サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

家族の一員だったら「犬の乗り心地」も重要! 人もワンコも幸せになれるクルマと装備の選び方【多人数家族編】

ボルボV60と愛犬ドライブ

プロが指南するクルマ旅でワンコが快適に過ごせる車種選び

 モータージャーナリスト兼ドッグライフプロデューサーとして活動している筆者は、長年、家族の一員として愛犬と暮らし、毎月のようにプライベートや仕事でドライブ旅行に出かけている。そんな経験から、毎年、複数の媒体でドッグフレンドリーカー・アワード、わんダフルカー・オブ・ザ・イヤーを、自称自動車評論犬(!?)の愛犬とともに選定したりしているのだ。

愛犬のラゲッジ乗車は誤りでベストポジションは後席に限る!

 そこで、愛犬を迎えたファミリーにぴったりな、ドッグフレンドリーなクルマ選びのポイントを紹介したい。ただし犬種、犬のサイズによって、その要件は異なる。そして、愛犬の乗車場所は後席がベストということを忘れないでほしい。CMや用品カタログなどで、犬をワゴンのラゲッジルームに乗せているシーンを見かけるが、それが可能なのは大型犬で、しかも晩秋、冬、早春の気温が安定している季節に限られる。

 その最大の理由は、犬は1年中ずっと毛皮を着ていて、足の裏からしか発汗できない体温調節が苦手な生き物だからだ。つまりは基本的に暑がり。暑い季節にエアコンを使っても、車内の温度が安定するのは前後席だけ。そもそもエアコンはラゲッジルームの空調のことなど考えて設計されていないのである。言い方を変えれば、犬と同様、まだ言葉を発することができず、暑くても「ママ、暑いよ~」と言えない幼児を、ラゲッジルームに乗せられるんですか? ということ。加えて、犬は熱中症にもなりやすく、それで命を落とすこともあるのだから危険だ。空調の整った場所=後席に乗せてあげるのがベストという結論になる。

必要に応じて抱っこして乗せ下ろしできる3列シートのミニバンがオススメ

 そこで、全犬種にお薦めできるのは、3列シート仕様のミニバンだ。犬を抱っこして乗せ下ろしできる中小型犬の場合、子どもを抱っこして乗せ下ろしするのと同様にドアの開口部は大きく広いほうが、抱っこしている飼い主にとってラク。つまり子育て御用達カーは、ドッグフレンドリーカーでもあるわけだ。しかも、愛犬を含む家族総出でドライブに出かける場合でも、小型犬1~2頭なら、人は5~6人は乗車できることになる。

 しかし、2列シートのワゴンやSUVだとそうはいかない。また、愛犬をエアコンの風がしっかり届く3列目席を専用席にすれば、車内の抜け毛、ヨダレ汚れも最小限に抑えることができ、あとの掃除もラクチンというわけだ。自分で乗り降りできる犬の場合でも、スライドドア部分がワンステップ&低床のミニバンであれば、足の短い小型犬、中型犬でも乗降がしやすい。

ゾーンごとに温度調整できるエアコンのほかサンシェード付きウインドウも欲しい

 その上で、理想は3ゾーンフルオートエアコンやリヤウインドウダークガラス、2列目席ロールサンシェード付きのミニバンを選びたい。理由は前席の乗員が寒がりでエアコンの温度を下げたくなくても、後席に乗せた暑がりの愛犬用に、後席の温度を低くセットすることが可能なのである。筆者は愛犬が乗車する場所に、運転席で確認できる室内温度計のセンサーをセットしている(20~22度が犬の適温)。

 また、細かいことを言えば、犬が乗車するシートはできる限りフラットなほうがよい。そのほうが安定して乗っていられるし、ドッグベッドやサークルなどを設置するにしても安定するからだ。また、ハイブリッドなど電動車に用意されるAC100V/1500Wコンセントがあると、さらに快適で楽しいドライブになる。

