーホール&メンテナンスを完了せねばならない。今回のバーレーン2連戦は例外的なスケジュールとはいえ、「ポルシェ・マンタイ」チームが「911 RSR」を臨戦態勢とするためのオペレーションの素早さ、用意周到さをうかがい知ることができる。

 しかも、これだけのエネルギーと正確さを備えたワークス体制であっても、すでに報じられている通り、後味の悪いフェラーリとの接触コースアウトを喫し、ポルシェはGT-PROクラスの年間タイトル獲得を逃した。モータースポーツの残酷さを示す映像ともいえるだろう。

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