サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

フランスの実用車なのに走りも楽しくてカワイイ! ルノー・カングーが日本のアウトドア派に愛される理由とは

丸っこいボディがキャンプにもよく似合う

フランスの「はたらくクルマ」がカングーのルーツ

 ルノー・カングーは、日本における輸入車のなかで特別な存在と言っていい。元々はルノー・エクスプレスという商用車が先祖で、本国では働くクルマとして郵便配達やお花屋さんの足として大活躍している、ある意味プロユースのクルマなのである。

おしゃれな両側スライドドア車という貴重な存在

 しかし、さすがフランスのルノーのクルマだけあって、デザイン、実用性は文句なし。言ってみれば、世界最高峰の超オシャレな実用車であり、輸入車としてはそう多くない両側スライドドア、アウトドアやペットの乗降にも適した左右、両側に開くダブルバックドア、ゆとりある居住空間、広大なラゲッジスペース、室内天井2カ所にある収納による道具感を備えている。

 フランス車ということもあって、日本では働くクルマ、実用車として以上に、ライフスタイルを演出する人とは違う個性豊かな1台として、また、アウトドアやキャンプなどに便利すぎるクルマとして人気を得たのは当然と言っていい。なにしろ、シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフターの兄弟車が登場するまでは、日本車にも、輸入車にもない、唯一無比の存在でもあったのだ。

 ジョンアグリウム(イエロー)、ブルーエトワール(ブルー)、マロンショコラ(ブラウン)といった、日本車にはなかなかないオシャレなボディカラーのラインアップも、カングーの個性をより一層、際立たせていたと思われる。また、フランス車をより生き生きと走らせるMTで乗れるところも、MTファンにはたまらないところだろう。両側スライドドアを備えた国産車とMTの組み合わせなど、今や知る限り見当たらない。

長距離もラクな優れた乗り心地は一度は味わう価値あり

 そしてカングーは、走らせても日本車とは別物の世界観をドライバー、乗員に提供してくれる。1.2Lターボエンジンの動力性能(115ps/19.4kg-m)そのものは、1450kg(AT)の車重もあって大したことないのだが、かつて目を三角にしてカッ飛ばしていたことがバカバカしく思えるほどのおおらかでハッピーなドライブフィールがまた、たまらない。60km/hも出てしまえばこっちのもので、ATは早めのシフトアップを好みはするけれど、速度に乗った高速巡航は得意中の得意。直進性の良さはフランス車の伝統で、電動パワステはアシスト量が抑えられ、国産ミニバンのように軽すぎることはないため、本来の直進安定性の高さとともに、しっかりした直進感を味わわせてくれるから安心だ。

 しかも、座面に後傾角度が付いた、実用車として世界最高峰と言っていいシートのかけ心地の良さ、乗り心地が素晴らしすぎるのだ。足まわりはストローク感たっぷりの、ふんわりソフトな柔らかさとしなやかさが基本。荒れた路面、段差、キャッツアイを乗り越えた際のショックのいなし方も絶妙で、しっとりしたタメある体に優しいタッチ、そのゆったり感、快適感はもう感動モノなのである。

 だから高速道路を延々と運転するようなシーンでも意外なほど疲れにくい。それでいて、カーブや高速レーンチェンジで足まわりは粘りに粘る。ワイドなトレッド、ロングホイールベースも手伝って、4輪のタイヤは路面に「ペタリ」と張りつくように安定した姿勢を保ち続ける。こんな背高なボディにして、カーブ、コーナーが楽しい! と思えるほどである。

 そしてさすがと思わせるのがフランス車らしい、回してナンボのエンジン。高回転まで回してもノイジーじゃないからガンガン踏めるし、飛ばしても燃費が極端に悪化したりしないところも実用車としてのツボを押さえている。つまり、家族や愛犬を乗せてドライブするときはスローライフ感を味わえる快適感に酔える一方、走り好きな人をも満足させられる類まれなる走行性能の持ち主というわけだ。

 もちろん、フランスの道幅の狭い道をスイスイ走り、どこにでも止めてしまえるカングーは、全長4280×全幅1830×全高1810mmの3ナンバーサイズながら小回りが利くところも、日本の路上で車幅から想像するよりずっと走りやすいと感じさせてくれる一因だろう。

キャンプもペットとの移動も余裕でこなせる室内空間

 カングーがファミリーカー、アウトドア御用達カーとして日本でも愛されている理由の大きなポイントが、室内空間の広さ。居住空間は国産ボックス型ミニバン並みに広大だ。身長172cmのドライバー基準で前席頭上に350mm!(だから頭上に物入を設置できる)後席頭上に285mm、膝まわりに190mmものスペースがある。とくに後席のシート幅は、例えばセレナの2列目席セミベンチシート状態よりも35mm幅広く、ソファ感覚のかけ心地の良さもあって、じつにゆったりと座れるのである。

 ラゲッジルームにしても、ボディ後部がボックス型ゆえのスクエアなスペースを備え、積載性もまた抜群なのである。結果、国産ミニバンから乗り換えても、満足度は極めて高いということになる(現行モデルにパワースライドドアは付かないが……)。

 ちなみに2018年に開催された「インターペット」では、ルノー・カングー・ゼンEDCをベースにした限定車「ルノー・カングー・ウィズペット」(10台限定。279万9000円/当時)が披露されていた。

 ドッグアクセサリーも充実し、愛犬家を唸らせていたことを思い出す。愛犬とのアウトドアにカングーで出掛ける……最高ではないか!

日本中に熱狂的なファンがいるのでアクセサリーも豊富

 というわけで、輸入車にして200万円台半ばの価格設定もあって、日本でもアウトドア派を中心に根強い人気を保ち続けてきたのである。その裏付けが、カングーの熱狂的なファンの多さから、毎年、世界一と言われるカングーのお祭り「ルノーカングージャンボリー」が開催されていること(コロナ禍で一時中止していた)。直近の2019年に山中湖で開催された「ルノーカングージャンボリー」には1700台を超えるカングーと5000人を超えるカングーオ―ナーやその家族、カングーファンが全国から集結。フレンチテイストあるアウトドア感あふれるカングー祭りに盛り上がったのだ。

 そうした一大イベントがあり、参加する楽しみが得られるのもカングーならでは。カングーがアウトドア派に愛されるきっかけになったとも言えそうだ。現行モデルの販売はすでに終了し、やや丸みを帯びた新型が2022年後半に導入されると公式にアナウンスされているが、ハード面にとどまらない魅力は、これからも衰えることはなさそうだ。

モバイルバージョンを終了