 ドライブ先に愛犬と入れるカフェやレストランがなくても、車内外でコーヒーメーカーや簡易電子レンジなどの家電品が使えるから、景色のいい場所に止めればそこが「どこでもドッグカフェ」になる。バックドア部分をテラス席にしてもいいし、2列目席をスライドさせてカフェのソファ席に見立て、足元のフラットスペースに愛犬を寛がせることができるのもミニバンならではだろう。

理想は2列目ベンチシートだがセミベンチ化できるキャプテンシート仕様もある

 ただし、2列目席のキャプテンシートは不向きだ。できれば多頭、大型犬でも寛げるベンチシートをオススメしたいところだが、ミニバンのキャプテンシートの豪華さや快適感は捨てがたい。ならば、Mクラスボックス型ミニバンの新型ノア&ヴォクシーのHV、セレナe-POWER、そして今春発売予定の、ついに2列目席が左右スライドし、キャプテンシートでもセミベンチシート化できるようになった新型ステップワゴンe:HEVモデルあたりが、ドッグフレンドリーカーとして最高ではないか。

 2列目席ロールサンシェードはもちろん、グレードによってリヤ独立エアコンも備えているから、車内空調的にもドッグフレンドリーということになる。とくにホンダ車は、純正ドッグアクセサリー=「ホンダドッグシリーズ」が充実しているから、さらにドッグフレンドリー度は高まる。

走行安定性の高い乗り心地が優秀なミニバンならストレス軽減できる

 走行性能についてもポイントがある。それは、車内が静かで、前後左右の姿勢変化が少ない乗り心地のいいクルマであってほしいということ。犬は聴覚に優れるとともに、車内でどこかにつかまることができず、カーブなどでの姿勢変化が大きいと爪を出して踏ん張り続け、それがストレスになりクルマ酔いの原因にもなるわけだ。

 もっとも、最新のボックス型ミニバンはその点でも、しっかりとした乗り心地を示してくれるから、あとは優しくスムースな運転を心がけることで解決するはず。妊婦さん、病人が乗っていると思って運転すればいい。車内の静かさという点では、上級車、電動車が候補に挙がるのはもちろんだ。

愛犬との時間を無駄にさせないためにも4WDモデルならなお良し!

 そして、雪道や悪路に強い4WDも実はドッグフレンドリーカーとしての優位性を持つ。というのは、人間の6~7倍のスピードで歳を重ねる犬の寿命は10年から15年。12歳でも72歳(中小型犬)~84歳(大型犬)なのである。そんな短い犬生のなかで、1日中、家族と一緒にいられるドライブ旅行の楽しみを1回でも多く経験させてあげるのが、わが家では飼い主の使命だと思っている。

 だが『冬だし、雪道で路面が悪いから……』といった理由で運転に自信がなく、せっかくのドライブ旅行の計画をいきなりキャンセルしたのでは、家族も愛犬もガッカリ。愛犬にとっては貴重な、せっかくの楽しみの機会が減ってしまう。あとで「もっといっぱいドライブに連れて行ってあげればよかった」と後悔するより、1年中、路面コンディションに関わらず、愛犬とともに安心・安全にドライブ旅行に繰り出せるクルマを選ぶということも、愛犬家として大切だと思っている。そもそも、多くの犬は雪が大好きだ!!

 上記のミニバンの4WDモデルならその意味でベターだし、究極はミニバンの皮を被ったSUVと言えるデリカD:5なら、なお頼もしい。アウトランダーPHEVのようにAC100V/1500Wコンセントの用意はないものの、最低地上高に余裕があり、雪道、悪路に強い全天候型のオールロードミニバンとして、極めてドッグフレンドリーな1台とも言えるのだ。基本部分がアウトランダーだからフロア高は高いものの、空調、2/3列目席座面のフラット度も文句なしである。

 無論、小型犬との生活なら、フリードやシエンタのようなコンパクトミニバンでもまったく不自由はない。愛犬専用席を3列目席にすれば、最大5名乗車も可能になる。そしてソリオのような後席が広く、ラゲッジスペースにも余裕があるプチバンでもOKだろう。いずれにしても、スライドドアであることが、愛犬の乗せやすさに大きく関わってくるということだ。

モバイルバージョンを終了