名だたる世界のオフローダーも真っ青なレクサスLXの悪路走破性
ニッポンが世界に誇るエグゼクティブカーブランド「レクサス」。そのSUVシリーズのフラッグシップ「LX」が、年明け早々フルモデルチェンジを遂げた。ボディオンフレーム構造、リヤリジッドサスペンション、副変速機付きのドライブトレーンなど、ほかのレクサスのSUVシリーズと異なるスペックは、先代、先々代、そして初代以来の伝統。つまり、オフロード走破性をも意識したプロフィールがLXシリーズ最大の特徴だ。
新型LXが従来モデル以上にオフロードを強調するワケとは
今回新たに発売された「LX600」も、その伝統を頑なに守りながら進化を遂げたわけだが、その内容については、ここではひとまず置いておこう。ここで触れてみたいのはグレード構成についてだ。LX600ではふたつの新しいコンセプトのグレードが設定された。
ひとつは4座独立シートを採用するなど、贅を極めた仕様の”EXECUTIVE(エグゼクティブ)”。これはレクサスのSUV最高峰モデルとして理解できる。問題はもうひとつ、”OFFROAD(オフロード)”というグレードの設定だ。
オフロード性能について抜きん出た実力を持つLXだが、先代モデルまでそのパフォーマンスは敢えてアピールされてこなかった。ところが今回のLX600では、堂々と“オフロード性能”をグレード設定というカタチで主張する。その意味とは?
前後に独立するデフロックまで搭載する本気ぶり
ちなみにLX600には、マルチテレインセレクトやクロールコントロールなど、本格オフロード4WDの「ランドクルーザー」にも匹敵するハイテクデバイスを搭載。またLX専用機能として、環境に応じて車高を調整できるAHC(アクティブハイトコントロール)サスペンションも用意された。
ランドクルーザーでは“伝家の宝刀”としてお馴染みの機能だが、まさかLXにまで……。しかも、とてもマニアックな話なのだが、前輪、後輪と独立してロックすることが可能だという。これ自体は先に発売されたランドクルーザー300のGRスポーツに採用された新しい機能。しかし、レクサスでここまでの機能が必要だったかどうか……。
富裕層にも浸透するアウトドアスタイルも影響か?
オフロードについては今まで沈黙していたが、「多様性」を謳いながら、そちらにも目を向け始めたレクサス。その背景には、もちろん空前のアウトドアブームもあるのだろう。「ソロキャンプ」や「ゆるキャン」なんて呼ばれるアウトドアスタイルが注目を集め、クルマについてもSUVが大ヒット。従来モデルも〇〇クロスとかのネーミングでSUVテイストを盛り込めば、販売台数を伸ばせる現状だ。
またゴージャスなアイテムでゆったりと自然を楽しむオーバーランダースタイルやグランピングなど、ラグジュアリーなアウトドアスタイルも浸透。LXがそういったユーザー層、とくにエグゼクティブにアウトドアを楽しみたい人たちをターゲットにしたのは間違いない。
よりオフロード性能を強調するSUVが世界でも大人気という背景も
ちなみにレクサスLXのライバルたるブランドを見てみると、メルセデス・ベンツのSUVはGL系よりGクラスが人気。ランドローバーはレンジローバー系より、オフロード色の強いディフェンダーが好調な売れ行きを見せる。つまりラグジュアリーより、本格派オフローダーが注目されているのが現在の自動車トレンド。元々、秀でた悪路性能や耐久性を備えたレクサスとしてはその素性を伸ばし、同時にそれをより強くアピールすることに異論も、抵抗もなかったはずだ。
EV、ハイブリッド、水素エンジン……。地球の環境変動にともないこれからのクルマ開発の向かうべきベクトルはまさに混沌としているが、同時に異常気象、災害なども頻発している。こんな状況に対峙するクルマとして機動力に優れたSUVは、じつに頼れる存在になるだろう。レクサスLXが全面的に悪路性能を打ち出してきたのは、そんな側面もあるに違いない。